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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第六章 純白魔法使い 砂塵編

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 間話 鐘・凍・笑

 虹剣1688年4月12日。

 南大陸。

 この大陸はおよそ4年ほど前に滅亡している。

 だがそれでもその大陸を復興させようと、日々必死に働き頭を悩ませる者たちがいた。


 ゼーレ王国再建。

 それがこの者達の目標。


 クランツ・ヘクアメールは今年で三十七歳を迎え、

 平均寿命であれば人生も中盤の終わりだ。


 人族の命は短い。

 大体が五十歳ほどでその生を終える。


 老衰というよりは大体が病で亡くなる。


 そんな人生の終わりが迫りつつあるクランツは、

 今日も今日とて研究所にて、フラメナの姉でありこの復興しつつあるゼーレ王国の女王、フリラメと共に南大陸が滅亡した原因を研究するのであった。


「クランツ、少し休憩しましょうか」


 フリラメ・カルレット・エイトール。


 7月生まれの今年二十二歳になるエイトール家の長女だ。

 彼女はフラメナとは違い、

 真っ黒な髪を持ち少し赤黒い瞳を持つ。

 母親似のフリラメ、フラメナは父親似である。


 そんな彼女も歳を重ね、次第に王としての風格が溢れ始めた。


 クランツはつくづく思う。


 フラメナお嬢様と姉妹って言われても……

 流石に少し雰囲気が違いすぎるよな。


 そんなことを思っているとフリラメから、研究についての質問が飛んできた。


「ねぇクランツ、滅亡時の空の状況についてだけど……赤い雲って渦巻いてたのよね?なら何か風や水属性とかが関係してるのかしら?」

「……あっ、まぁそう考えられますね。

 上空にて赤き雲が渦を巻いていたとなると、それを経由してあの爆発を起こしたとも考えられます」


 そう言われフリラメはため息をついて立ち上がる。


「ダメね。研究ばっかりは本当に進まないわ。

 進捗もあるけどどれも核心を突くようなものじゃないし……死ぬまでには解明したいわ」


 現在のゼーレ王国は、

 フラメナが旅に出てから王都の建築が進んでおり、

 城が建っていない街として栄え始めている。


 また城が建ってない理由としては、フリラメ自身がそんな大きな建物は後で十分と言っているからであり、当分建築は先のようだ。


 それ故にここまで復興が早いのだろう。

 王国の民も増えてきており、ヨルバが率いる捜索隊が大遠征にて、南大陸の奥にいる生き残りの者達も連れてくることができた。


 フリラメの人望は凄まじい。

 彼女の計画性の高さにより復興は一度も滞ることなく、右肩上がりで作業が進んでおり、4年ほど前の南大陸とは見違えるほどの繁栄の仕方を見せている。



 研究で頭を悩ませ、少しすると水筒に入った水を飲んで研究所を出ていくフリラメ、クランツは彼女の護衛を任されているため後ろについていく。


 フリラメは女王として君臨しているが、

 比較的親しみやすい存在として認知されており、

 老若男女問わず気持ちの良い挨拶が聞こえてくる。


 声に耳を傾けて挨拶を返すフリラメはいつも笑顔だ。そんな笑顔はどこかフラメナに似ている。


 やはり姉妹なのだ。

 似ているところはよく似ている。


「クランツ、今日の昼食はどこにしましょうか?」

「では、巷で噂の海鮮料理店へご案内しましょう」

「ふふ、私の好みをよく知ってるじゃない」

「これくらいは当然のことです」


 クランツは護衛を任されるにあたって、ヨルバから色々と教え込まれている。


 フリラメは海鮮類が好物。

 苦手な物は肉類。

 趣味は読書と散歩。

 就寝時間や持っておくと良いもの、

 好まれる話題など……


 これ以外にも事細かに教わった。


 正直細かいことが多い。

 もしフラメナ護衛マニュアルを作るならば、もっと適当で良いだろう。


 クランツとフリラメは店に入り、席に案内されると料理を注文して談笑する。


「最近大陸新聞を読んだのだけど、

 フラメナは結構活躍してるらしいわよ」


 まるで自分のことのように嬉しそうに話すフリラメ。クランツがそれについて話し始める。


「西黎大陸の砂塵を追い払うとは……

 一ヶ月前の出来事ですけど、新聞を目にした時は驚きましたよ」


 クランツも砂塵のことは知っている。

 あのレベルの邪族は君級でも上位の者でなければ単独では討てない強敵、それを自身の教え子が追い払ったのだ。


「砂塵は強力な魔族(竜族)……フラメナも頑張ってるのね。帰ってくるのが楽しみだわ」

「えぇ、どれほど成長しているか楽しみですね。

 わたくしはもう越されてるでしょう……」


 そうは言うがクランツは将級上位の強さだ。

 まだまだフラメナはクランツを越してはいない。


「フラメナは、昔から好きなことには夢中な子だったわ。物心がつく前から好奇心旺盛で、七歳の私から見てもちょっと元気いっぱい過ぎだった。

 白い魔法っていう周りから嫌煙されるものを持っていながら、フラメナは前に進み続けてる……

 とても誇りたくなる存在よ」


 フリラメはフラメナを誇りに思い愛している。

 先に生まれ親がいない今、フラメナの成長を見守ってあげられる血の繋がった者はフリラメだけだ。


 フリラメの好きな話題はフラメナのことだ。


 それから二人は届いた料理を食べ、

 会話を弾ませながら時間を共に過ごす。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一方、同刻東勢大陸(とうぜいたいりく)、ハルドラ村にて。


 凍獄(とうごく)、エクワナ・ヒョルドシアは大陸新聞を、

 宿の外に置いてある椅子に座って見ていた。

 その宿は自身の祖父であるカイメが経営するもので、エクワナもここに滞在している。


 君級魔法使い実力三位の彼女の一日は穏やかだ。

 エクワナの年齢は現在二十七歳。

 彼女は氷属性魔法の頂点として君臨し、リクスを育てた師匠でもある。


 彼女は日が昇ると共に目を覚まし、軽くランニングを行い、帰ってきてシャワーを浴びた後、カイメの作る朝飯を食し、日に当たりながら読書をする。


 今までの彼女の人生は魔法や戦いばかりのものだった。それ故にこういった時間は非常に楽しいのだ。


 その日も相変わらず大陸新聞を読んでいると、

 ある情報に目が釘付けになる。


「純白魔法使い……フラメナお嬢ちゃんか!」


 砂塵を追い払ったと言う情報に、

 エクワナは目を輝かせて読み進める。



 やっぱりあのお嬢ちゃんは強くなってる……

 単独ではないとはいえ、君級邪族と戦って生きてるだなんて……想像以上に強いじゃないかい.


 あー!いいなぁ……二年くらいしたら南大陸に帰ってると思うし、会いに行ってみようか……



 そんなことを考えていると、後ろからエクワナの頭に紙が当てられ、振り返ればカイメがいた。


「ほれエクワナ、依頼が入ったぞ」

「えー、今日あったっけ?」

「こうして紙が来とるんじゃ、行ってこい」

「おじいちゃんのボケじゃなかったか〜……

 まあパパッと行ってかたづけてくるよ」


 穏やかな日常と言えど戦いと無縁なわけではない。

 エクワナはハルドラ村周辺の邪族を狩っている。

 自身の故郷の地を守るために、今日も彼女は戦う。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 北峰大陸。

 そこは雪が積もる寒冷の地。

 南大陸の冬よりも寒く、年中寒いのが特徴だ。


 住まう種族は大半が霊族で、魔王の根城である魔城島が近いことから全く観光客が訪れない。


 そんな足跡の少ない雪原に足跡を残す存在がいた。


 ルルス・パラメルノ。

 龍刃流の草将級(そうしょうきゅう)剣士だ。


 彼は一年半前にオラシオン王国にて、一ヶ月間剣塵の弟子となり、剣術を磨いた。


 本人は不本意だったが無理矢理弟子にされたため、

 一ヶ月だけ弟子になったようだが、一ヶ月の間でルルスは圧倒的に強くなった。


 正直言って今の彼は君級には届かずとも、

 将級上位の強さはある剣士だろう。


 彼はオラシオン王国から下へと向かい、

 邪統大陸に渡って二ヶ月ほど滞在。

 その後西黎大陸へと戻り、塵雪(じんせつ)山脈の西側を通って北峰大陸にたどり着いた。


 彼の旅は育て親の捜索。

 霊族であった親を探すならばここが本命の地だ。


 だが北峰大陸にも邪族は多い。

 道中何度もルルスは剣を抜いた。


 ブレード状の剣、それを扱い敵を圧倒する。

 彼から血が出たことは少ない、

 いつも剣に付着するのは返り血ばかりだ。


 今日も雪が降る中歩いていると邪族に出会う。


 白い狼、名を白狼(ハクロウ)と言う。

 上級ほどの力を持つ強力な獣族。

 こいつらは群れを成しており、年間何人もこの狼たちに食い殺されてしまっている。


 軟弱者はこの地を歩くことすら許されない。


 だがルルスは強者だ。


「いつでもどうぞ〜」


 剣を持ち、クルクルと回すルルス。

 表情はニコニコとしており、相変わらずなようだ。



 その翌日、そこを通りかかった者によると、一つの白狼の群れがそこで全滅しており、死体には一個の切り傷しかなかったと言う。


 ルルス・パラメルノ、彼の異名は笑死(しょうし)

 ニコニコと浮かべる笑みはまるで死神のようだ。

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