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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第八章 純白魔法使い 北峰大陸編

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第七十九話 ただいま

 虹剣1688年6月30日。

 フラメナたちはスロアト港へと到着した。

 寒いが、内陸部ほどではない。


 フラメナは流氷が少し溶けた海を眺めながら、

 五人へと向けて話し始める。


「みんなはどうするの?」


 旅はもう終わりを迎える。

 それぞれしたいこともあるはずだ。


 各々の道は決めておくべきだろう。



「あたしとライメは前言った通りだよ。

 南大陸についていく」


 エルトレがそう言うとライメも頷き、

 二人は南大陸へ向かうそうだ。


「僕も南大陸かな……」

「俺は……一回師匠の下に帰るぞ。

 でもそのうち南大陸に行くと思う」


 ライメは南大陸に直行、

 リクスは一度ハルドラ村に帰るそうだ。


「その背中の人どうする……?」


 フラメナがそう言えばリクスは、自分が背負っている意識のない女性を見ながら、フラメナに言った。


「ハルドラ村に連れていくぞ。

 どうせあそこなら空き部屋は多いしな」


 ズバッとそう言うリクス。

 フラメナは相変わらずだなと思い、頷く。


 そしてルルスの今後。


「自分はもちろんフラメナさんについていきます〜」


 まあ当たり前と言った内容だ。



「これで全員道は決まったわね!

 明後日船が来るからそれに乗って帰るわよ!」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 (エルトレ視点)


 旅が終わりを迎える。

 あたし的には楽しかったと言える旅だった。


 東勢大陸でフラメナと出会って、白い魔法の珍しさに虜になったあたし、でもいつの間にか魔法よりもフラメナの人柄に惹かれていたと思う。


 話していて正直楽しい。

 フラメナはいつもあたしより口数が多くて、

 話題が尽きないけど、あたしの話を遮ることは一度もなかった。


 いつだって合わせてくれる。

 フラメナと一緒に前線で戦う時も楽しかった。

 一切ストレスを感じなかったし……


 まあ、あたしが一方的に思ってるかもだけど、

 親友って呼びたいくらいには信頼してる。


 あたしのこともだし、ラテラのことも気にかけてくれる。感謝しても感謝しきれないよ。


 フラメナはやっぱり王族なんだなって思う。


 カリスマ性が溢れてるってよりは、ふとした時に気付かされる感じ……本当に不思議な人。


 ……旅が終わってあたしはどうするんだろう。

 やることは決まってるけど……

 ラテラ……ラテラはどう思ってるんだろう。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 (ラテラ視点)


 僕の夢は叶った。

 まさかこの体で旅に出られるとは思わなかった。


 旅自体は多分いつかできたけど、お姉ちゃん以外にも人がいる状態で旅ができるなんて……


 フラメナさんには感謝してる。

 正直言ってフラメナさんは僕の恩人だ。


 未だに2年前のあの胸の高鳴りを覚えている。


 元々病弱だった僕は旅でも体調を崩すかと思っていた。でも不思議と何故か体調は良好だった。

 理由はわからない。気分的によるものなのかな?


 まあ深く考えてもわからないなら諦めるのが良い。


 僕はこの2年で人生を楽しみ尽くすようにした。

 体が動くうちに楽しんでおきたいんだ。


 僕はあと何年かすれば死ぬ。


 ……覚悟はしてる。

 でも、やっぱり死ってのは怖い。

 戦いの中で死ぬと思ったことは何回かある。

 けど、これに関しては確実な死。


 逃れられない運命、うんざりする。


 だから少しだけ、僕は旅の終わりを悲しんでる。

 本当はもっと生きたいし、もっと世界を見たい。


 でもそれを僕の体が許さないと言うなら仕方がない話なのだ。


 お父さんとお母さんに会うのは僕が先になりそう。

 お姉ちゃんは長生きしてほしいな。

 いっぱい苦労したんだから……

 少しくらい幸せに長く生きてほしい。


 僕は残りの人生も短く濃く楽しむ。

 僕はそう言う運命なのだから。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 (リクス視点)


 案外早く終わるんだな。

 もっと旅は長いかと思ってた。


 ……でもこの2年は人生で一番濃かったと思う。


 数々の邪族に強敵、決して楽とは言えず、

 苦難ばかりの道のりだった。


 でもそんな中で誰かが弱音を吐くことはなかった。


 楽しかったんだ。


 俺もこの2年は楽しかった。

 戦闘じゃあんまり活躍できた覚えもないが、

 フラメナは俺を高く評価してくれてる。


 あんまり自分ではそう思わない。

 そう言う思いを伝えるとよく軽く叩かれた。


 俺はこの旅で何を学んだんだろう?

 ……魔法使いとしては強くなった。

 ……あぁ、多分これだろう。


 誰かと一緒に何かを乗り越える。


 一回目の旅じゃ俺はただの役立たず、

 守られる側の存在として旅をしていた。


 でもこうやって時が経ってまたフラメナと旅をして、俺は守られる側としてではなく、共に戦い困難を乗り越える仲間として存在できた。


 いい気分だ。

 また旅をするならこのメンバーがいい。

 ……旅が終わる。


 終わってほしくないと思っている自分がいる。

 ……本当に楽しかったな。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 (ルルス視点)


 2年ほど旅をしていましたが、

 最後はフラメナさんたちに助けられましたね〜。


 長かったようで短い、楽しいかと聞かれると別に楽しさはありませんでした。


 でも旅は嫌いじゃありませんし、この旅が嫌だったかと言われると、それは違う。


 自分は母さんを探し、手掛かりを見つけ、

 迷宮に入って閉じ込められた。


 いい経験だったと思うことにしてます。

 あの1年のおかげで自分は強くなれた。


 死ぬこと自体、自分はあまり恐怖を感じません。


 今までがむしゃらに生きてきて、

 命が惜しいと思ったこともないです。


 剣士として……今の自分は大きな力を有している。

 特に守りたいものもなければ、目指すこともない。


 これから先どうするかはまだ未定、

 でも……そのうち見つかるでしょう。


 だって自分はこうして生きているんですから。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 (ライメ視点)


 僕は旅が好きだ。

 仲間と苦を共にし、何気ない会話で笑い合う。

 そんな旅が大好きだ。


 僕は記憶を失い、フラメナが中央大陸に来るまで、

 トヘキと言う名で生きた。


 その時の記憶は鮮明に覚えているし、

 決してつまらないとは言えない日々だった。


 でも、何かが足りなかった。

 幸福はいつまでも溢れるまで満ちることなく、

 ただ心に何か穴が空いたような感じがしていた。


 あの時はわからなかったけど、今ならわかる。


 やっぱり僕は過去を捨てることなんてできない。

 フラメナやユルダスと過ごした時間を僕は全て忘れてしまうことができなかった。


 フラメナは僕の記憶を呼び戻してくれた。


 辛かったはずだ。死んだと思った旧友に再会し、

 まさか覚えていないなんて言われるなんて……


 僕は酷いことをした。

 多分……フラメナはこんなこと覚えてない。


 でも僕はまだ少しだけ申し訳ないと思ってる。


 フラメナは一人で抱え込むタイプ。

 だからいっつも自分に負担ばかりかけてる。


 旅が終わったら……少しだけでもいいから、

 僕はフラメナを支えてみたい。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 (フラメナ視点)


 旅が終わるわ。


 長かった。すっごく長かった。

 この2年で明らかに私は強くなった。

 それに、私が誰かを守る側にもなれた。


 この旅をしてつくづく思うことがある。


 クランツにはまだ追いつけない。


 クランツは昔の旅で一度も弱音も吐かなかったし、

 全て背負って解決していた。


 超人的とも言えるし……少しだけ怖いとも思える。

 私はクランツのようにはなれない。

 誰かに助けてもらうことも多いし……


 でも、私はクランツになるつもりはない。


 私は私、クランツだってできないことくらいある。

 私はそれができる人になればいい。



 この旅でたくさんの仲間と出会えた。


 エルトレは妹みたいな……

 いや、それよりは同い年の親友って感じがする。

 あんまり年下に感じないのはなんでかしら?


 ラテラはみんなの弟みたい。

 なんだかほっとけないのよね。

 エルトレが少し過保護なのも納得できるわ。


 リクスは昔から相変わらずマイペース、

 でも、そんなリクスだからこそ私にない考えを言ってくれたりする。頼れる仲間だわ。


 ルルスは久しぶりにあったけど、相変わらずだったわ。迷宮でルルスの本心を聞けてよかった。

 ルルスは私が思っている以上に強くはない。


 剣術だとかそう言うことじゃない。

 精神的にはそう他の人とは変わらない。


 ルルスだって落ち込むし、悲しんだりする。

 それを隠してたのがあの笑顔、でももうルルスは隠すことはないとは思う。


 だって今のルルスの笑顔はいつだって心の底から楽しんでそうなものだから。



 ……そしてライメ。

 私がこの旅で一番嬉しかったのは、

 ライメとユルダスが生きていたこと。


 私は正直……ライメが好き。


 ライメのことを友達としてとかじゃなくて、

 恋愛的……?に好きなの。


 別に最初から恋してたわけじゃない。

 なんだかわからないけど好きになっていった。

 ライメとは昔から仲がいいし、この気持ちを話していいのかもわからない。


 どう思われるんだろう?

 ライメはどう思っているんだろう?


 私はまだ勇気が出ない。

 だから帰ったらライメのことをもっと知りたい。

 

 少し前からずっと胸の奥がむず痒い。

 ……どうしてこんなにも胸騒ぎがするのかしら。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 フラメナたちは三ヶ月かけて南大陸へと向かった。


 西黎大陸は山脈を越えて大幅短縮。

 中央大陸では追われることもなく、むしろ周りの視線は君級を見かけたという好奇の目。


 それと中央大陸でお世話になった人に挨拶した。

 枯星(こせい)のユマバナ、ライメのお世話になった人で挨拶しに行けばすごく嬉しそうに出迎えてくれた。

 もう一人お世話になった人がいる。

 天戒(てんかい)のレスト、ユマバナに聞けば彼は中央大陸を離れ、西黎大陸にいるのだと言う。


 会えなかったのは残念だ。

 

 そんなこんなで中央大陸を離れ、東勢大陸。


 ここでリクスとはお別れだ。

 凍獄(とうごく)のエクワナ、彼女とも再会できて成長したフラメナをとても褒めていた。


 そしてこの旅の終わりを告げる最後の港へと到着。

 ウラトニ港、フラメナたちはここであるレストランへと寄った。


「ははっいらっしゃい。常連さん」


 相変わらずの顔で挨拶してくる店主のダスラト・バルテニア。


「久しぶりね!水はいつも通りよ!」

「あいよ」


 昔と変わらない返事、

 だが少し店主の声には活力が満ちている。


 食事を終え、日を越し、船が来ればそれに乗る。


 旅はついに終わる。



 短い間の航海を終え、

 フラメナたちはついに、″南大陸へと帰ってきた″

第八章 純白魔法使い 北峰大陸編 ー完ー


次章

第九章 恋する魔法使い 恋情編

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