私が秘密を話す話 パート⑤
お久しぶりです!
更新遅くなってしまって大変申し訳ありません。
キリヤとアイリーン…どうしようかなぁ…と迷っていましたら、遅くなりました…
次の話はもう少し早くあげられるといいな…
7人が来て、ちょっと話していると、会場の空気が変わった。
「?」
「あぁ…エリーゼ、頼んでもいいか?」
「…はい」
私が首を傾げる横でアレンがエリーゼに手を出す。
エリーゼは緊張した様子でアレンに手を重ねた。
そして二人は会場の真ん中へ出ていく。
…なるほど!
踊るのか!
「今回はアレンが最初に踊るのか。今まで一度も踊ってるとこ見たことなかったが大丈夫か?」
「そうですね。もし、アレン様が踊れると分かった場合、ご令嬢の攻撃が面倒臭そうですが」
ハルトとジョットが心配そうに二人を見ていた。
どうやら、アレンとエリーゼが最初に踊り、その後で他の貴族たちも参加できるようになるらしかった。
今回はアレンたちだが、今までは国王たちが最初だったらしい。
私は固唾を飲んで見守ることにした。
二人は向き合ってお辞儀をし、踊る体勢をとった。
曲が流れ出す。
「お、兄妹だけあって息ピッタリじゃない?」
「アレン様のリードもなかなかお上手ですわね。エリーゼ様が踊られるのも初めてですわ」
「そうなんだ…」
二人とも、こんな多くの人が集まる場所で初めて踊るのに、すごく上手だった。
私のなんちゃってワルツとか屑に思えるレベル。
二人は慣れてきたのか、少しずつ笑顔になり、何か話している。
いいなぁ…私もエリーゼちゃんと躍りたい…
周りの貴族の観察をしてみると、驚きやらなんやらでみんなそれぞれの反応をしていた。
始めに踊る曲は短いらしく、そのあと直ぐに終わった。
アレンとエリーゼが戻って来て、他の貴族が真ん中へ出ていく。
「お疲れ様ー。めっちゃ上手だったよ」
「よ、よかったですわ。お兄様と踊ったのは初めてでしたから…」
「…初めてであれって…スペック高いなぁ…」
王族のスペックの高さ怖いな。
最初に踊った二人はそれから3曲空けなければ次は踊れないので、ここで待機ということになった。
「マリアナとジョットも踊っておいでよ。ハルトはアリスと行っておいで」
マリアナとジョットは私の言葉に頷いて真ん中へと向かって行き、ハルトはアリスを誘った。
アリスは真っ青な顔でドナドナされていった。
「キリヤはいいのか?」
「んー…賢者様行く?」
「そうだな」
アレンに促されたので、ヴェルトと行くことにした。
私たちが行くと周りがサッと場所を空け、緊張した空気になった。
曲が始まる前に、二人で向き合いお辞儀する。
私たちが組んだのをきっかけにしたのか、曲が始まった。
「キリヤ。実は結構楽しんでるだろ」
「へ……気づいたの?」
「そりゃあな。知り合いに会えてよかったな」
「ふふ…それもあるけど…」
こうやって、ヴェルトと踊れることが嬉しい。
それに、ああ見えてヴェルトも楽しんでいたのが分かっていたので、それも踏まえて嬉しかったのだ。
中途半端に言葉が途切れたせいでヴェルトが怪訝な顔をしたが、私はそれ以上言わなかった。
躍り終わってアレンたちのところに戻ると、国王たちとアイリーンが話しているのが見えた。
「ああ、賢者!キリヤ!君たちも来てるって聞いてビックリしたよ。キリヤ、次は私と踊ろ…」
「お前は女だろうが」
「大丈夫、男のステップも覚えているから」
私は二人のやりとりを見てそっとため息を吐いた。
あれ以来、アイリーンは私とヴェルトにちょっと馴れ馴れしくなった。
別に馴れ馴れしいのはいいんだけどね。
アイリーンの表情があそこまで物語っているのに、ヴェルトはどうして気付かないのやら…
…それとも、わざと気付かないようにしているのか?
長く生きていれば、そういうことも身に付くだろう。
見て見ぬふりということが。
「アイリーンさん、お話しがあるので、少しいいですか?」
「え?もちろん!」
「おい、二人でか?」
「そりゃね。あのバルコニーに行きましょう」
私についてくるアイリーンは少し警戒しているようだった。
…いや、そんな警戒するようなことするつもりはないんだけどね…?
バルコニーに出た私は覗き見しようとしている輩を排除する目的で結界を張った。
こっちから出ることは簡単だが、外からは入れないやつ。
しかも、外からは私たちが談笑しているようにしか見えない。
「…話って?賢者を諦める気になったのかな?」
「つかぬことをお聞きしますが、アイリーンさんっておいくつですか?」
「…はぁ?250歳だけど?」
「ふむ…賢者様とはいつ会いました?」
「100年ほど前かな」
「ほうほう…賢者様のどこが好きですか?」
「っ~!それを聞いてどうするのさ!」
「いや、純粋な興味ですけど…」
「そんなことよりも!いい加減賢者から離れてくれないか!」
「えー…」
離れたくても離れられなさそうなんだよなぁ。
消えたらヴェルトが顔色変えて探してきそうだし。
「賢者を弄んでどうするつもりなんだ。賢者から何を奪おうとしてる」
「…奪う?」
「人間なんて皆そうだ。賢者から何もかも奪おうとする。誰もが無駄に敬遠する。賢者にできないことがあれば不要だと言う!人間のせいでどれだけ賢者が辛い思いをしたのか分かっているの!?」
「…やっぱり」
「は?」
「そういうやつら、居たんですね。分かってたけど吐き気がする」
「…き、キリヤ?」
「私は賢者様から何かを奪おうとは思っていません。それに私は…」
その時、とても巨大な魔力が、先程まで私たちがいた広間に、現れるのを感じた。
私は咄嗟に結界を消し、広間に戻る。
後ろからアイリーンもついてきていた。
そこで私たちが見たのは、
5人の魔獣化したドラゴンだった。
ヤバイな、キャッツファイトしてる場合じゃなかった。
優秀な衛兵が貴族を避難させている。
多分、咄嗟にヴェルトが結界を張ったのだろう、5人のドラゴンは結界の中でむちゃくちゃに暴れていた。
この間のドラゴンは獣の姿だったが、今回のドラゴンは人の姿をしていた。
「…な、に…」
「アイリーンさん、知り合いですか?」
「5人とも…先日の先々代の王の側近だった方で…」
あら、マジか…
私は愕然とするアイリーンをおいて結界を張るヴェルトの横に来た。
「大丈夫?」
「大丈夫だ…と言いてぇが無理だな。持ってあと数分だな」
「うーん…一人くらいは元に戻したいね。いろいろと原因を知りたい」
「…無を使うのか?」
「…無属性かぁ…あれはなかったことにしちゃうからなぁ…どちらかと言うと神通力みたいな力を使おうかと…」
暢気に話し合いをしていたら、周りにいたみんなが慌て始めた。
「おいおい!お前らゆっくり話し合ってる場合かよ!」
「あれは先日と一緒でドラゴンなんですよね!?」
「え、うん。というかみんな逃げてなかったの?」
私とヴェルトが揃ってきょとんとしていると、私もヴェルトもウィルに頭を叩かれた。
「バカか!仲間放って逃げられるかよ!」
「痛ったぁ…」
「おい今マジで殴っただろ…」
ヴェルトと二人でうずくまって頭を押さえた。
私はともかく、殴られたヴェルトは相当痛かったに違いない。
…でも、泣きそうだったのは、痛みだけのせいじゃないんだろう。
「…くそう…よし、皆の気持ちはよーくわかった!一緒に戦ってくれると言うのだね?」
「お、おう…」
急に立ち直り、変な口調になった私をウィルたち元組織連中はとてつもなく嫌そうな顔になった。
「ふふふ…女性陣は置いてくとして……よし、転移!」
私はニヤリと笑って、転移を開始した。
視界の端で、ウィルたちが全力で逃亡しようとしているのが見えたが、ふはは…私の魔法に死角はないのだぞ!
というわけで、強制的に転移させた。
広間には、国王夫妻と、エリーゼ、オルディーティ夫妻、メアリア、アメリア、アリスが呆然と立っていた。
「…キリヤたち…どこへ行ったの?」
「…さぁ…」
まぁ、キリヤと賢者様がいるからいいか、と納得して今の混乱の収拾にあたることにした。




