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第24話 媚薬と殲滅2/4

 俺はスラムをブラブラし、自分を売っている女性から声をかけられるがきっぱりと断るを繰り返し、人通りの少ない場所で露店を開いてる奴を探す。

 そして八回ほど女性に声をかけられ、曲がり角を無作為に五回曲がると、石畳の上にマットだか絨毯みたいなのを敷いて商売をしている奴を発見した。

「ちょっと見せてくれ」

「はいはい、どうぞどうぞ。これから女性とお楽しみで?」

 商人はニコニコと、いやらしくない笑顔でそんな事を聞いてきた。

「……まぁそんなもんだ。噂を聞いてな、大満足できる奴を捜している」

「それはそれは……。お客さん、凄そうですからね……。実はアレは表に出してないんですよ」

 商人は後ろにあるバッグから、いかにもな薄いピンク色の液体の入った小瓶を出し、俺の前に出してきた。


「どうぞ、大銅貨五枚です」

「あぁ少し待っててくれ」

 適正価格は知らないが安いって噂だし、銀貨を一枚ポケットから取り出し、指を二本出す。

「おきゃくさーん。好きだねぇ……。いいよ、一気に二本飲まないなら売ってあげます」

「あぁ、夢魔族と一回寝た事があるからその怖さはよく知ってる。それを普通の女で試してぇんだ」

「なら大丈夫ですね」

 俺は商人から小瓶を二つ受け取り、腰のポーチに入れ、角を曲がってから装備を変更し、少しだけ顔を出して後ろにあったバッグに発信器を取り付け適当にブラブラする。


 そして昼時になっても動かないのでどうしようかと迷っていたが、二人組の男が通りに入っていき、持っていた紙袋を商人に渡したのか、手ぶらで出てきた。

 そして少しのぞき見すると商人は飯を食べ始めたので、夕方までいると勝手に思い、二人組の男の方を尾行する。

 そして、家と家の隙間の通路に入っていき、細い階段を下りていったのでMAPを見ると光点が多数あったので、自動拳銃に弾が装填されてるか確認してから俺も階段を下りる。

「いらっしゃいませー。お好きな席にどうぞー」

 胸を露出している、下着しかつけていない若い女性店員にそう言われたので、護衛二人が見える位置に座り、ビールとおつまみを頼み、とりあえず昼間っから飲むおっさんを演じ、周りを気にして隙を伺いつつ発信器を靴の踵に打ち込む。


 そして適当に飲みつつヘイと大飯に尾行中のメッセージを送り、金を払って階段を上がった先で道路に仰向けで寝転がって寝たふりをしてると、スラムの娼館を回ってたヘイが先に来て、尾行を引き継ぐと言って去っていった。MAPには見えてるから、屋内か?

 そして護衛二人が出てきて、俺の方を見て商人の方に向かっていったのでMAPを見ると、ヘイも動いてるのが確認できたので飛び起き、走って上級区のボスの所に行き、場所と商人の特徴を言い、ヘイと大飯が尾行中と言う事も伝えた。


「早速向かわせよう。誰か行ってきてくれ! こっちは既に別な班が三組ほど見つけている。意外に少なくて驚いたよ。もう少し多いかと思ってた」

 ボスが途中で大声で叫んだが、この部屋の近くで待機してた人にでも言ったんだろうか? つまり口頭での説明も隣の部屋じゃないのに聞こえてたってやつか。すげぇな。

「別の街か、もう少し国の中に入り込んでるかじゃないですか?」

「可能性は高いね。とりあえずウェスに言ってメディアスに伝えさせよう。そうすれば国や機関にも伝わる。それとお駄賃じゃないが、ここにある焼き菓子を好きなだけ持って行くがいい」

 そういってボスはボウルに入ったクッキーを出してきたので、モリモリ口に運んでお茶を飲む。


「さっき尾行ついでに酒を飲んで酔いつぶれたフリをしたんで、甘い物が欲しかったんですよ」

「スピナシア君は案外お茶目だよねぇ。演技でそこまでやるなんて」

「顔を覚えさせて、尾行じゃない事を訴える感じで。さっきまで後ろついて行って一緒の酒場に入るんですからそのくらいは必要ですよ」

「ははは、おもしろい方法だ」

 それから少しだけ雑談をしていると、ヘイからメッセージが入り、監視をボスの部下に引き継がせたと送られてきた。

「無事引継ぎしたらしいので、俺は近所の詰め所に行ってコレを届けに行ってきます」

「あぁ、そうしてくれ」

 俺は屋敷の地下から出て、しばらく歩いて詰め所に訳を話すと、早速別な奴が頑丈な箱に小瓶を入れて走っていった。

 行動が早すぎる。それだけ本気って事か。



 それから数週間、適当にぶらついて小瓶を買ってはボスに報告し、詰め所に届け出るという事を、収穫祭を挟んで続けていたらまたお迎えが来た。進展があったらしい。

 公爵家に連れて行かれ、応接室に入ると大飯以外が揃っていたが、珍しく遅れてやってきた。多分臨時パーティーで狩りに行っていたんだろう。

「急で済まないが裏が確実にとれた。国としての侵攻になると不味いので、少数精鋭って事でお前達に行ってもらいたい」

「それはかまわないけどさ、実際どんな感じなの? 規模とか場所とかさ、もう少し説明ちょうだいよ」

 ヘイは情報が少ない事に怒り気味だが、確かにそれだけで、はいわかりました。で動く事はない。

「敵国側の国境付近の小さな村が制圧され、村人が全員組織化された物に変わっていた。機関が行商人になりすまして村へ入ったが、村人は訓練された人間だそうだ。重心の動きや足の運びで判断したらしい」


「つまり全員敵って事でいいのか? 殲滅したら確実に国が動いたって事になるだろう? 外交が面倒な事になるんじゃねぇのか?」

「やばい薬作ってて、それがこっちに流れてる。それを秘密裏に破壊しても文句は言われないんじゃない? 本当になんでもない村ならアレだけど。それにメディアみたいな媒体もないし、偏向報道もできないでしょ。せいぜい偏向的な噂の流し合いだよ」

「それに、破壊してもばれるまでに時間がかかると……」

「そうそう、殲滅ならね」

 ヘイはニコニコとしており、メディアスとウェスは眉間にしわを寄せ、ボスはお茶を飲んでいたが、一瞬だけ動きが止まっただけだった。


「君達。殲滅と言ったけど、何か秘策とかでもあるのかい? 前にスピナシア君に仕事を頼んだ時も、短時間で必要な場所以外に入った形跡はなかった。地下の酒蔵とか倉庫に隠れてる可能性もあったのに……」

 んー、ボスはある意味鋭いなー。

「えぇ、俺達はある程度の敵の気配が分かるんですよ、隠れててもどこにいるかとかね? 左の部屋に二人、動き的に掃除中だと思う。そして右には六人、これは休憩中だと思うけど、一人壁際にいて聞き耳を立てているね」

「あぁ、あの覗き穴か。もう敵じゃないからつっこみはしなかったが、毎回誰かしらは聞いてるよな」

「だねぇ。会話を記録でもしてるかってくらい毎回だね」

 そういうとメディアスは渋い顔になり、ボスが声を殺して笑っている。

「わかった、君達を信じよう」


「機関の人間は村にはいない。行商人を装って入ったが接触はなかったそうだ。多分殺されたか、別な場所に移動したか……。遠慮なくやって良いとの事だ」

 メディアスは、村には国の機関の人間はいないと言ってきた。つまり好き放題って事だな。

「後方支援の方はどうなってる? 最悪道案内と足くらいは欲しいんだが? ついでに脱出用の足も」

「出発は早ければ早い方がいい。幸いにも機関の人間が屋敷に滞在している。できれば明日にでも出て欲しいくらいだ。脱出に関しては村の近くの森に馬車を待機」

「街に入り込んでる行商人の処理はどうするの?」

「確かに気になりますね。処理中に帰ってきて、逃げられたら困るのは国でしょう?」

 ヘイと大飯も俺とは別な質問をした。確かにそういうのも気になるな。


「それは、国境を越えない森側の中で十人一組の部隊を三組常に配置。つまり行く時は馬車数台、国境を越えるのはお前等と案内の四人だ」

「行くときだけクソ目立つな。まぁそこは上手く偽装するんだろうけど」

 数台まとめて移動はまずないだろう。目立つし。

 その後は軽く話し合いをして、依頼を引き受けてから解散になるが、帰りに必要な物とか私物を買い込み、明日朝に出発と言う事で別れた。


「おかえり、ずいぶん早いのね」

「あぁ、明日から少し遠出する事になった。だからだな」

「あらそう。大変ね」

 グリチネは昼の仕込みをしながら、特に驚く事も深く聞く事もしてこなかった。多分だが、例の事件がらみだと薄っすらと気が付いてるからだろう。そもそも滅多に遠出しないし。

 そして夜は程々で済ませてくれた。



「んじゃいってくる」

「はいはい。また変な噂をばらまかれないように」

 俺はギルドカードと指輪、ハンカチを渡し、軽く言うと軽く返された。

 そしてタバコをくわえて火を着け、ピアスとハンカチを出してきて手をヒラヒラと振り、いつも通りに見送ってくれた。

「スピナシア様ですね。こちらへ」

 門が開く前に到着すると、トニーさんと同じく記憶に残りにくい顔の男がこっちに寄ってきて、軽い会話と共に馬車に乗せられた。多分機関の人間だろう。

 そして、やっぱり時間前に三人が集まり、門が開いてから速攻で馬車が出た。


「いやー。自分の顔も割れてるとは思いませんでしたよ。公安っぽい組織怖いですね」

「だな。妙な寒気を感じたわ」

「野球場の席に人間を全員座らせて、中央にカメラ置いて一周させると、五秒以内に全員の顔を判断して、過去に犯罪をして捕まった事のある奴はリストが一瞬で出るって聞いた事あるね」

「あー、空港や港関係の防犯カメラもソレって聞いたな。本当そっち系の組織は怖いよな」

 無駄な事を喋りつつ、馬車の移動を暇を潰しながら過ごす。

 この世界の暇潰しって少なすぎる。トランプ的なカードでもどこかで買うか。



 エロワード山手線ゲームをしながら街道を進み、あの時に落とした橋の上を通過し、途中で襲われていた村とは別方向の細い道に入り、そのまま進み続けると森が見えてきたが、道っぽい所からかなりの距離を置いて停車し、四人で蔦とかを乗せて目立たなくした。

「ここからは歩きになります。道案内は私がします」

 馬車のドアが開けられ、既に顔を忘れかけていた男に言われて外に出る。ってか理科準備室がエロワードとして通り、凄いフェチ扱いされたのにはもの凄く驚いた。

 実験道具をエロ方向に使う発想が、俺の三倍は違ってた。こいつ等が普通に学校に通ってた方が恐ろしいわ。だってコマゴメピペットがあんな使われ方するなんて――


「確認するが、村の中に身内はいねぇんだろ?」

「えぇ、脱出したか別な場所に移ったかです。まぁ最悪殺されてます。この間の潜入で接触はなかったので、そのどれかでしょう」

「ならなんでもありだね。歩きながらある程度決めちゃおうか」

「そうですね……。基本サプレッサーで、ばれたら爆発物の使用もあり。後は村を見てからで」

「だな、それが無難だな」

 森の中を歩きながら作戦とは言えない会話をし、一時間くらい歩くと森が切れ、遠くに村が見えた。


「殲滅対象の村はあれですね。よろしくお願いします」

「上空からの地図を表示させる」

「ならこっちは偵察」

「周囲の警戒」

「潜入は明日の明け方前でいいか?」

「夜駆けは基本だね」「黎明時は基本ですし」

 三人で役割を決め、俺はUAVを選択して組み立てて飛ばし、ヘイはスポッタースコープで村の方を見て、大飯は周囲の警戒をしている。


「おい、商人が村に向かってるぞ?」

 上空からの監視をしていたら、馬車が一台村に接近しているので、取り合えず聞いてみた。

「我々が対処するのは、殲滅後の商人です。村の中にいる奴は敵国の人間です。気にせずに殺ってください」

「……あいよ」

 俺は一応紙に簡易的な地図を描き、ヘイも何かを書いていた。そしてそれを、機関の人間が模写していた。


「さて、暗くなる前に作戦会議だ。村は幸い丸太で囲まれた、外から見え難い構造だ。侵入ルートも限られてくる。円状で出入り口は東西の二ヶ所、(やぐら)は出入り口の外と中央の三つ。丸太の内側に足場はないから他の見張りと逃走ルートは気にしないでいいな」

 俺は機関の人間にもわかるように、紙に描いた地図で説明をする。

「ここから確認できるだけの情報だけど、出入り口と櫓の見張りは三時間交代。飽きが来ないための配慮だと思う。必ず二人組でやっているから、タイミングをみてセミオート系か二人で狙撃かを提案する」

「ここの家屋への出入りが多い、さっきの商人も馬車を止めて護衛と一緒に入って、出て来た時はこっちだ。とりあえず破壊目標をA地点としよう」

「提案です。二手に分かれ、櫓の見張りの排除後入り口の二人も排除、A地点から一番遠い場所をB地点として、そこから半円を描くように移動して各家を制圧、一人は遊撃で防壁沿いにない家の制圧。コレが一番素早く終わらせる事ができると思います」

「……ヘイ、どう思う?」

「良いと思う。コレで異議はない」

「俺もない。なら二人で見張りをしつつ二十七時まで交代で仮眠でいいか?」

「「了解」」

 とりあえず機関の人間を無視しつつ、こちらで話を進め、交代で仮眠をとりながら休む事にした。

 機関の人間? 好きにさせてたよ。

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作者が書いている別作品です。


長いので、気が向いた時に読んでいただければ幸いです。


魔王になったら領地が無人島だった

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