第5章:丘の音楽
第5章:丘の音楽(色喰らい視点+クマちゃん&メイドちゃん)
丘の上は、祭りのざわめきから少し離れて静かだった。
草むらに寝転ぶ子どもたちが、笛を吹いている。
──ド、ミ、ソ。
明るい和音が宵空に広がり、笑い声のように澄んで響く。
私は耳を押さえた。
「……まぶしい……」
長三和音。私の嫌う音。
それは緑の光に似て、胸を焼く。
欲しいのは孤独な音。
ひとつだけの低い音、重く沈む響き。
あるいは、不協和に濁った旋律。
和音など、壊してしまえばいい。
私は指先を伸ばす。
影が笛に触れるたび、音はばらばらに砕け、孤独な音だけが残る。
──ドだけ。
──ミだけ。
──ソだけ。
不安定で、心地よい。
これこそ、私の糧。
そのとき。
「待って!」
クマちゃんの声が夜に響いた。
ぽてぽてと駆け寄り、手にした赤りんごソーダをぷしゅっと開ける。
弾ける炭酸の音が、ド・ミ・ソの隙間に飛び込み、音楽を呼び戻す。
「らら……らら……♪」
メイドちゃんが歌を重ねる。
彼女の声は澄んだ緑色のように広がり、消えかけた和音を結び直していく。
私は身をよじった。
「やめろ……その音は……私を裂く……!」
だが丘には、もう笛と歌とソーダの音が重なり合い、友情の旋律が満ちていた。
私は退いた。
紫の渇きは満たされず、胸に孤独だけを残して。
だが心に誓う──
「次こそ……奪ってみせる」
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次回予告:
『色喰らいの挑戦』
第11話 強力な友情!!
お楽しみに。←嘘です




