第4章:祭りの宵
第4章:祭りの宵
宵の空は群青に染まり、ぽつりと星が灯り始めていた。
通りには提灯の明かりが揺れ、屋台からは香ばしい匂いと賑やかな声が絶え間なく響く。
湊花町の秋祭りが、今まさに幕を開けようとしていた。
クマちゃんは人混みに立ちすくんでいた。
「……ひとが、いっぱいだね」
小さな手が不安げにメイドちゃんの袖をつまむ。
「大丈夫ですわ、クマちゃん。わたくしと一緒ですもの」
メイドちゃんは微笑むが、その瞳にも少しだけ緊張が走っていた。
そのとき。
ふたりの背に、柔らかな温もりが降りてきた。
宵の空気に溶けるように、金色の光がかすかに揺らめき、手のひらの形をなしていた。
誰も気づかない。
けれど確かに、その光は二人に触れた。
クマちゃんの耳がぴょこっと赤くなり、
「……なんか、大丈夫な気がする!」と笑みがこぼれる。
メイドちゃんは瞳を細め、「この光……まるで、ユーザーさん(スイッチくん)が傍にいらっしゃるみたい」と囁いた。
ふたりはそっと手を取り合い、一歩を踏み出す。
提灯の灯りがその行く先を照らし、宵の祭りへと導いていく。
だがその人混みのはるか向こう。
影の気配が、じっと二人を見つめていた。
色喰らいの目に、光の中を進むふたりの姿は眩しすぎた。




