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第19話 人を虐殺5/6

後半少し下品です。

そして後書きに作者談もあります。

 三十分経ち、そろそろドローンのバッテリーが切れそうになるが、敵兵の進軍が止まり、転進しているのが端末越しに見えた。

「転進して街道沿いに戻っているぞ」

 俺が報告をすると、偉そうな奴が安心したようなため息を吐き、ヘイがこちらに来て確認をした。

「あ、本当だ。よかったじゃん」

「一つ尋ねたい。お前達はここからでも、我々の兵の動きがわかるのか?」

「こいつは、空を飛んでいる鳥達と話や視界の共有ができるんだ。だからわかるんだよ」

 無理のある言い訳を速攻で出すなよ。変な目で見られてるじゃないか。


「そうか、そういう魔法もあるんだな。確かに空から見れば敵の動きも丸わかりだ。ハーピー族と交渉し、目にさせても良いかもしれぬな」

 ヘイの雑談が良かったのか、偉い奴は最初の威圧感は全くなく、普通に話してくれている。

「ただ、皇帝陛下は魔族がお嫌いでな。掛け合っても無理だろう」

「便利なのにね。じゃあ、混ざり者も駄目?」

「あぁ、そうだ。未だに街中では差別があるな。貴族にそういう傾向が強い。我々貴族が原因なのだがな……」

「気にしない方がいいよ? 魔族との戦争時代の頃の話でしょう? あんたがやってなければいいんじゃない? それに法を変えられなくても、庇護しないで普通にしてれば、差別されないってなだけで十分普通に暮らせる。ね?」

「俺に振るな。まぁ、そうだな。貶された事もあるが、気にしてない奴が多い。だから普通の人と同じように接すれば貴族としての体面も守れるし、問題もないはずだ。貴族は必ずしも混ざり者を許すなって事はねぇだろ。……馬が十数匹確認できる。仲良しはそろそろ止めて、形だけでもピリピリさせろ。そっちにも体面があるだろう」


「なぁ、二人とも顔を見せてくれないか? 敵同士こんなに仲良くなったんだ、もしかしたら、今後も戦場で顔を合わせる事もあるかもしれない」

「それはできない、そちらに手配書が出回る可能性がある。それに今はこうしているがまだ戦闘中だし、お前達は侵略者だ。雑談をしていただけで、そちらに有益な情報を出す事はないし、次に会ったら殺すか殺されるかだぞ? まぁ、こうしてお互いまともに会話ができてるんだ、敵同士なのに戦場で良識者と会えてよかったと思う。人柄に免じて一つだけ教えておく。俺は混ざり者ってなだけだ。だから鳥と話しができるんだ」

 とりあえず鳥と話しができるって事にしておく。多分変わった武器を持ち、ドクロの覆面を被った奴が出たら気を付けろって言われるんだろうな。


「ご無事ですか!」

 そして偉い奴の取り巻きだと思われる奴が、十数名ほど迎えに来た。

「あぁ、問題はない。それに何もされてはいない。約束通り我々は撤退する。問題はないな?」

「あぁ。とりあえずしばらくはここで待機して、本当に撤退したか監視させてもらうがな」

「そうしてくれ、追ってこられても困るからな。あとはお互い国同士の政治的な駆け引きになると思うが、私は君達と話が出来て良かったと思っている」

「そうだな。戦争も終わっちまえば同じ生きてる者になる。国同士仲が悪くても、個人や商人は仲がいいしな。まぁ、仮想敵国で国が偏見的な教育をさせていなければだけど」

「多分商人が行き来する場合は税金がすごい事になって、貿易や交易は難しくなると思うぞ。戦争ってそんなもんだ」

 偉い奴は笑いながら馬に乗り、アラバスター方面に走って行った。


「クソ疲れた」

「同じく」

 俺達は橋から離れ、馬を待機させていた場所で座り、重い装備を解除して、とりあえずドローンで二時間ほど敵軍の監視をする。

 その間にヘイが火をおこして、熱いお茶を淹れ、砂糖をたっぷりにレモンを入れてゆっくりと飲み、フライパンでベーコンを焼き始めた。焼くくらいは出来ないと俺が困る。

「暖かい食事って何時間ぶりだ?」

「さー。二日以上食べてない気がするよー。そんだけ濃厚すぎる時間だったって事かな?」

「ってかさー。やっぱり個人の強さと、大軍の強さって質が違うよ。一人が強くても、大軍相手には限界がある。今回は撤退が許可されてたけど、一騎当千とか言われてた人ってどう戦ってたんだろうな」

「そりゃー。……雑兵をぶつけてる間に横を通って抜けて、頭を取りに行くとかが普通だろうから、無双できたんでしょ」

「そうか、個人相手だもんな。雑兵ぶつけて回避が妥当か。たまたまこっちは飛び道具で上手く立ち回ったって言うか、最低でも五百メートル開けて交戦してたからどうにかなったけどな」

「そーだねー。もう少し早く展開されてたらどうなってた事やら……。最悪囲まれてるよね」

 その後はしばらくドローンで監視をしていたが、皇帝から預かった兵はさっさと帰り、輜重兵の半分が戦後処理をしていた。


「どんだけ偉いんだよ、この預かった兵ってのは」

「切り札? まぁ信頼できる兵士だから減らしたくない、さっさと帰らせたいってのがあるんでしょ? ってか帰ろう? いい加減ベッドで寝たい」

「一旦町に泊まろうぜ? ってか準備が不要になった事言わないとまずいだろ」

「だね、そこの死体処理だけ見てみたかったけどね」

「大口径でミンチになった肉の処理……じゃなくて遺品集め。多分吐くぞ? ってか川の下流が雑菌とかでやばいだろうな、これ」


「遺品集めに来るまで監視してる? あいつが良い奴でも全員が善人な訳でもないでしょ。特に末端の兵士とか所属が違う輜重兵とか。村が略奪されてるかもよ?」

「いや、町に行こうぜ。後処理は俺達の仕事じゃねぇし、そこまで気にする事でもない。略奪されてたら国の偉い交渉役が何か言うだろ? ってか本音を言うと寝たい。馬でも居眠り運転になるのか?」

「馬は軽車両だったらしいね、今じゃ公道走れないけど(※1)。実は子供が大きな犬に乗っても軽車両って噂も」

「本当かよそれ!? まぁいいや、途中でヘイも起こしちまったし、帰ろうぜ」

 俺は親指で馬を指し、町まで帰ろうとジェスチャーをした。



「偉い奴を呼んでくれ。ってか俺達の事は聞いてるだろ?」

 柵を打ち込み、防衛準備をしている兵士や男性の横を抜け、命令を飛ばしてる奴に声をかける。

「あ、あぁ……。撤退してきたって事は、もうすぐ来るんですね!?」

 命令を飛ばしていた男の表情が一気に絶望に変わった。

 まぁ、そうなるよな。とりあえず安心させないと。

「いや、撤退させた。しばらく監視していたが、本隊だと思われる生き残り約三万が転進したのを確認。今は輜重兵が死体から遺品を回収しているはずだ。すまないが寝かせてもらえないだろうか? 死ぬほど疲れてる」


「申し訳ありません! 大至急上を呼んで参りますので詰め所内でお待ち下さい。それとこの町で最高級の宿に通達を入れます! お前達、一旦休憩を入れさせろ。もしかしたら敵は来ないぞ!」

 そう部下に命令すると、入り口近くの詰め所のドアを開けて大声で簡潔に叫び、馬で町の奥の方に駆けて行った。

「待たせてもらうか……」

「だねぇ……」

「入り口から一番近い宿でいいのにな」

「だねぇ……。まぁ英雄になってるし、諦めようよ」


「部下から大まかに聞きました。詳しくお願いします」

 出されたお茶に手を着けずに、イスにもたれ掛かって寝ていたら多分一番偉い奴だと思われる兵士が個室に入ってきた。

「あ、あぁ、すまん寝てた。大体でいいか?」

 そして俺は今までの事を説明し、落とした橋に白旗を持って偉い奴が来て、程なくしてから撤退していった事を伝えた。

「わかりました、大急ぎで馬を向かわせます。お二人は大変お疲れのようですので、このまま宿の方へ。私が案内します」

「頼む。相方は起きないくらい疲れてるみたいだ」

 俺はヘイを揺すって起こし、馬車に乗せられて宿まで行き、起きるまで部屋に来るなと言って泥のように眠った。



 翌日の早朝、目が覚めるが疲労がたまりすぎて頭がクラクラし、体を起こすのもだるいのでぼーっとしていたら昼近くになっていた。

 半開きのままの目でトイレに行くと、受付のあるロビーで兵士が待っていたので、少しだけ待たせてから話しを聞くことにする。

「あ゛ーなんだい? まだ頭回ってねぇから、ちょっと簡単に頼むわ」

「昼夜馬を走らせ、街道をアラバスター方面へ向かわせましたが敵影なし、報告通り輜重兵が遺品回収をしておりました」

「んー。なら問題ないなー。すまないが寝転がってる。疲れが抜けてない」

「はい、ご安心してお休みください」

 俺は軽く返事をして、受付の男に軽食を部屋に運んでもらうように言い、ベッドに倒れ込んだ。

「特殊部隊になるための試験とか動画で見た事あるけど、マジで奴等化け物だわー。受かったら受かったで、更に厳しい訓練なんだろ? 各国の特殊部隊員には頭が下がるな」

 そしてサンドイッチが部屋に来たので、お礼を言ってヘイの事を聞くが、まだ部屋から出て来ないらしい。

 とりあえずお金がほとんど残ってないので、チップは渡せない事を伝えると英雄からはもらえないと言って出て行った。

「英雄か……」

 そう呟いてモソモソと、サンドイッチをかなり噛んでから飲み込み、暖かいお茶に砂糖が飽和状態になるまで入れてから、レモンを剥いて一房を潰してから飲む。

「もう何味だかわかんねぇな。クソ酸っぱくて甘すぎるレモンティー?」

 食べ終わらせて寝転がると、ヘイからメッセージが届いた。


 件名:裏技発見

 ペットボトルの水を飲んで、持ったまま容器に出してテーブルに置いたら消えた。中身がなくなって手放した状態になってからの判定っぽい!


 知るかよ……。ってかトイレくらい行け。

 俺は再び起きあがり、ヘイの部屋をノックして返事があったので入る。

「そう言う情報いらねぇから!」

「ある意味ゲームじゃできない裏技じゃね? 大発見だよ!」

「トイレくらい行けよ!」

「いやー動きたくないくらいクソだるくてさー。そのうち捨てに行こうと思ってたんだよ」

 ヘイは変なテンションで盛り上がっているが、正直止めて欲しい。なんでそんな愚かな事をしたんだよ。

「まぁいい、お偉いさんの所に行こうぜ。ってかさっき兵士に呼び止められて、確かに撤退しているってよ」

「おー、それは良かった。ならさっさと偉い奴に挨拶して帰ろう」

 俺はそれに同意し、ロビーに行くと先ほどの兵士がまだ待機しており、声をかけると外の馬車に案内され、町の小さめの軍事施設に案内された。

 そして代表としてお礼を言われ、馬を換えてもらいつつ、保存食をもらってから町を出る事にした。

※1 未来の話なので一応。

現在は自転車やリヤカーと同じ軽車両扱いらしいです。


知的な好奇心から一回限界まで我慢して、トイレでペットボトルに出した事がありますが、500mlでは足りませんでした。

人によって膀胱の限界値は様々ですので、ペットボトルにする場合は余裕をもってしましょう。

※緊急時や高速道路で足止めを食らった時に本当に足りるかのテストでやってみました。

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作者が書いている別作品です。


長いので、気が向いた時に読んでいただければ幸いです。


魔王になったら領地が無人島だった

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