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最強な賢者様と私の話  作者: 天城 在禾
事件、もしくは秘密
106/134

私が畏れられる話 パート⑥

最近執筆が進まない…

ので、レポート書くの後回しにしよう!




翌日、ドラゴンを見たという森に私たちは来ていた。

意外にも王子様はちゃんと着いてきた。


「あー、こっちっぽい」

「キリヤそれ勘だろ」

「もちろん!」


7強の一人、ツェフナーにそう突っ込まれた。

当然勘だったので、そう答えておく。

文句を言ってきた王子様を無視して私の勘の赴くままに向かう。


「…あー、面倒臭いことになってる」


私の勘のおかげで、無事ドラゴンの元に着いたのだが、そこには、昨日、ギルドで私たちに野次を飛ばした人物たちがいた。

彼らは無謀にもドラゴンに挑んでいた。

血の匂いがする。怪我をしているか、あるいは…


「どうする?」

「ギリギリまで放っておこう」


私たちは彼らが動けなくなるまで、近くに座って雑談することにした。


「そういやリタどうなったよ?」

「魔族と仮契約してきた」

「うお!?マジか!?すげぇなぁ。お前らの孤児院って魔窟だよな」

「えー?んなことないって。あれくらいのレベルほかでもいるよ」

「「「「「「「いやいやいやいや」」」」」」」


雑談に花を咲かせていると、ガゼルやロウ、王子様に唖然とされた。


「お、お前ら…」

「話してる場合ですか!?」

「助けてやらんのか!?」


「…なんで?助けてあげる義理はないですよね?」


そう答えると憤慨された。


「…私たちが受けた依頼はドラゴンの討伐だけです。人命救助は含まれてないんですよ」

「何をふざけたことを!人の命が掛かっているのとに依頼など…」

「なら貴方がたが助けたらいいんじゃないですか?」


私がそう口にすると、ロウは唇を噛んで、駆け出した。


「ガゼルさんと王子様はどうするんです?」

「…殿下、しばし側を離れることをお許しください」


ガゼルさんも、ドラゴンに向かって駆け出す。


「どうしますか王子様」

「っ…俺は……俺は無理矢理連れて来られただけだ…!」

「そうですねぇ。まったくもってその通りです」

「…だが、俺は…この国を背負って立つ者だ…!」


王子様はそう言って、詠唱を開始しながら駆け出した。


「…つーか何で俺には何も言わねぇんだよ」

「確かに。この旅の主体ってヴェルトなのにね」


ボソッと呟いたヴェルトに、私は同意する。

…なんで私に主導権あるみたいになってんの?

ドラゴンに向かって行った3人は傷だらけになりながらも、見事ギルドメンバーを助け出していた。

意外にも王子様の魔術は強く、詠唱の時間さえどうにか出来れば、単体のハルトと良い勝負をするだろう。

普段そこまで強い魔術を使うことはないからか、王子様の魔力の滞りが少しずつ解れてきている。

時間は掛かりそうだ。


「よっし。私たちの実力を見せてやろうぜ!」

「お前戦わねえだろ!」


7強の彼らは善人だし、お人好しばかりなのでギルドメンバーたちを助けたくてうずうずしていたのだ。

だが、私たちが活躍ばかりしていても王子様の成長にならないと思ったため、みんなには待ったをかけていた。

私の許可が下りた彼らはドラゴンの爪に襲われていたシェリエと食べられそうになっていたガゼルを助け出した。

ドラゴンはデカイだけに攻撃は遅く、魔獣となったために知能もない。

速さが売りの7強は同じ場所を全員が時間差で攻撃することで確実にドラゴンの体力を削って行った。

ドラゴンの硬い鱗を少しずつ剥いでいき、首筋に無防備な部分が増えてくる。


「相変わらず凄いよねー」

「うん。俺らってあの人たちの鍛練よく耐えたよ」

「…だねぇ…」


組織時代を思いだし、遠い目をする私とシェリエにヴェルトが慰めるように肩を叩いた。

ぼろぼろになったギルドメンバーと王子様たちは、さっさとこちらに逃げて来ていた。

10人ほどいるギルドメンバーのうち微かに意識はあるものの自分の意志で体を動かすことができない者が半分で、ギリギリ動ける者が半分だ。


「お、お前…死ぬところだったぞ!」

「いや、だから依頼に人命救助は含まれてませんって」

「俺に魔力を使わせるためにあんな演技したんだろう!シントという男がそう言っていたぞ!」


演技でもなかったんだけどね…

まぁ、そういうことにしとくかな?


「王子様、まだ魔力の滞りは治ってないんですから、もっと魔力使わないと」


私は王子様の発言を無視して死にかけているギルドメンバーを指した。

私の言いたいことが分からないらしい王子様に治さないと死にますよと脅しかけると、王子様は急いで魔力を使い始めた。

王子様は水と土の属性を持っているため、水の力で治療を始める。

ん?攻撃よりも治療のほうが魔力の滞りが解れ易いようだ。

半分ほど滞りが解れた頃、治療も終わった。

攻撃と治療で底が尽きそうなほど魔力を使った王子様は、木の根元にぐったりと座り込んだ。


「お疲れ様でした。偉い偉い」


王子様の頭を撫でてあげ、少し多く魔力を含む水を渡した。

反発する気力もないのか、王子様はされるがままで水も素直に受け取った。

王子様はガゼルに任せ、私はシェリエと共に7強の観察を再開した。


「現役時代より速さは落ちたか」

「けど技の熟練度が高まったからそれでカバー出来てない?」

「まぁね。あの7人なら向こう10年は大丈夫そう」

「大きな怪我さえなければだろうけど」


そんな会話をしていると、ロウがぽかんとした顔をして、シェリエの肩を叩いてきた。


「な、なんだあの速さ!」

「あれ?ロウは見たことないっけ?あの7人たまに騎士の鍛練に混じってるんだけど」

「それは聞いているが…見たことはない」

「教えに来てくれるんだけど、あの7人あれが当たり前で自分達は普通だと思ってるから手に負えなくて。しかもあれで手加減してるから」

「う、そだろう…?」


シェリエにそう説明され、ロウは絶望したようにドラゴンと戦う7人を見る。


「んー、次は3人で充分だね!」

「「「「「「「やめろ!」」」」」」」


聞こえてたらしい7人に突っ込まれた。

瀕死になってきたドラゴンに、止めを刺すタイミングを7人は待つ。

が、その前にドラゴンは最後の手段に出るらしい。


「あー、ヤバい」

「俺も参戦する?」

「いや、それより7人にこっち戻るように言ってほしい。賢者様ー、一応結界張ってねー」

「分かった」


溜めの構えを見せたドラゴンは、どうやらドラゴンの奥の手、ブレスを放つつもりらしい。

さすがに7人もこれを防ぐことはできないため、私が出動することにした。

7人はブレスを避けることはできる。だが、避けると森や近くの地形に被害が出てしまう。

7人が戻るのを尻目に、私は魔法で空に浮かぶ。

ドラゴンの視界に入った私を、獲物と決めたようだ。

そして、ドラゴンはブレスを放った。


「彼の者の力を破壊せよ」


私は片手を突き出し、一応詠唱する。

陣を書いてる暇は無かったし、詠唱しなければ怪しまれるためだ。

ブレスは私の片手に吸い込まれるように消えていく。

正しくは消えたのではなく、分解しただけたのだが。

ブレスは5分くらい放たれ、その間に7強がじりじりとドラゴンと距離を詰めていた。

ドラゴンがブレスを吐ききった瞬間、7人は大きく跳躍し、首筋に出来た大きな傷に攻撃していく。

最後の攻撃が終わった頃には、ドラゴンの首は半分程しか繋がっていなかった。

ズンッ…という音を立てて、ドラゴンは崩れ落ちた。

私は魔法を解除して地面へと降り、安堵のため息を吐く7人に労いの言葉を掛けつつ水を渡していく。


「ドラゴンが弱ってて助かったな」

「あぁ、あのギルドメンバーや王子様たちのお陰だな」


そんな会話を交わす7強を、私は呆れた目で見る。

駆け寄ってきたシェリエも同じだ。


「あの7人って、意識しないで嫌味言ってくるから最悪だよね」

「あぁ、本当に。けっこう強い騎士が続々と心折られてくから手に負えない」


ハッキリ言って、ドラゴンはギルドメンバーで遊んでいただけだ。

助けに入ったロウや王子様たちは、ギルドメンバーを守ることしか出来ていなかったので、ドラゴンは無傷の状態だった。

シェリエと二人舌打ちしながら7人を睨むとしょんぼりされた。

…悪気がないから怒れない…

また、彼らがそういう意識だからこそ、この強さを保っているため、強く言いたくはないのだ。


「あんまりあいつら苛めるなよ」

「…うんごめん」


後片付けにやってきたヴェルトに諌められ、大人しく謝った。

一応死んでいるかヴェルトが確認し、私たちは解体に移った。

鱗や爪、牙などは何かの材料になるらしい。

…多分武器だろうけど、削った粉を薬として使うこともあるらしい。

少し貰っておいた。

肉は食べられるらしいが、内臓は心臓以外は全て捨てていく。

臭みが強すぎるし、毒があるらしい。

…それを教えてくれたのはヴェルトなので、一度食べたことがあるんだろう。

そういう意味を込めてヴェルトを見ると、目を反らされた。

…魔獣化したドラゴンだよね!?

もしや知能持ってるドラゴン族の一人を食べたとかないよね!?




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