2 アーカイブ資料:立ち入り禁止区域への侵入者の配信記録
二〇五八年■■月■■日 午後一時十二分
本映像資料は、ネット上にて配信活動を行う者が立ち入り禁止区域へ侵入後、追従式撮影用ドローンを利用し、街の様子をインターネット上へ配信した映像のアーカイブである。
閲覧に際し、必ず資料利用ガイドラインを一読し、遵守すること。
<映像資料内容>
(配信開始)
「――あー、どもども。廃墟探索系配信者の■■でーす。今日は日本で初めて魔物の出現が確認された街で、都市伝説も色々ある曰く付きの場所、霧が丘街――通称『原点の地』に来てます。ちゃんと見えてますかー?」
・みえてるよー
・画質わるw
・画面止まったけど自分だけ?
・俺も止まったけど再起したら何とか
「画面がカクつくのは許してください!ドローンで配信してるのもあるんですけど、ここ、回線が悪いっぽいんで」
・てか霧が丘街ってどこ?
・田舎っぽいのはわかる
・確か■■県■■市だっけ?昔旅行で寄った時はそれなりに発展してる所だったよ
・都会暮らししてる奴からしたら県外なんてほぼ田舎みたいなもんだろ(暴論)
・そこって立ち入り禁止区域じゃなかったっけ?
「そう、立ち入り禁止区域です。忍び込みました」
・忍 び 込 み ま し た
・犯罪で草
・警備は何してんのw
「まあまあ、警備を責めないでやってくださいよ。今までここに入ろうとして捕まった仲間たちの記録をもとに抜け穴を見つけたんで、まあ、こっちがちょっと上だっただけみたいな?」
・その才能をもっと別のところに活かせばいいのに…
・いよいよ炎上系として振り切り始めた?
・通報しました
・チャンネル登録解除しました
「待って待って、でも皆見たいでしょ!?災害が起こってから十数年、未だに封鎖されたままの街がどうなってるか」
・まあ進展が無いってのはそうよね
・俺らが見る分には無害だし、好きにしてもろて
・「お前は知りすぎた」とか言って消されないことを祈るばかり
・てかさ、こういうのって何が起こるかわからないから立ち入り制限されてるんじゃないの
・未確定だけど、人間が居る場所に魔物が沸きやすい説があったよね
・無駄に刺激して惨事になったら最悪だぞ
「皆怖いこと言いますねー。でもほら見て、こののどかな街並み。魔物が出るとは思えなくないですか?」
・確かに、こんなところに魔物が居るわけ無いな、HAHAHA
・死亡フラグ?
・のどかな街並み(魔物の痕跡あり)
・本当に大丈夫なんか
「まあ、こっちもそれなりに準備はして来てるんで。お茶の間でも安心して見られる配信を約束しますよ」
・謎の自信
・とはいえ、ここに侵入するルートも計画してたわけだしな
・忘れそうになるけど、俺ら今犯罪者見てるんだった
・お茶の間で犯罪者見るのは勇気がいるな……
・教育に悪すぎる
(街の様子を見て回り、戦闘痕を発見する)
「うわあ凄い、血の跡とか、何かすごい抉れ方のコンクリートとか……如何にもここで戦いました!って感じの場所ですね」
・これって何の血?人?
・ちょっと黒いから魔物かな
・コンクリートの抉れは魔法少女がやったのかな
・ファンシーな名前に対して結構えぐいよな
「魔法少女ねー……最近は半分タレントみたいな扱いになってて忘れがちですけど、あれで魔物と対等にやりあえるヤバい存在ですからね」
・色んな魔法少女が配信とかテレビ出演とかしてるけど、「かわいい」とか「推せる」とか言ってる場合じゃないよな
・画面の向こうに居ると非現実感というか、他人事感があるんだよな
・実況板とか見ると、アニメでも見てるんかって空気感すらある
・確か魔物が出始めたと同時くらいに現れたんだっけ?
「そうそう。何か、魔界?的な世界からやってきた善の存在が力を授けた結果生まれたのが魔法少女、みたいな話でしたっけ?」
・女子ばっかりなのが悲しい。どうせなら男もヒーロー的なのにしてほしかった
・アメコミに憧れすぎ
・男も稀に魔法少女化できるみたいな都市伝説無かった?
・トラックに轢かれたら云々、みたいなありがちなやつね
・TSものに憧れすぎ
「一応、一般人が魔物に抵抗できる兵器も開発されてますけどねー。ゴテゴテ装備で固めたところで結局は一般人の枠は出なくて、魔法少女一人置いた方が余程強いってオチなんですよね」
・危険地帯に単身で来た一般人代表が言うと説得力が違うな
(視聴者のコメントと雑談しつつ、建物や家屋に残された物品を調べる)
「――うわ、当時流行ってた『ヴァンパイア・バスター』だ!懐かしー……今の視聴者、知らない人も多いんじゃないですか?知ってます?」
・■年前の作品だっけ?
・懐かしいってほどでも無い気が
・中学生だけど知ってる俺って変?周りからは変わってるってよく言われる
・はいはいすごいね
・子供が犯罪者の配信見ちゃダメだろ!
・まっていま音した
「ん?音?」
・え
・急に何?
・何も聞こえなかったけどどんな音?
・ガラス踏んだ音みたいな
「マジ?ちょっと気になるんでドローンの録画確認し……」
(配信者がドローンを抱えたまま激しく動き、カメラが乱れる)
・え何急に
・何かいる?
・急に黙るのやめてよ
・これマジのやつ?
「これやばいかも」
(魔物が唸り声を上げながら歩く音)
・どっから来たんだ
・玄関は閉めてたはずだから、窓?どっか割れてたのかも
・マジのやつだこれw
・身の危険が迫った時に隠れるならやっぱりロッカーよな
・■■さん死なないで
「大丈夫、一応銃は持ってる」
・よく見えないけどまさかただのピストル?
・魔物からしたらおもちゃでしかないんですがそれは
・最初の方に言ってた対策ってこれだけ??魔物舐めすぎでしょ
・普通に反省した方がいい
・今反省したところでどうにもならん
・魔物に配信主が隠れてること教えたいんだけど、今寄付チャット飛ばしたら音鳴らせたりする?
「ちょ、それは洒落にならないからマジでやめ――」
(配信者が隠れている場所へ向けて魔物が吠える声)
「ちょ、気付かれたって!ヤバい、マジでヤバい!本当に死ぬ!」
・人命懸かってるところでふざけるのはマジで終わってる
・警察呼んで
・とりあえずそこの管轄っぽいところに通報した
・これ間に合わなくない?
・銃使え
「っ、くそ、このっ、食らえ!」
(閃光手榴弾が爆発し、魔物が怯む)
・フラッシュバンなんて持ってたんだ
・まぶしいいいいい
・急に何も聞こえんくなった
・視聴者にも効いてます
・予備の鼓膜あってよかった~
・多分ドローンが音割れ防止で自動調整してる。実際はマジで鼓膜破裂レベル
・えっこわい…
・てか魔物にも目くらましって効くんだね、新発見
・銃使え
「はあっ、はあっ、言ったでしょ、ちゃんと対策はしてるってっ。あー耳痛えな!」
・爆弾使う時は使うって言ってくれマジで
・魔物ガチギレしながら追ってきてますよ
・倒さないと一生追いかけてきそう
・これ撒けるの?
・対策あるって言っても手札は有限だしな
「近くにビルがあるんで、そこでやり過ごそうかと」
「警告。追跡対象■■から出血を確認。状態、軽微。時間経過に伴う悪化を防ぐため、早急な一時措置を推奨」
「え?……うわ、本当だ。どっかで擦ったか?最悪だ、気付いたら痛くなってきた」
・魔物に噛まれたりは多分してないもんね
・ドローン余計な事したなw
・てか隠れるにしても相手が鼻が利くタイプだったらダメじゃね?
「その時はその時!」
・無計画了解
・不安だなあ
・銃は?
(廃ビルに到着し、階段を駆け上がる)
「最悪、屋上まで行って突き落とします!落下ダメージは効くはず!」
・作戦がバカすぎる
・この期に及んでゲーム脳は最早尊敬するわ
・あんまり時間かけてると他の魔物が寄ってくるかも
・銃…………
「ん?……待って、女の子がいる!」
・は?
・魔法少女が来たってこと?
「いや魔法少女じゃない。丁度部屋から出てきました!ほら!」
(配信者がドローンを掴み、何も映っていない場所にカメラを向ける)
・確かに扉はあいてるけどさ
・誰もいないよ
・見間違いか幻覚じゃなくて?
「いや目の前にいますって、ほら!君、何してるのか知らないけど、向こうから魔物が来てるから一緒に逃げよう!」
・マジで誰に喋ってるの?怖い
・恐怖でおかしくなった?
・自分で連れて来といて危険も何も無いだろw
・それより魔物が壁登ってきてる
「何で普通に登ってくるんだよ!せめて階段使えよォ!」
・言ってる場合かw
・詰みかけてるのにちょっと笑っちゃった
・階段側塞がれちゃった
・逃げ場ないぞ
「くそ、またあれを使うしか――」
(直後、魔物が何かに掴まれたかのように宙に浮き、地面に叩きつけられた後、ビルの外へ打ち捨てられる)
・え
・は?
・何今の
「えーっと……。君、強いね」
・マジで意味不なんだけど
・どゆこと?幻覚の女の子が倒したの?
・女の子のすることとは思えない倒され方してましたけど
・というか何でカメラに映らないんだ
「よかったら一緒に逃げない?ここは危険だからさ。いつからここにいるの?」
『――昨日』
「……昨日?」
・薄らとしか聞こえなかったけど声可愛い
・でも見えねえんだよな
・視聴者目線、虚空と会話してるヤバい人
・まあ魔物に襲われるのと比べたら、カメラに映らない女の子なんて些事だな!ヨシ!
『……が欲しい』
「――欲しい?何が?」
『――ち』
・Q:”ち”で終わる欲しいもの
・友達?
『……お前の、血』
・!?
・やば
「は、はは、面白い冗談――ぐっ、うぅ!?」
・これ襲われてね?
・やばいって
・通報通報
・もう通報なんてとっくにしてる
・終わった
「ドローン自動通知。追跡対象の生命に危険が迫っているため、配信を中止し、救援要請モードへ移行します。管轄の救援隊へ現在地を発――」
(ドローンが破壊される音)
(配信終了)
<備考>
通報を受けた後、約十八時間後に魔法少女が一名派遣された。本記録に映っていた男性は救出され、治療を受けた後、警察へ引き渡された。
本件の再発防止のため、管轄部署へ監視方法の監査・体勢強化の指導を実施。また、魔法少女の派遣が遅れた理由については、「休暇中の魔法少女を呼び出してまで不法侵入者を救出する意義は無いと思った」との釈明あり。担当者は懲戒処分となった。
本件の被害者の救助を担当した魔法少女の記録は、別途資料「霧が丘街 臨時派遣記録アーカイブ」を参照。




