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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第九章 恋する魔法使い 恋情編

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第八十話 おかえり

 パルドシ港。

 ゼーレ王国再建の中心部となっていた場所だ。

 5年が経ち人の数も少しだけ減ったように見える。


 それはなぜか?


 パルドシ港へと帰ってきたフラメナとルルス。

 ライメやエルトレ、ラテラは初めてくる場所だ。

 

「なんだか静かね」

「そうですね〜」


 フラメナがそう感じて言うと、

 ルルスもそれに同意した。


 船から降りて辺りを見渡しているフラメナたち、

 少しして歩き出し、街中へと入っていくと、

 通行人が彼女らへと視線を向けてくる。


「私たちってそんな有名なの?」


 フラメナがそう言うと、ライメが答える。


「あんだけ目立てば有名にもなるよ」

「フラメナの知り合いとかはいないの?」


 エルトレがそう言うとフラメナは振り返って話す。


「いるはずよ。だから今から私の知り合いがいる建物に向かうわ!」


 フラメナがそう言う。

 どうやら向かっているところはそこだったそうだ。



 そうしてしばらく歩き、フラメナは自身の姉であるフリラメ・カルレット・エイトールがいる宿を訪問する。


「いらっしゃ……うぉおおあ!?

 フラメナお嬢様じゃないですかぁ!いつおかえりになさったのですか!?」


 受付の男が驚き、そう問いかけてくる。


「さっき帰ってきたばっかよ!

 それよりお姉様がどこにいるか知ってるかしら?」


 受付の者はそう聞かれると、

 フリラメが現在どこにいるのか教えてくれた。


「フリラメ様は王都の方にいらっしゃいますよ」


 その言葉にフラメナが驚いた。


「王都完成してるの!?」

「城はまだですが……もう街並みも出来上がり、

 基本的な施設は揃っています」


 本来王都なんて作ろうと思えば10年はかかる。

 2年ほどで完成してしまったのは城を作らなかったからだろう。


「じゃあ王都にみんないるのね!」

「パルドシ港の大半の者が王都に移住しております。

 せっかくですし、こちらで馬車を手配いたしましょうか?」

「本当!?頼むわ!」


 フリラメやクランツ、他の皆もどうやら完成した王都にいるらしい。

 そうとなれば早速王都に向かおう。


 宿側が手配してくれた馬車にフラメナたちは乗り、

 王都へと向けて馬車が走り始めた。


 移動の最中、エルトレやラテラは南大陸の光景に驚いていた。


「南大陸って5年前に滅亡したんだよね……」

「それにしては……道も出来てるし、

 案外栄えてますね……」


 二人の感想には多くの人が共感出来るだろう。

 本来滅亡してここまで栄えることなど不可能だ。


 領土戦争で実質的に滅んだ王国が再建するまでにかかる年数は30年以上。

 建物が再び建てられたとて、失った人は帰ってこない。再建には人の集まりが重要なのだ。


 だが南大陸はパルドシ港や王都へと向かう道にも、

 人の姿が見られ、滅んだとは思えない印象だった。


「まぁ私のお姉様が頑張ったのよ。

 正直あんま何してたかは理解してないけど……」

「フラメナは本当に難しいことは苦手だね……」


 そう言うフラメナにライメがやれやれと言った感じで言葉を返し、ライメはフラメナに腕をつねられていた。


「楽しみですね〜。

 まさに新生活って雰囲気です〜」


 ニコニコしてそう言うルルス。


 新生活。

 王都に着けば皆、新生活が始まる。


 期待に胸が高鳴るのはルルスだけじゃないだろう。



 そんな会話をしているうちに、馬車は日を跨いで朝まで走り続け、ついに王都へと到着する。



 虹剣1688年9月8日。

 約2年間のフラメナの旅は終わりを迎えた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……やっぱりお城がないと迫力に欠けるわね」


 城がない王都は異様な光景である。

 様々な形の建物が建ち並び、道は綺麗に舗装され、

 人々は幸せそうに暮らしていた。


 フラメナたちはそんな街中を歩き、

 目的地もなくただ歩き続ける。


「フラメナの知り合いってどこにいるの?」


 エルトレがそう言うと、フラメナは立ち止まってゆっくり振り返り話す。


「……どこかしら?」

「知らないんだ……」


 となれば仕方がない。

 街の人に話を聞き、情報を得よう。


 だがその必要はない。

 立ち止まったフラメナたち、ライメがフラメナの肩を揺する。


「フラメナ……視線が強くない?」

「えぇ?」


 ライメがそう言えば確かに視線が集まっている。

 何か変なことでもしただろうか?


 そんなわけがない。

 考えられる理由、それはフラメナだ。


「あっ、あの……」


 フラメナたちに、少し緊張した様子で近づいてきたその者に、フラメナが返事する。


「なにかしら……?」

「フラメナお嬢様でしょうか……?」

「そ、そうよ」


 そう言うと、名を聞いてきたその者は少し下がって振り返り、大きく息を吸う。


「フラメナお嬢様が帰ってきたぁあっーー!!!」


 突如発せられる大声、フラメナたちが少し驚くと、

 声が街中に響いた後に、多くの歓声が辺りから湧き上がって皆が迫ってくる。


「ちょっ!ちょっと!!」


 一瞬で大衆に囲まれてしまったフラメナたち。

 フラメナが声を上げようとするとーー


「エェエエイ!!お嬢様が困っていますぞ!!」


 たくましく渋い声が辺りに響き渡った。


 まったく聞いたことのない声だ。

 フラメナたち含め、大衆が困惑していると、

 人混みが開けていき声の正体が現れる。


「……今の南大陸は奇抜な人がいるんだね」

「……前はいなかったんですけどね〜」


 その男は高身長の筋肉モリモリの男だった。

 少し歳を取っているのか老けた印象も受けるが、

 なんと言うか……男らしさpに女性らしさが加わっている。


「すごいかわいいファッションね!!」


 大きなリボンを胸につける彼に対し、フラメナがそう言うとその者は深く感動して涙を流した。


「お嬢様、フラメナお嬢様ァア!!

 初対面ですがお話の通りでございましたァ!」


 そう言って涙を流しながら近づいてくるその男。


「……失礼。あてくしはガルドン・ランドムザと言う者でございます。そして、フリラメお嬢様に仕える執事でもございます」


 ガルドン・ランドムザ。

 歳は三十四歳ほどの帥級剣士であり帥級魔法使い。

 非常に珍しい両刀タイプだ。


 髪色はピンクであり、ガチガチのオールバックに少し激しめなメイクが印象的、服は紳士服ではあるが、胸につけられた大きなリボンが特徴的だ。


「ちょっと……情報が多すぎるよ……」


 ライメがそう言うと、ラテラは少し苦笑いしながらガルドンを見上げていた。



「フラメナお嬢様、それとその他のお仲間様方、

 路頭に迷うことなどありません。

 このガルドンが現ゼーレ王国、国王のフリラメ様の下へと案内致します」


 滅茶苦茶な見た目だがしっかりした人だ。

 フラメナたちの困っている様子を察して、なにをしたら良いか勝手に把握してくれた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ガルドンに連れられて来られたのは、

 周りとは少し雰囲気の違う大きな建物。

 看板には研究所と書かれている。


「中にフリラメ様がいらっしゃいます」


「フラメナが一人で行って来なよ。

 僕たちは後でで良いからさ」

「……わかった。パパッと再会してくるわ!」


 ライメがフラメナが一人で先に再会することを提案すると、他の三人も頷きフラメナは提案を呑み込む。


 フラメナは息を整え、一歩ずつ前に足を出して歩き、研究所のドアノブに手をかけて捻る。


 そしてそのままゆっくりと扉を開けた。



「ガルドン?ノックを忘れるなんて珍しいですね」


 あぁ、知っている。

 この声が懐かしくてしょうがない。


「ガルドン様も疲れることはありますよ」


 ……っ私だよ。帰って来たの。

 早く、早く顔を見せたい。


 フラメナの息が荒くなり、扉を開けて走り出し、

 曲がり角を曲がると良く知った二人の姿があった。


「……え?」


 作業の手が止まりこちらを見る二人。


 フリラメ・カルレット・エイトール、

 クランツ・ヘクアメール。


 二人はフラメナを見て動きが止まった。


「……っ!ただいま!!私帰って来たわ!!」


 フラメナの大きな声、それによって止まった時が動き出したかの如く二人は動き出し、なりふり構わずフリラメがフラメナへと抱きついた。


「フラメナっ!!おかえり……

 ちゃんと帰って来たのね……!!」

「ただいま……そうよ……ちゃんと帰って来たわ!」


 フリラメは強くフラメナを抱きしめると、

 フラメナはフリラメの肩の先に見えるクランツの顔に驚いた。


「フラメナ様……ご立派になって……

 おかえりなさいませ……」


 クランツは泣いていた。

 初めて見た。クランツが泣いていたのだ。


 フラメナはそれを見て、必死に成長した自分を見せたいがために抑えていた感情が爆発し、瞳から大粒に涙を溢してフリラメを抱きしめ返す。



 ただいま。おかえり。


 実感が湧いてきた。帰ってきたんだ南大陸に……

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