私が秘密を話す話 パート⑩
すみません、大変遅くなりました!!
ヴェルトが荒れます。
キリヤも内心荒れてます。
転移先は執務室にした。
ヴェルトも後を追って転移してきていた。
国王は私たちを見て、深ーくため息をついた。
その横で同じように宰相さんも深ーくため息をついていた。
「…お帰りなさいませ。アイリーン殿やドラゴンたちはどうされたのですか」
「……国に送り返しておいた」
「そうですか…それで、賢者様はどうされたんです?何か困ったことでもございましたか?」
「…あー、まぁ……いや、なんでもない」
ヴェルトはアイリーンからの告白に戸惑っているようだった。
…うーん。後でウィルたちに話を聞いて貰ったほうがいいと思うよ?
「…ナタエルから聞いたぞ、キリヤさん。一人でどうにかすると言ったそうだな?」
「あぁ、はい」
「私もキリヤさんが一人で戦うことに反対だな。貴方は確かに強いが、万が一ということもある。本当にキリヤさん一人で勝てる敵とは限らないだろう?それに…」
「賢者様の姿をした敵に攻撃できるのか?ってことですか?」
「…そうだな」
「賢者様本人ではないのに何を遠慮することが?」
「…君が賢者様より強いことは聞いている。だが…」
「今回は、一人で戦わせてほしいんですよ。誰も来ないような場所で、誰にも被害を出すことなく。許可してください。じゃないと、本気を出さなきゃいけなくなります」
私は明確な脅しの意図を含めて言った。
別に、彼らに許可を取る必要はない。
私は力ずくでも行動を起こしてしまえばいいのだから。
それでもこうして話し合いに応じているのは、私が彼らのことを好きだと思っているからだ。
できることならこれからも関係を持ちたい。
だから、こうして話し合いをしている。
「…君のその優しさは時として私たちには残酷であることを分かって貰いたいものだな…」
国王は、先程よりも深いため息を吐いた。
「せめて戦う場所を教えてくれ。その近くに君の信頼できる者たちを配置させておく」
「…ありがとうございます」
さて、国の最高権力者とは話がついたし…
一番大変なのが今からなんだよなぁ…
孤児院に帰り、ヴェルトの部屋に私とトーマ、ヴェルトが集まった。
「私は特に反対しませんが」
「まぁトーマだもんね…」
「貴方がただのバカならば勿論反対しましたが、今の貴方を見るに何か策でもあるのでしょう」
…策という策はないんだけれどもねぇ…
「一人で行く必要なんざねぇだろう。何人かでやり合ったほうが明らかに有利だ」
賛成してくれるトーマとは逆に、ずっとヴェルトは反対の意を示している。
「それはそうだね。そりゃぁヴェルトやミゼンとかが居てくれたら安心かもね?」
「なら、」
「だけど良く考えてみてよ。あのドラゴンたちが容易く落とされたんだよ。どうしてミゼンたちもそうならない保証があるの?」
「だったら俺だけでも」
「ヴェルトが一番駄目だよ。敵はヴェルトの憎悪を含んでるんだよ?ヴェルトが引き摺られない保証はないでしょ」
私はすがるような視線を向けてくるヴェルトにそう言い聞かせた。
ヴェルトの一部が含まれているのならば、勝てるのは私だけ。
それをヴェルトも当然わかっている。
「…ふざけんなよ…キリヤ一人で戦わせていいわけねぇだろ…!元は俺の一部だぞ!ならば俺が戦うのが筋だろ!」
「それでヴェルトが憎悪に引き込まれて世界を破壊しようとしてしまうのなら私はヴェルトと戦わなくてはならなくなる。それで一番辛いのは私だよ」
そう、万が一、ヴェルトが憎悪と一体になってしまえば、ヴェルトは世界を壊すだろう。
それを止めるのは私だ。
「っ…」
「卑怯を承知で言うよ?私のことを本当に大切だと思うのならば、一人でやらせてほしい。じゃなきゃ私は私以外の人を守りながら戦わないといけない。無理だよ、さすがの私でも」
ヴェルトと私とでは、私のほうが強いが、本気を出して戦えば、さすがの私も無傷ではいられない。
「…それにさぁ。いい加減、鬱陶しいんだよね、今回の敵は。ちまちま攻撃してこないでとっとと正面から来いよって気分なんだよ。私のこと憎いんだか知らないけどさぁ…まじで、うざい」
つい本気で殺気を出してしまったからか、さすがのトーマも身構え、ヴェルトも眉をひそめた。
私がそこまで言っても、ヴェルトはまだ不服そうだった。
その日の夜、私はオルディーティ家を訪ね、両親とハルト、オルディーティ夫妻と執事さんに、二十歳になったら不老長寿になることを明かした。
ハルトにはめちゃくちゃ文句を言われたが、お父さんとお母さんは優しく微笑んで、「よかった」と言われた。
アルベルト様とマリオット様は少し心配そうにしていたが、なんとなく嬉しそうだった。
そして、次の日、私は一人で国を出た。
ここから下はギャグパートです。
元組織組はなんか…筆が進みます(笑)
「くっそ…ふざけんなよ…!」
ほとんど貸切状態の酒場に、ドンッと机を叩く大きな音がした。
「あー、おい、誰だよ、ヴェルトに酒与えたのー」
「知らねー。つーかなんで酔ってんの?普通は酔わないんじゃねーの?」
「酔いたい気分だったんじゃねぇか?」
「まぁ、確かにそういう時もあるよな」
「で、なんであんなに荒れてるんだ。キリヤは帰ってきてるんだろ?」
「あー、キリヤに着いてくるな宣言されたらしい。敵をぶっ倒すのにヴェルトはいらねぇって言われちまったらしい」
「マジかよ!そりゃ荒れるぜ」
「いや、でもよぉ、キリヤも確かに悪いがヴェルトもヴェルトだろー」
「それは言ってやるなよ。ヴェルトにとっちゃ自分より大切な存在なんだぞー?」
「キリヤももう少し言い方変えればいいのにね」
「いや、今回はわざと突き放したんだろ。トーマの話だとヴェルトと相性悪い敵らしいし」
「相手はドラゴンも簡単に操れるらしいし。僕ら何かが加勢したって敵に回るのがオチだって、トーマが言ってたよ」
「で、対抗できるのがヴェルトかキリヤだけで、ヴェルトと相性が悪い…」
「マジか…下手するとヴェルトが敵に回っちまう可能性もあるってことか?」
「おいおい、キリヤは大丈夫なのかよ!?」
「あー…聞いた話だと、キリヤは神様から加護貰ってるから大丈夫らしいよ?」
「何だよそれ、本当に大丈夫か?」
「神様とか嘘くせぇ…」
その時、オルディーティ家にいたキリヤが急に笑い出した。
キリヤ「(何か今、神様が雑な扱いされてる気がするっ!笑)」
「まぁ、キリヤがやばくなったら俺らが総出で助けに行けばなんとかなるだろ」
「お、じゃあ王子様連れていかねぇとな」
「あとはどうする?この間会ったキリヤの弟と友達も連れてくか?」
「えぇ!?キリヤって友達いたn…!?」
「まてまて、それ以上は発言するな。死ぬぞ」
「いや、もう手遅れだろ。今めっちゃ寒気したし」
「じゃあリタ経由で魔族にも話ときゃぁいいか?」
「後は?」
「他は王様が話つけるだろ」
よし、一安心だな、と暗殺組織メンバーは手元の酒を飲む。
「あ、それよりさ、面白い話聞いたんだけど!」
「あ?何だー?」
「ヴェルトが告白されたらしい!しかもキリヤが隣にいるときに!」
「マジかよ!?すげぇなその人!」
「あ、ヴェルトが逃亡しようとしてる」
「おい!捕まえるぞ!」
「ミゼン!よろしく!」
「…はぁ…」
そうして、男達の夜は更けていった。




