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第19話 人を虐殺3/6

 あれから二時間。引き金を引いている時間の方が長かった気がする。

 援軍が来たり囲まれそうになったりもしたが、火力で乗り切った。

 やっぱりそろそろ引き上げようって時に、ちょっと良い服を着た奴が足下に転がって唸っていたので、縛ってから二人で持ち上げ、飯を食っていた場所まで戻った。


「気分はどうだ? 喋れるか?」

 俺は自動拳銃についているライトで、さらってきた奴を照らして尋問らしい事を始める。

「貴様等、何者だ?」

「喋れるな。いいからこっちの質問にだけ答えろ」

「ふざけるな! こんな事をしてただで、がぁっ!」

 俺は無言で膝を撃ち抜き、男に体でわからせる事にした。


「進軍している人数を教えろ」

 男は痛みを我慢せずに大声で叫んだので、今度は肩を撃ち抜き、散々わめき散らした後に頭を撃って黙らせ、謎の注射を使って生き返らせた。

「あー。ふざけ半分で味方にそれやってるのいたねぇ。こっちじゃ倫理的にヤバイんじゃないのそれ? まぁ、こんな世界じゃルールなんかなさそうだけどね」

 自分の体が、なんで痛みを感じてないのか不思議に思っているのか、男がキョトンとしている。

「まぁ、仕方ない。これが一番早い気がする。拷問の方法なんかしらねぇし。もう一度聞くぞ? 俺が聞いた事だけに答えろ。余計な事は喋らなくていい」

 俺は冷たい声で言い、もう一度尋問を開始した。



 朝日が上り始め、辺りが明るくなった頃には俺達は装備を昼用に戻し、馬に乗って少しだけ後退をした。

 手に入れた情報では人数は約八万。あそこにいたのは先行部隊の尖兵で、遭遇戦があった場合には、後方にいる本隊に連絡が行く事になっていて、既に馬を走らせているだろうとの事だった。距離は本隊と半日ほど離れているらしい。


「戦車か戦闘機が欲しい」

「空爆っていうか、対地専用攻撃機で一掃したい。八万ってなによ……。どっかの市町村合併した市とかの人口並じゃん。二人じゃどうにかならないね。全て倒せないわー。あんな事言っちゃったよ」

 馬から下り、火を起こして朝食を作りながら二人で愚痴る。


「今までで大体一万は殺しただろ。半数は輜重兵(しちょうへい)とかの後方支援だ。戦闘できるのは残り三万。しかもその内の三割が死ねば、組織的抵抗が出来ないから事実上の全滅だ。後一万殺れば五割だぞ? それに二人で一万殺してれば両国で噂になる。最悪大陸に尾鰭(おひれ)が付いて広がるぞ」

「それはそれでおもしろそうだけど、先行部隊に輜重兵が多かったら?」

「先行部隊なのにそんなにいるかよ。いいとこ直前の村で、全員分の次の町までの食料を本隊の後ろの輜重兵から受け取ってるよ。だから今まで相手にしてたのは全員戦闘ができる兵士だ」


「なら輜重兵は千人くらい? んー。本隊があの死体の山を見て迂回しなければいいんだけど。とりあえずこれ食べたら交代で睡眠かな。半日は離れてるだろうし」

「だな。二人だと戦略もクソもないからな。出たとこ勝負だし。ドローンで確認して、緩やかな丘でまた戦闘になる可能さえもあるぞ? 敵の進軍速度的にこっちがまた進軍してもいい。で、どっちが先に寝る?」

「霧が少しあるから、俺が先に寝ていいかな?」

「あぁ、言われてみればちょっとだけ視界が悪いな。良いぞ」

 俺はヘイに先に睡眠を譲り、警戒をする事にした。



 二人とも睡眠を済ませ、遅い昼食を取ってると小さな爆発音が聞こえた。

「お、ブービートラップ」

「だな、さっきの奴の死体を調べたらしいな。それと行動が思ったより早い」

 とりあえず簡易警報ということで、ピンを抜いたフラググレネードを死体の下に置いておき、死体を動かしたら安全装置のレバーがとれて爆破って仕組みだ。あと三分もすれば、俺の手持ちが一個回復するだろう。


「お、馬を数頭確認。多分偵察だね」

「んじゃ俺が弾を犠牲にして、ドローンで偵察か」

 端末で装備を変更し、ドローンを組み立てて上空に飛ばすが、中途半端な高度で馬が確認出来た。さらに高度を上げると死体の山が見えてから敵の本隊も土煙に混ざって見える。


「死体の山から二キロから三キロ奥側って所かな? 規模も確かに昨日戦ったのよりは多いね。ってか土煙凄いなー」

「昨日より多いってレベルじゃねぇな。ワーテルローを題材にした映画でしか見た事ねぇよ。俺もG28に変えるぞ。交戦距離も把握できたし」

「お、撃ちまくっちゃう?」

「7.62ミリでも一キロメートルはちょっとつらいだろうけど5.56ミリよりはマシだ。まぁ撃てば誰かしらには当たるだろ。背中にジャべリンもあるし、重すぎると馬が可哀想だ」

「その装備でも十分可哀想だよ。ってかもう非対称戦争だから。何でもやった方が良いよ」

「何でもねぇ……。本当戦車欲しい……」

 そう愚痴りつつ、G28とジャベリンを装備して、ヘイと一緒に動くことにする。


「うわぁ。騎兵だけで一万はいそうだなぁー」

 ヘイがもの凄くテンションの下がった声で愚痴を漏らしている。それもそうだ、この間より少し低い丘に上ったら、地面が半分くらいしか見えてない。しかも隊列を組んで、四角いのや長方形のがあちこちにいる。

「映画そのまんまだな」

「だねぇ……。どうする? 撃ち逃げ?」

「だな、狙撃とか言ってられねぇよ。弾数的に装備戻すわ」

「僕もAKとジャベリン持つわ……。爆発物でどうにかしないと囲まれる。減らせるだけ減らそう」

 ヘイが素に戻っている。多分焦っているんだろうな。俺もだけど。


「だな。まさかこんなんだとは……」

 二人で装備を戻し、時間が来たら先制攻撃って事で、とりあえずどんどんジャベリンをぶちかまし。近づかれたら五百メートルまで敵を撃ちながら引きつけて逃げるを繰り返す。

 途中で騎兵に追われる事になるが、左手で手綱を持って、スタングレネードを投げたり、振り向きながら銃を撃つ事になるとは思わなかった。

 ってか振り切れない。槍持った騎兵に囲まれる。


「先に行け! 馬は頼む!」

 俺はそう叫び、端末をいじりながら強化アーマーと自動小銃のG3に、筒形のドットサイトに銃剣を付けた物、いつもの自動拳銃を選択し、装備が変わった瞬間に馬から飛び降りる。

 俺は囮になり一分間は槍で突かれながら殴りや蹴りで対応し、銃が撃てるようになったら、真っ先にヘイを追っていった馬を狙って、撃ってヘイを逃がす。


『振り払えたら援護を頼む。アーマーへのダメージは報告する』

『すまない』

 ヘイの返事を聞きながらマガジンを交換し、銃剣を脇腹に刺してセミオートにして撃ちつつ反動を利用して引き抜く。

 俺から離れたら、一発だけ人の胴体に向かって撃てばいいし、気は乗らないが邪魔なら馬を撃つか刺せばいい。

「一人相手に何を手こずっている。さっさと殺して逃げた奴を追え!」


 俺は指揮していた奴にサイトの赤い点をあわせて引き金を引いて黙らせ、次からは目に付いた近い奴からどんどん撃ち殺していく。

 そしてスタングレネードを投げながらヘイの去っていった方に向かい、馬がいない事を確認する。逃げ切れたらしい。

 正直いうなら、炭坑だか鉱山を爆破したこの格好で、アラバスターと戦闘は避けたかったがどうしようもない。

 そしてある程度走ったら振り向き、落ち着いて引き金を引いていく。弾が回復する一秒に一発を心がけ、どうしようもない場合は自動拳銃を抜いて、馬と人に数発撃ち込むのを繰り返す。


『アーマー強度残り96パーセント。誤射さえなければこのまま行ける』

『了解。引き離しに成功。馬上より八時方面からの援護射撃に入る』

『了解。後退時八時方面には注意を払う』

 そして騎兵約六十騎と対峙し、無言で引き金を引いて撃ち殺していたら、敵がどんどん増え始め、面倒くさいと思い始めた頃、どんどん馬から兵士が血を流して落ちてるので、援護射撃は問題ないようだ。ってか馬上から頭とか胴体をねらうのかよ。恐ろしいな。


 けど胴体への銃撃は即死ではないので、有効射程ギリギリくらいからの射撃だろう。とりあえずとどめを刺している暇はないので、後退しながら銃を撃ち、敵の数を減らす事にする。

『ジャベリンを撃ち込んだ、巻き込まれたら言って』

『了――』

 そう言った瞬間に少し離れた所で爆発が起き、馬や人間、俺も吹き飛んだ。報告が遅すぎだ。



「クソ疲れた……」

「騎兵は怖いね。この時代は速いってなだけでステータスだわー。移動速度がいかに重要か考えさせられたよ」

 あれから撃ったり刺したり、吹き飛ばされたりしながらどうにか騎兵を撤退させたが、まだ夕方にすらなってない。

 装備を変えて塩と砂糖を口に放り込み、水で一気に流し込み、カロリーバーをとりあえずかじっておく。


「はぁー、一息ついた」

 ヘイにも未開封のペットボトルを渡し、装備欄に何か使える物がないかを確認するが、やっぱりランチャー系が回復したら、ぶち込むのが一番早いってことになった。


「三千くらい殺したか? けどまだ歩兵は丸々残ってて、騎兵は半分以上残ってるぞ……」

「あ、煙だ」

 愚痴をこぼしたら、ヘイが遠くに立ち上る煙を発見し、俺もそっちの方を見ると、どんどん煙の数が増えている。

「燃やせる物ってあったっけ? 死体処理?」

「いや、死体は土葬だった。家とかもないしな。……早めの飯じゃないのか?」

 俺はドローンに装備を変更し、敵陣方面に飛ばしてみる事にした。


 ドローンを地上百メートルの高さで、煙の方に向かって飛ばしてカメラを最大までズームすると、三脚に鎖を垂らして鍋を吊っていた。

「こりゃ速めの夕食だ……。距離にして直線距離で約三キロ、けど進軍してる歩兵あり。交代で食ってる感じだな。多分一定距離で後退してる事は知られてるから、騎兵で見つけてそっち方面に向かう。いなければ進軍すればいいだけってなってるな。けどやっぱり数が違いすぎる」


「町に寄った時に、兵士に言ってるし手紙も見せてる。防衛の準備してると思うからそこまで下がる?」

「まだ早いだろう。最低でも後三日は稼ぎたい」

「ルチルの兵士が町に到着する予定は?」

「進軍速度的に、国境線まで三十日かかった、多分早くてもあと十日くらいはかかる」

 ヘイがため息を付いたので、俺もため息を漏らす。


「騎兵さえいなければ……」

「もう橋まで撤退して、逃げたと思わせて橋で叩こう。やばくなったら橋を落とす。もうどうにもならないよ、一直線に綺麗に並んでるところを大口径で殺るしかない」

「だなぁ。橋から町までは馬で半日。足止めして橋を落として兵站を一旦切って、濡れないように保存食の移動だけでも二時間以上は稼げる。そこで嫌がらせを続ければ、進軍にも限界が出てくる」

「どうにもならないのに悩んでる必要はないよ。元々僕達がいなかったら町まで襲われてるんだ。多少は許してくれるさ」

 ヘイは疲れた笑顔で言い、親指で橋の方を指した。

「だな、仕方ないな。その時にまた考えよう」

 そう言いつつ俺達は撤退準備を始め、馬に乗って橋まで撤退した。



「ここで大口径を使って人を薙払うか?」

「……そうだね、俺は橋の奥にクレイモアをできるだけ仕掛ける」

「なら俺は橋にC4だな。迂回されそうなら、高度な柔軟性を維持しながら臨機応変に。そんな感じで」

 橋の下を見ると水面まで五メートル川底まで大体一メートル。大体腰くらいだな。土手は結構急勾配だからよじ上るしかない。

「なんか格好良く言ってるけど、作戦はなし。お互いの判断でなんとかやろう。だよね、あの台詞」

「だよな」

 話しをしつつ橋から少し下がった所に馬を待避させて、装備を携帯型重機関銃のウォールブレイカーと、自動小銃のG36kセットを装備する。


「五十発全部撃って、リロード中の援護は任せる」

「なら僕もそれを使う。数に任せての大口径の狙撃は嫌いだけど、もうそんな事言ってられない」

 ヘイもウォールブレイカーにAKを装備している。

「んじゃ爆発物でも設置しに行ってから飯と睡眠だ」

「寝不足はお肌の大敵だからね」

「そうだな。疲れすぎてると判断力が鈍るからな」

 二人で笑いながら橋の方まで移動して、爆発物を仕掛けてから馬の場所まで戻ってウォールブレイカーの杭を地面に刺し、俺達は早めに夕食を食べる事にした。



 翌日、交代で睡眠をとりながら双眼鏡やスコープで見張りをしていたが、朝まで敵がこなかった。

「どの程度橋を渡らせる? 人数? 距離?」

「渡ってから展開されても困るし要相談。どうせお互い隣だし」

「了解。んじゃお互い早めの昼飯だ」

 橋の向こう側で立ち上る煙を眺め、昼ぐらいには戦闘になる事を覚悟した。


「さて、進軍の土煙が見えるんだけど……。あの煙は馬だろうねぇ」

「馬だろうなぁ……」

 お互いかなり休めたのでのんびりとした声で言い、俺は寝転がり、ヘイはあぐらをかいている。

「綺麗に街道に並んでるねぇ。いーち、にー、さーん、よーん――」

 ヘイがのんびりと数えてる時にいきなり銃をぶっ放し、数十人が吹っ飛んだ。要相談とか言ったけど、橋で食い止めるから各自の判断ってなっていた。ただの相談以下な話し合いだった。

「撃つなら撃つって言ってくれ。いきなりはびっくりする」

「五十発、仕留められると思った人数を吹き飛ばしただけだよ。かばーみーあいむりろーでぃんぐ」

「気の抜けるリロードだな」

 俺も適当に指切りで銃を撃ちつつ、橋を渡らせないように対岸に縫いつける。

「変に気張るよりはいいと思うよ」

「多少の緊張感はあった方がいいと思うぞ。リロード!」


 そしてある程度撃ち、後ろの歩兵が橋手前で詰まった時に、ヘイが黄色いリモコンを握りクレイモアを爆破させ、爆破した側の隊列の半分近くが倒れた。もう一度握ると、後列の中央くらいしか立ってる兵士はいなかった。

 橋の手前と上には馬と人の死体だらけになり、いい感じで足止めができている。

 そしてその部隊の隊長らしき男が、太鼓を持った男を鼓舞し、自ら先頭に立ち大量の兵士を引き連れて渡ってきたが、ヘイが指切りで五発ずつ撃ち、橋を渡る者をなぎ倒していった。


「橋に大砲とかガトリングを設置して、いい感じで遅延戦闘していた例があるけど、結構バカにできないね」

「だな。橋がもう少し長ければ最高だった。川幅も水深も」

 橋はせいぜい三十メートル前後。五十メートルくらいあれば、もっといい感じで薙払う事が出来たのにな。

「んじゃいい感じで橋で詰まってるから、橋の奥の方にグレネードランチャーぶち込むわ」

 俺は自動小銃を構え、橋の裏の方を狙ってポンッという間抜けな音を出して兵士を数名吹き飛ばし、自動小銃のフルオートで橋の方に向かって撃つと、十数名が倒れ川に落ちていった。


「橋の横に広がって渡河しようとしてるのは、どんどんやっちゃおうか」

 俺はその言葉に返事をして、マガジンを交換してどんどん薙払い、対岸で待機してる奴を減らしていく。

 そして橋を渡ろうとしてる奴が来たら、大口径の銃で挽き肉にする。それの繰り返しで夕方まで粘った。


「お、引き上げていく。無理だと思ったか?」

「だねぇ。ここで遅延戦闘に徹すれば良さそう。問題は食事だけどね」

「まだC4で橋を落としてない、そっちが夜間用に装備を変えてくれ、あと水だ。さすがに喉が渇いた」

「了解。火は場所がばれるから起こせないけど、夜中は俺が見張るから寝てくれ、朝になったら僕が寝る」

「了解。保存食を食って寝るから、何かあったら起こしてくれ。多少の銃声じゃ起きねぇぞ」

「はいはい、なら俺も昼まで起きないよ」

 そういいつつヘイは全身黒装備に、ナイトビジョンゴーグルを装備して、水を渡してきた。

 俺はそれを受け取り保存食を食べて、レモンの皮をむいて半分ほど食べ、残りをヘイに渡して寝る事にした。

緩い武器説明


G3 バトルライフルで銃としては結構長い。全長が1m程度ありますので、銃剣を付けたらショートスピアになると思い使用しました。

※エアガンのG3にサプレッサーを付けていますが、立たせると作者の肘くらいまであります。正直長すぎて邪魔でした。

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作者が書いている別作品です。


長いので、気が向いた時に読んでいただければ幸いです。


魔王になったら領地が無人島だった

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