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最強な賢者様と私の話  作者: 天城 在禾
復讐、もしくは出会い
20/134

私が組織の一員になる話、それにしても男心とは難解なものである パート④

 

アルバと転移陣で向かった場所は倉庫のような場所だった。

そこにはあの趣味の悪い服の主と、燕尾服を着た男が控えいた。


「…なんだ、そのガキは!」


声を荒げた主に私はゆっくりと近寄った。


「ご主人さま…」

「…ご主人さま?」

「はい…だって私のご主人さまです…ご主人さま、私も行かせてください」


ゆっくりと近寄り、主の足元に立ち、上目使いをした。

こういうのも何だが、私の見た目は中の中。

至って平凡だが、見ていて不快になるわけではない。

女であることも考慮して、弱々しく主を慕ってます!と演出してみた。


「私、あの牢屋から助けてくれたご主人さまの役に立ちたいんです。それに、ご主人さまに会いたくて…」


不安げに見上げてみせると、主は満更でもなさそうな顔をしていた。

その粘っこい視線には嫌悪を感じたが、潤んだ上目使いは続行中である。


「ふん…仕方あるまい。いいだろう、行ってこい」

「ありがとうございます!ご主人さま、私が必要でしたら何時でも呼んでください。私、ご主人さまのためなら何でもします」


まぁ、何かされそうになったら問答無用で薬使わせて貰いますけど。

というか、予想通りあいつ馬鹿だな!

私の口が悪いのナムルさんとこで見てただろ!

主に許可を貰った私は少しだけ多めにお金を貰い、アルバと倉庫を出た。

外は森で、少し遠くに市場が見える。

アルバを振り返ると、呆れたような心配そうな顔で私を見ていた。


「いいの?あんなこと言っちゃって」

「大丈夫。あの人が私に手を出すのは精々あと3年は経たないと。あーゆー人は7歳児に手は出さないよ」

「いや、分かんないよ?」

「その時のために、薬草を取りまーす」


この森には気付かないような小さい薬草がぽつぽつ生えている。

お目当ての薬草が生えているのか見て直ぐに分かった。


「え、早く買い出し…」

「いいからいいから。アルバ、これとこれ、取ってきて!」

「えー、僕も?」

「ほら、早く!」


取った薬草をアルバに見せて、手伝わせた。





 

薬草を持って市場に行き、取りすぎた分を売却した。

…アルバが取りまくったのだ。

しかも、私が指定したやつ以外も取ってきたので、それも売った。


「頑張ったのに…」

「…アルバ、違うやつまで取ってくるんだもん」

「え、そうだった?」

「うん。アルバは何時もどこで買ってる?」

「あー…一番安いとこかな」


アルバに案内された露天は確かに安かった。

…が、物は悪い。

アルバに良し悪しを求めるつもりはなかったが、これはないだろう。


「…アルバ、次行くよ」

「え、ここで買わないの?」

「いいから!」


アルバを連れて別の露天を見る。

質の良さそうな露天に来て、私は野菜を吟味し始めた。


「おう、お嬢ちゃん、お父さんとお買い物かい?」

「うん!お父さんいつも不味い野菜買ってくるから監視!」

「はは!そりゃ酷ぇ言いようだ。あんたも大変だなぁ」

「あはは…」


困ったように頭をかくアルバは話を合わせてくれるようだ。


「おじさん、ジールはいくら?」

「おう、それは一つ銅銭5枚だな」

「…じゃあ、全部買ったらいくら?」

「全部かい?そうだなぁ…銀銭1枚はいくんじゃないか?」


ジールとはジャガイモに似た野菜だ。

現在の手持ちは銀銭10枚。

薬草が案外高く売れたのだ。


「銅貨100枚かぁ…おじさん、お願い、50枚にまけて!」

「いやいや!半額ってのは辛いぜ!90枚」

「えー!60枚!」

「85枚!おまけで他の野菜もつけてやるぜ?」

「うーん…じゃあ、マルケとテムラとイリアコも全部買って銀銭3枚と銅貨10枚は?」

「あー…まぁ、仕方ないか。お嬢ちゃんの威勢の良さに負けたぜ。にしてもそんなに多く持てるのか?」

「うん。お父さんが台車持ってきて後で運ぶの」

「あんた、大変だなぁ…」

「娘と嫁には尻に敷かれてるんですよ」


おじさんの同情の表情に、アルバは苦笑いを一層深めた。

失礼な。値切れるものは値切る、使えるものは使う主義です。

きっちりお会計したあと、肉や野菜も買って、疲れた顔のアルバを伴って私は帰った。





私が組織に入って半年経ったある日。


「…全員来てくれ」


子供部屋でスーフォたちと遊んで?いると、扉がノックされ、ミゼンが入ってきた。

途端にディスも含め子供たちは緊張する。


「ミゼン。どこに?何があったの?」

「…スーウ。それはなんだ」


私たちの遊び?に気づいたのか、ミゼンが訝しげな顔で近寄ってきた。


「絵本と紙と筆。遊んでるの」

「遊び…?勉強じゃないのか」

「遊びです。で?何があったの?」

「…最初に転移した部屋に来てくれ。そこで話す」

「仕方ないなぁ。あそこ狭くて嫌いなんだよね。汚いし」


私がそう呟くとミゼンの瞳が困ったような色になった。

…ミゼンを責めてるわけじゃないからね。

その目は止めてくれ。

ミゼンが出て行き、その後をディスたちと追いかけた。

会議室(キリヤ命名)には、大人が全て集まっていた。


「悪いな、お前ら」

「…何だよ」


ノーヴェが申し訳なさそうな顔でディスたちに謝った。

私はミゼンを探した。

ミゼンは部屋の一番奥、転移陣の直ぐ側にいた。

そして、その横には、男が一人、ぐったりとして倒れていた。




 


ついにヒーロー?登場です。

最強な賢者様なのに、登場シーンは捕らわれのお姫様…


余談ですが、

銅銭は約10円の価値です。

銅銭10枚→銅貨

銅貨100枚→銀銭

銀銭100枚→銀貨

銀貨100枚→金銭

金銭10枚→金貨

となってます。

私の計算が間違っていなければキリヤは10億円の値段…

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