私が秘密を話す話 パート④
結局、オルディーティ夫妻の登場で誰も声をかけてくることがなく、周りから遠巻きにされながらも私たちは会場の一角に陣取っていた。
「…国王陛下、王妃殿下、第一王子殿下、第一王女殿下のご入場である!」
周りが楽しそうに話すのを見ながら、話したがらないヴェルトとちょこちょこ話していると、近衛兵の一人(見たことある)が現れてそう言った。
談笑していた貴族はしぃんと静まりかえり、膝を折る。
私の周りもみんな膝を折り、立っているのは私とヴェルトだけになった。
「あ、私も例に習って膝を折るべき?」
「いいだろ、別に」
「んー、でも礼はとっとこうか、」
「普通に突っ立てろ。俺だけ立ってたら注目浴びんだろ」
「賢者っていう時点で注目浴びてるから諦めて」
私が軽く膝を折ろうとすると、ヴェルトに阻止されるということを繰り返していると、国王たちが入って来てしまった。
国王はすぐに私たちに気づき、苦笑してヴェルトに深く頭を下げた。国王の後ろにいた王妃様とアレンと妹ちゃんもそれに倣って頭を下げた。
ヴェルトは面倒臭そうに手を振ってそれに返事を返す。
私は国王と目が合ったので笑って軽く膝を折った。
国王はまた深く頭を下げた。
それから国王は王座まで来て座った。
そこでやっと、貴族たちは頭をあげる。
「よくぞ集まってくれた。急な招待に応じてくれた者達には礼を言う。此度はドラゴン討伐を成功させた7強の労いと、ドラゴンの王、アイリーン殿の歓迎を兼ねている。また、我が息子、アレンを皇太子にすることを発表させて貰う。アレン、挨拶を」
「はい。…国王陛下から皇太子の命を授かった。これはとても光栄なことだ。私は次期国王としてアルテルリアをより良い国にしいていくことを誓う。しかし、私はまだまだ未熟だ。だからどうか、支えてほしい…」
アレンの挨拶を聞いて、会場はざわめいた。
多分、アレンの低姿勢な様子が今まであまり見られなかったからだろう。
実際に私と会ったときとかめっちゃ「お坊っちゃま」って感じだったしね。
「お前達の力を皇太子に貸してやってくれ。これが本当に国王にふさわしいかは、お前達がそれぞれ確認してくれればいいと思っている。…さて、アレンの話はここまでだ。それより、我が国の英雄を労おうではないか。7強を案内せよ」
国王の命令に近衛兵が動き、ウィル達7強が会場へと入ってきた。
一応キリッとした表情でしっかりと歩いているが、私とヴェルトとシェリエは(あ、やばいなガチで緊張してるやつだ)と気づいた。
7人は微かに震えながら国王の前まで来て、膝を折り頭を垂れた。
「ドラゴン討伐を成し遂げ、民を助けてくれたことに礼を言う。この功績を称え報酬とともに、7人をSランクへ昇格させることを認めよう」
これは私も驚いた。
今まで二人しかいなかったSランクが一気に7人も増えることになるとは。
なんてことだろう…恥ずかし、…厨二びょ、…カッコいい2つ名があの7人に送られることになるなんて…あ、7人とも死にそうな顔してるわ。
「…お…私たちは当然のことをしたまでです。Sランクだなどと勿体ないお言葉です」
「アレンからそなたたちの活躍は聞いている。あのドラゴンですら子供を相手するようにあしらったとな。そのような者達をAランクのままにさせておくことなどできぬ」
「…慎んでお受けいたします」
死にそうなウィルが代表で話、結局Sランクになることになってしまった7人だった。
ちょっと可哀想なので、あとでフォローしてあげようかな、と思った。
そのあと、アイリーンが入ってきてちょっとだけ挨拶と謝罪を行いパーチーが続行された。
相変わらず周りから遠巻きにされている私たちに又もや近寄ってくるのがいた。
オルディーティ夫妻のように貴族が避けて道を作らせたのは、国王と王妃様、アレンと妹ちゃんだった。
妹ちゃんは近づくにつれて驚きを露にさせていく。
私はにっこり笑って妹ちゃんに手を振った。
「賢者様、わざわざ参加してくださり、ありがとうございます」
国王が最初に頭を下げ、王妃様、アレン、妹ちゃんが続く。
「おい、やめろ。俺に注目集めさせるな」
「いえいえ、すでに注目を浴びまくっていると思いますが」
「うるせぇ。…キリヤは王妃にだけ会ったことがなかったんだったな。レオナルドの嫁のティーゼだ」
私は国王の隣で深めに膝を折った王妃様を見た。
「初めまして、キリヤです。いつも賢者様がご迷惑おかけしてすみません」
私は王妃様よりも深く膝を折り、深く頭を下げた。
いやね、王妃様のが位高いんだからさ、私が王妃様よりも頭高いとかありえないよね。
「ティーゼ、キリヤさんも賢者様同様に必要以上に丁寧に扱われるのを嫌がる。年下の友人が出来たように思えばいい」
「まぁ…それでは失礼ですわ。賢者様はいつも陛下のどうでもいいノロケ話を聞かせられていらっしゃるんですよ?」
「ぐっ…」
「初めまして、キリヤさん。此度はわたくしたちの息子、アレンへの助力、感謝いたします。以前にもアレンとエリーゼを助けてくださったと聞いております。息子と娘の命を助けてくださり、ありがとうございました」
妹ちゃん、エリーゼって言うのか…
妹ちゃんは少しそわそわしながら私の様子を伺っている。
「いえ、エリーゼ様がとてもしっかりした可愛らしい方でしたのでお助けしたまでです。あんな男集団の中で女の子一人なんて見ていられなくて…こんなに可愛らしい方ですから、気が気ではありませんでした。エリーゼ様は王妃様によく似ていらっしゃいますね。美しい王妃様に似ているなんて将来が楽しみ…」
「おい待て、どうしてエロ親父みたいな話になってんだ」
「エリーゼ様が可愛いから」
「…」
ヴェルトに白い目で見られ、王妃様と国王に苦笑いされた。
私はヴェルトの無言の非難を無視してアレンと妹ちゃん…エリーゼに向き直った。
「アレン皇太子殿下、改めてお祝いの言葉を贈らせてください。殿下の治世が続くことを心から願っております」
「あぁ、これからも賢者様とおま…キリヤ…殿には世話をかけると思うが、よろしく頼む」
「うん。賢者様がきっと頑張るよ!」
「待て。俺に全て投げるな。それにテンションの落差が激しいぞ」
「たまには羽目を外すのもいいかと思って。お嬢様、この間はお嬢様と馬に一緒に乗れたこと、とても楽しかったです。騙すようになってしまってすみません。賢者様にとって弱い私は弱点とも言えますので、公にできなかったのです」
私はヴェルトよりも弱い設定なのだ!
そうじゃないとせっかくヴェルトが持っている賢者という地位を活用できないのだ。
「あの…キリヤ…様は賢者様と…」
「僭越ながら、賢者様の付人を任されています。これからはお嬢様にもこうして会う機会があるでしょう。その時は拙い私に色々と教えて下さい。それと、私のことはキリヤと」
「…キリヤ…殿、お…私と態度が全く違うのは何なんだ」
「お嬢様が可愛いから。アレンもキリヤでいいよ?」
アレンにも白い目で見られたが、私は気にしない。
それよりもさっきから王妃様がすっごく怖い笑みをアレンに向けてるんだけどアレン気づいてる?
エリーゼは今年15歳、アレンは今年17歳ということで、私はお姉さんらしく二人に私の友人たちを紹介した。
ハルトたち?何度か会っているし、アルベルト様は国王の親友だからね!紹介とかいらないってわけですよ。
メアリアは国王に何度か会っているし、ミゼンは天然なのでそこまで緊張することはなかったようだが、マリアナとアリスはプルプルと震えていた。
ジョットも緊張した様子で挨拶をしていた。
国王は少し楽しそうに彼らの挨拶を受け、アレンたちと仲良くしてほしい、と言った。
アレンにも挨拶をして、皇太子になったことのお祝いをみんなが言うと少し照れていた。
大人は大人、子供は子供で交流を深めなさいということになり、ヴェルトは強制的に大人チームへ、私は潤滑油役として子供チームに入った。
ギルドマスターとシェリエも大人チームだぜ!
「あ、7人貴族に囲まれてる」
「…本当だな。こっちに来ようと必死そうだ」
「あのっ、キリヤ様は7強様とお知り合いなんですか?」
「えぇ、キリヤのお兄様たちのような存在ね」
「まぁ…それでキリヤ…はドラゴン討伐に一緒に行ったのですね」
「…姉さんの兄の様な存在か…」
「あの人たちとキリヤさんではどちらが強いんですか?」
「うーん…そうだなぁ…魔術関係なしで7対1なら私の完敗。魔術関係ありなら私の圧勝かな?」
「「「「「「…」」」」」」
何でか知らないが人間じゃないようなものを見る目で見られた。
失礼だなお前ら。
何故か私を囲んでこいつら仲良くなりやがり、私を放ってワイワイやりはじめた。
ま、子供は元気に仲良くやるのがいいよね。
私は微笑ましい気持ちを全面的に表情に押し出し、6人を見守る。
なんてニコニコしていたら、貴族の壁を潜り抜けて来た7強が現れた。
アレンは7人を尊厳…?しているらしく、また、他の5人も7人を武神か何かと勘違いしているのか、キラキラした目で見ていた。
「…き、キリヤの友達だと…!?」
「友達いたのか!?」
「え?弟!?」
「似てねぇ…」
「おいお前ら私のことバカにしてんのか」
こんな時でも7人は7人で、組織の時のノリが残っているのが、凄く面白かった。




