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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第六章 純白魔法使い 砂塵編

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第五十九話 宿命 後編

 君級邪族。

 基本的に君級の邪族は知性なしの場合でも将級戦士が十名ほどいないと倒せないほど強力。

 将級以下の等級というのは、級が上がるごとに天と地の差が出来るわけではない。


 だが君級となれば話は別だ。


 君級邪族には君級戦士を。

 そう言われるほどには差がある。


 フラメナは限りなく将級に近い実力だ。

 それでも君級との差は明確。


 砂塵の攻撃方法は主に五つ。


 ・足の爪による斬撃

 ・刃物のような尻尾による薙ぎ払い

 ・地面を強く踏み込み、風域を発生させる

 ・砂嵐を作り出し中に斬撃を混じえる

 ・風のブレス。斬撃のようなものが混じっている


 基本的にはこの五つしかしてこない。

 確かに強力ではあるが、これだけ聞けば何も無理難題な攻撃ばかりではない。


 それに相手は竜であり、人型ではない。

 攻撃のスピードは流石に人型よりも劣る。



「フラメナ!」


 ライメの名を叫ぶ声が響く。

 それと同時にフラメナがライメの前へと出て、その手から放たれる白い火によって、砂塵の放った斬撃を相殺する。


 白い火を扱うフラメナの魔法は相変わらず、

 初対面の相手にはあまり受け入れ難いものだ。

 だがこの緊急事態では、流石にそれに対して恐怖を感じている暇などない。


 相手が巨体が故に戦いが楽になるわけがない。

 なぜなら相手は君級、それを何度も痛感する。


 戦闘が始まってからこちら側が、砂塵へと与えたダメージは擦り傷程度。


 あの鱗を破壊するほどの威力が足りていない。

 それ故に不利な状況が続き、怪我を負う者達がどんどんと増えていく。


 上級、帥級、将級が束になっても敵わない。

 これほどまでに理不尽、エルメダは笑いながら前線で戦い続けた。


「ははははっ!マジでクソかてぇ!

 もうちょっと柔らかく生まれてきてくれよ!」


 エルメダは渾身の一撃で剣を振り下ろし、

 雷撃と共に砂塵の腹へと横から切り裂こうとする。


 その一撃は深く傷として残ることはなく、鱗を一枚切り裂く程度で、ほぼ無意味と化す。


「エルメダ!!」


 リルダがそう叫び、草魔法によりエルメダの腰にツルを巻き付け、一気にこちらへと寄せる。

 次の刹那にはエルメダにいた場所へと、的確に心臓を撃ち抜くように尖った尻尾が刺されていた。


 冷や汗をかきながらもエルメダはリルダに感謝し、

 再び剣を構え雷撃を剣に纏わせ走り出す。


 完全なる無策、やりたい放題の戦い方。

 このまま戦って勝てるか?

 否、このままでは全員が勝てないと知っている


 ならば何かきっかけを作らなければいけない。



「ライメ、一つ作戦が思い浮かんだわ」

「その作戦って?」


 フラメナはライメに振り返り、顔を見せて言う。


「ライメの最大出力の氷魔法を放つのよ。

 いくら君級でも数秒の隙は生まれるわ。

 凍った瞬間に一気に全員で砂塵を叩く」


 氷魔法は凍結させた対象を破壊すれば、即死させることが可能である。

 故に砂塵を凍らせた上で砕いてしまえば、一気に絶命させることができる。


 もし成功すれば一発逆転だ。


「……確かに成功すれば一発逆転。

 やってみるよ……!」


 フラメナとライメが会話を終えれば、砂塵の飛翔と共に斬撃の嵐が生まれ、皆へとそれが襲いかかる。


 各々が斬撃を弾く中、フラメナとライメの元にエルトレが走ってきて斬撃を弾く。


「なんかやるんでしょ?あたしがあんた達を守るから、決めちゃってよ」


 剣の状態の武器で斬撃を弾きながらそう言うエルトレ、フラメナはエルトレの期待に応えるように魔法陣を展開する。


「ライメ、本気の魔法で行くわよ」

「わかってる……」


 すると二人から一気に魔力が溢れ出し、辺りへと熱気と冷気が充満し始める。


 魔法の強化発動は二つ。

 代力(だいりき)と詠唱。


 その二つを行った際に放たれる魔法は400%という非常に強力なものとなる。


 将級間近とも言える二人がそれを行えば、君級と言えど大ダメージは喰らうだろう。


 他の全員がフラメナとライメの魔力が溢れ出したのを感じ取り、全員がそれに賭けるようサポートが始まる。


「なんかやるつもりだな……リルダ!絶対に守り切ってやれ、決定打はあいつらが持ってる!」

「言われずともするから、戦いに集中して!」


 エルメダはそんな言葉に「はいはい」と慣れたように返答し、竜が放つ斬撃を弾きながら前線へと向かっていく。


 すると二人の魔力に気づいた砂塵。

 生存本能が叫び、あの二人を殺さなければと感じる。そうと決まれば竜は咆哮を上げ、足の爪を向けながら飛翔し、二人へと突っ込んでいく。


 二人は動かなかった。

 なぜなら詠唱を行い始めており、もはや中断など許されないからだ。このままでは呆気なく爪に突き刺され死んでしまうだろう。


 だが二人の周りには仲間がいる。


 突っ込む竜へと大量の魔法が放たれる。

 リクスの土魔法で顔面に岩石をぶつけ、

 リルダの草魔法で竜の体へとツルを巻き付け、無理矢理止めようとする。

 それ以外にも他の砂星メンバーの魔法で竜を削り、

 一箇所に魔法が集中する。


 一方エルトレやエルメダと言った剣士達は、

 竜の足の爪へと武器をぶつけ攻撃を防いでいる。


 その甲斐あって、竜の攻撃は詠唱を開始した二人には届かなかった。


 これより詠唱が完成する。


 剣士達が一気にその場から離れ、魔法使い達の拘束が激しくなる。


 ライメに冷気が集う。


凍土白銀(とうどはくぎん)、凍て付く臓物、全てが止まった世界。

 時の流れよ、この魔法に力を。

 氷雪眼前(ひょうせつがんぜん)なる死の情景(じょうけい)

 到底あらがえぬ冷気を我が身に。

 天秤を傾けよ。その白き魂と呼応せよ!


 絶対零度(スメルドメシア)ッ!!」


 それは将級氷魔法最強の魔法。

 ライメは将級氷魔法を多く扱えるわけではない、

 なぜならこの即死も可能な絶対零度をひたすらに極めようとしていたから。

 それ故に練度は素人のものではない。


 竜へとそれが放たれた瞬間。

 一瞬にして竜が凍てつき、氷の彫刻のように姿を変えてしまう。


 それに放たれるフラメナの純白魔法。

 一回限りの大勝負。


 譜面が完成する。


「曇天から入り込む天の光、

 耿耿(こうこう)とした光は直視するに至らず。

 視界を照らす彩光はいつも私を導いてくれた。

 変幻せよ悠久(ゆうきゅう)から続く白炎の如し

 輝き、白き魔法、戴天(たいてん)なり!


 天王残火(ホワフラレット)!!」


 白い火を大量に纏い、手から火が溢れ出すと、

 君級に迫るほどの魔力量の白炎が一直線に放たれ、

 竜へとそれが直撃する。


 氷とぶつかり合い水蒸気が大量の煙を出す中、大爆発が起きて辺りに霧が舞う。


 姿は見えない。

 だが手応えはあった。

 それに加えて今の二つの魔法はフラメナとライメが出せる最高威力の魔法。


 逆にこれで決まらなければ敗北だ。


 霧の中でライメは耳にした。

 何かを貫いたような、肉を割いたような、骨を砕いたようなそんな音。

 何かが起きている。そんな漠然とした考えしか脳に巡らない。魔力を一気に使い過ぎたが故だろうか?


 なんだ?何が起きている?


 ライメはそう気になりながらも、霧が晴れて横にいるフラメナへと目を向けた。


「フラ……メナ?」



 フラメナは呆気なく腹を竜の尻尾に貫かれ、

 その場に鮮血を流しながら倒れていた。

 

 竜を纏っていた霧が晴れ、

 この戦いの結末の全貌が見え始める。


 竜の半身は焼け爛れ、ヒビが何箇所にも入っている。だが竜はその程度では死ななかった。


 大爆発が起きたと同時、竜は尻尾を突き出してフラメナを貫いたのだ。


 こんなにも大勢の手助けがあったにも関わらずだ。


 敗北。


 その言葉が何度も脳裏を駆け巡る。

 フラメナは死んだ。

 敗北したのだ。


「うっぁあああっあぁ!!」


 そんなライメの悲痛な叫びが響き渡り、

 他の皆も倒れるフラメナを見て絶望した。


 一番星のように輝く彼女は、もう煌めきを失った。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 ?


 どこよここ。


 フラメナの視界には大きなシャンデリアが吊られている天井が映った。


 あぁ、どこも何も、わたしの部屋じゃない。


 小さな手を上に向ければ視界へとその手が映る。

 ふかふかのベッドから起き上がり、その元気溢れる

 身体は今にでも走り出したいと叫んでいる。


 今日もクランツの魔法授業ね。

 早く朝ごはん食べていかなきゃ。


 そんな思いがフラメナを急かす。


 すると窓の外から何か自身の名を呼ぶ声が聞こえた。その名を呼ぶ声は妙に聞き覚えがあるもの。


 気になりはするが、フラメナはそんなことよりも空腹感を満たすために自室を出ていく。


 家族揃う食卓へと向かえば、「おはよう」という声と共に、父親のフライレットと母親のフラレイが歓迎しているような表情で迎えてくれる。


 それに元気良く返事を返すフラメナ。


 するとまた、窓の外から声が聞こえてきた。


「メナ……!フラメナ!」


 誰?


 わからない、ただわからない。

 そう言えばクランツは?

 だいたい食卓にもクランツのはいるはず。


 なんでいないの?


「フラメナ」


 そう父親のフライレットに呼ばれ、

 フラメナは振り返る。


「なに?お父様!」


 すると突如、部屋が真っ二つに裂かれ、フラメナと両親の距離は物理的に離れていく。


「お父様!?お母様!なにこれ……部屋が裂けて!」

「フラメナよ」


 フラメナが焦る中、フライレットの険しい顔が優しいものへと変わる。


「まだ来るな。

 残したことは多いはずだ。純白魔法使い、

 フラメナ・カルレット・エイトールよ」


 その瞬間、城の中であった光景が一瞬で白に染まり、フラメナの胸から白い光が溢れ出す。


「わたしは……違う″私″は……!

 まだ戦いは終わってない!」


 フラメナ、貴女はまだ死ぬには早い。

 ″欠片″と同化するのです。


 そんな言葉が脳内に響いたと同時。

 フラメナの視界に晴天が映る。



 ーーーーーーーーーーーーーーー


「フラメナ!!」


 頭から血を流しながらもそう心配そうに見つめてくるライメ、近くにはラテラがいてフラメナが起きたことに対し、非常に驚いていた。


「傷が白い光と共に治った……?」


 一体何が起きたらあの致命傷を治癒することが出来るんだ?だがフラメナはそんなことはどうでもいいのか、すぐさま立ち上がる。


 フラメナが急に動くので、少し心配そうにする二人だったが、すぐに心配などは消え去った。


「あの竜は、私が殺す」


 次の瞬間、フラメナの手足は真っ白に染まり、髪の毛の末端が真っ赤に光り輝くと、瞳に白が混ざり桃色のように変色する。


 その姿は神々しい、これがフラメナなのかと疑うような雰囲気を纏っている。


 二人は掛ける言葉も見つからないまま、フラメナは少し先で限界を迎えそうな皆を助けに走り出した。


 腹を貫かれたにも関わらずこうも復活し、なぜフラメナは生きているのか?

 だが今頼れるのはフラメナのみだ。


 白を纏う魔法使い、希望を背負い白炎を巻き起こせ

明日第六章完結です!

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