表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強な賢者様と私の話  作者: 天城 在禾
幼少期、もしくは悲劇
17/134

私が組織の一員になる話、それにしても男心とは難解なものである

 

 

ひょろ長い男は隣の部屋で待っていた。

私たちが転移陣を使うことは見越していたらしい。

男の足下には光る陣があった。


「待っとったでぇ。ホントあの男嫌いや。ちょっと金持ちやからって威張りおってなぁ。ミゼン。首輪は付けたか?」

「あぁ」

「お前さんも大変やな。あいつの所は職業的にも一番不人気や。ま、お前さんにはいいんかも知れんけど」

「うん。めっちゃいい。ミゼンは規格外な人だから勉強になりそう」

「はー!ホント変なガキやな!それにミゼンの実力が分かるんか」

「おじさんも分かるんだ?」

「おじさんはやめてや。ナムルって名前あるんやから。まぁお前さんとはもう会わんかもしれんけど。そりゃあこの商売も長いからなぁ。ミゼンを売ったのも俺やからな」

「…ミゼンって幾つ」

「俺んとこ来たんは15年前やろ?そん時10歳くらいやったから…今25くらいか?」

「…あぁ」


見えない。ミゼンそんな若いの?

その若さでその落ち着いた気配なの?

怖いよ。今までどんな人生送ってきたんだ。


「…見えない」

「やろー?ミゼンは落ち着きすぎやろ?」

「うん。…じゃあナムルさんは40過ぎ?」

「まぁな。はー。ホントはまともな仕事したいんや。せやけど世知辛い世の中やからなぁ。俺に堅気の仕事はできん」

「まともな仕事したいんだ」

「そりゃあな。俺やてもとは奴隷や」

「へぇ…じゃあ、私が雇ってあげれるようになるよ」

「はは!精々頑張ってな」


ナムルさんは笑って、私たちを転移陣まで促した。

ミゼンに連れられ、転移陣に乗ると、転移陣が輝き始める。


「気ぃつけてな。ちょっとの間やったけど楽しかったで。…死ぬなよー」

「…うん。ナムルさんこそ。私が死ぬと思うの?」

「せやから、お前さんの奴隷先は一番不人気、てことは一番死亡率が高いの。とくに、お前さんくらいの年頃がな」

「はは!死なないよ。だって、復讐しないといけないし?ディグザムが待ってるから」

「…生き別れた恋人同士みたいな発言やな。じゃあな。俺にまた会わないよーにな」


一段と転移陣が輝き、私の目の前からナムルさんが消えた。





 

転移した先は臭く汚い部屋だった。

部屋にはミゼン以外に男が9人。

ミゼンより年上ばかりだ。


「おう、お帰りなせえ、リーダー」

「そいつが新しい奴っすか?」

「女の子じゃないっすか!リーダー、もしかしてロリコン…!」

「おい馬鹿!リーダーがそんなわけねぇだろ!リーダーはきっとグラマーな美女が好みに決まってらぁ!」

「テメェはリーダーに夢を見過ぎなんだよ!」

「んだとぉ!?」


騒がしい。

それに、全員首に服従の首輪をはめている。

暗殺者たちの集団なのだろうけど、とてもアットホームな雰囲気だ。

というか、仲が良く楽しそう。


「…お前等、ディスたちは」

「あー、ディスと愉快な仲間たちは隣の部屋でさぁ。相変わらず意地張っちまってなぁ」

「…キリヤは一番年下だ。子供同士ディス達に任せた方がいいだろう」

「えー、本気っすか?きっとイジメられますぜ」

「キリヤは黙ってやり過ごすタイプじゃない。大丈夫だ」

「…その子のこと買ってるんっすねぇ」


しみじみと言われた。

それにしてもミゼン、私をそんな図太いガキだと思ってるのか。

…あぁ、思ってるんですね。

凪いだ瞳は私を見下ろし、大丈夫だろ?と聞いてきた。

ミゼンに頷き返すと、ミゼンは今喋っていた男に私を預けた。


「おう、お嬢ちゃん、名前は?」

「キリヤ。おじさんは?」

「ノーヴェだ。じゃあ、キリヤはこれからスーウって呼ばれることになる。15番目って意味だ。嫌かも知れんが、この組織ではそれが当たり前だ」

「分かった。仕方ないもんね」

「まぁな。…とは言っても、俺らのうち誰か死んだら繰り上げでスーフォになるけどな」

「…じゃあ死なないでね」

「それが一番だけどな。死ぬ時は死ぬもんだ。それと、名前は呼び捨てでいい。だから俺のことはノーヴェって呼んでくれ」

「はーい。それで、私はディスに挨拶しに行くの?」

「おう。じゃ、行くか」


ノーヴェは私を連れて部屋を出た。

部屋の外は廊下になっていて、5つほど部屋が並んでいる。

私たちが出てきた部屋は一番奥で、その隣の部屋にディスたちがいるらしい。

…相変わらず臭く汚いけれど。

多分、ろくに掃除なんてしてないからだろう。

しかも男ばかりだから、余計に臭いんだと思う。

ノーヴェは隣の部屋の扉をノックした。


「おい、ディス。新入りが来たぜ。世話役はスーフォだぞー」

「…入っていいぞ」


部屋の中から声がして、私とノーヴェは部屋に入った。

やはりと言うか、部屋の中は汚かった。

ただ、匂いはマシである。

部屋の中には5人の子供がいた

いや、私のが年下なんだけどね。

10から15歳ほどまでの子供が部屋の隅でノーヴェを警戒していた。

友好な空気は全くない。

それを見て、ノーヴェは少し困った顔をしていた。


「…スーウか、そいつが」

「あぁ。リーダーが子供同士のがいいだろって」

「…あいつ!何考えてんだ!コイツ女じゃねぇか!しかもスーフォより年下だぞ!」

「…あー、リーダーの見る目は確かだぞー。現にリーダーが連れてきた子供はお前を含めまだ生きてるじゃねぇか」

「そういうこと言ってんじゃねぇよ!もういい、そいつ置いて出てけ!」


ノーヴェは「はいはい」と肩をすくめて出て行った。

私なノーヴェに手を振って見送ってあげた。

思春期の子供は大変だよねぇ、うん。

ノーヴェは私に同情されたのが分かったのか、苦笑いをしていた。


改めてディスたちを見る。

この子供の集団のリーダーであるディスは最年長らしく、多分15歳ほど。

茶髪で蒼い目の普通の子供である。

ただし、動きは暗殺者のそれだ。

その他の4人はディスの後ろに隠れ、私を見極めているようだ。


「…はじめまして。スーウです。これからよろしくお願いします」


誰も口を開かないので、私が最初に口を開いた。

頭を下げると、少し安心したような空気に変わる。


「ディスだ。お前が一番下っ端だ。雑用は全部お前にやらせるからな」

「はい」

「…仕事はスーフォに聞け。スーフォ、手伝うなよ!」

「う、うん。でも、俺のは皆手伝ってくれたよね?」

「新入りなんだ!この組織の厳しさは最初っから知ったほうがいいだろ!」

「そ、そうだよね、うん」


スーフォは気の弱そうな10歳ほどの男の子で、茶髪に茶色の目だ。

…この組織、私以外に女が居ない!

分かってたけど!分かってたけどさぁ…


「…スーフォ、よろしくお願いします」

「う、うん、よろしく…」



…というか、ディスってツンデレ属性な気がする!!



 

ノーヴェはイタリア語で9。

ディスはフランス語で10。

スーウは中国語でスーが10、ウが5。

スーフォはスーが中国語の10、フォは英語のfourから縮めてフォ、です。


え、統一感がない?

…だって統一するとかっこいい名前じゃなくなってかわいそうなんですよー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ