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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第六章 純白魔法使い 砂塵編

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第五十八話 宿命 前編

 五星級を救出する為に砂嵐へと入ったフラメナ達。

 普通であれば捜索は長引くものだ。


 だがそれでもフラメナ達が砂嵐の中、

 エルメダ達の元へとここまで早く辿り着けた理由。


 それは数十分前に遡る。


 砂嵐の中に入り、ライメがフラメナに対してどうやって砂星を探すか問いていた。


「フラメナ、どうやって砂星を探し出すんだい?

 片っ端からって訳にもいかないだろうし……」


 ライメがそう言えば、

 フラメナが振り返って自身の目へと指を近づける。


「魔眼!私の魔眼があれば位置は特定出来るわ。

 砂星は砂塵が現れて戦うことなんてしないはずよ。

 逃げるなら洞窟、そこに将級とか帥級が何人かいるのならオーラは相当大きいわ」


 そう言うフラメナ、確かに探し方としてはそれが最も正しいのだろう。

 説得力は高く、問題は解決した。



 それ故に今に至る。


「オマエら……どうやってここまで!」


 そうエルメダが言えば、

 フラメナが問いに答えることはなく、最優先で行うべきことを伝える。


「そんなことはどうでも良いから帰るわよ!」


「そんなことって……いや、どうやって帰るんだよ!

 オマエら砂塵には会わなかったのか?」

「会わなかったわよ!」


 そんな言葉を聞いてエルメダは困惑する。


 砂嵐の中は砂塵の縄張りと化す。

 そんな中で動いているのであれば、

 確実に相手から襲いかかってくる。


 そんな考えを巡らせ、まだ困惑するエルメダにライメが話し出す。


「安心してください。

 帰りは転移魔法で一瞬ですから」

「転移魔法……?」


 ライメが魔法陣を地面に大きく展開すると、

 皆に集まるよう呼びかける。


 少しして全員がわけもわからずその魔法陣の上に乗れば、ライメは転移魔法を発動するべく呼称した。


転移(エクリプス)



「あれ……?」

「ライメ……?」


 転移魔法が発動しなかった。

 そんなライメへと声をかけるフラメナ。


 転移魔法の発動の仕方は何も間違っていない。

 魔法陣の模様も、魔力の流し方も……


 そんなライメの魔法陣を険しい顔で見つめるエルメダ。ライメは焦ってどうしようかと考え始めた時、

 エルメダがこちらへと話しかけてきた。


「……あんた達は悪くねぇ、多分転移魔法もマジで使えるんだろうな。でもそれを阻害してる奴がいる」


 阻害?何を言ってるのだろうと思えば、

 エルメダは剣を抜き、一人の者へ剣を向けた。


「おいレグラ、テメェ何してやがる。

 笑えねぇ冗談は嫌いだぞ」


 エルメダは剣をレグラへと向けていた。


「……魔力探知案外出来んのかよ」


 そう言うレグラは魔法陣の外へと向かって歩き、

 皆の前で手を広げ堂々と自己紹介を始める。


「ごめんな、エルメダ、俺は元々上司がいるんだ。

 ″傲慢のシルティ・ユレイデット″さんがな」


 そう明かすレグラ・エルトレオ。

 彼は魔王側近、シルティの部下である。


 傲慢のシルティ・ユレイデット。

 その名を聞いてフラメナ達五人は顔色を変えた。


 忘れるはずもない、手も足も出なかった相手。

 そんな奴の部下が今こうして目の前にいる。


 何のために?


「レグラ、テメェ……

 何の理由でスパイみたいな真似してやがる」

「理由を聞かれて答える義理なんてないけど、

 どうせ言ったところでどうにかなるわけでもないし、特別に教えてやるよ」


 レグラは瞳が元々黒色で、黒色の毛を持つ人型の鳥だ。だがこれよりレグラの瞳は黄金に煌めき、毛が金色へと変わっていく。

 それと同時、多くの魔力がレグラから放出され、フラメナの魔眼に大きな金色のオーラが映る。


 まさに傲慢のオーラとそっくりだ。



「そこの白髪の女を殺すように魔王側近様達に命令が出ている。だからこんな真似をしてるのさ、最も、まさか本当に来るだなんて思ってなかったけど」


 レグラがそうペラペラと語り出す状況に、エルメダは我慢の限界を迎え、地面を踏み込み一瞬で接近すれば力強い剣術でレグラを切り付ける。


 意外にもその攻撃はレグラに直撃し、血飛沫を上げながら吹き飛んでいくレグラ。

 あまりにも呆気ない光景にリルダが言葉を漏らす。


「あんな感じでこうもあっさりなことある……?」


 レグラは壁に叩きつけられ、土煙に覆われると、眩い黄金の光を放ちながら煙から出てくる。


 煙から出てきたレグラに皆が驚愕した。


 それは傷口が黄金に輝き、完治していく様子。

 明らかに治癒魔法などで行える所業ではない。


 エルメダは特に驚いた。


 確実に致命傷、それが無呼称、無陣で完治しているのだ。君級だってそこまでのことは出来ない。


「いってぇな〜!でも治っちゃうんだよ」


 飄々として話すレグラを見て、フラメナがラテラへと問う。


「……治癒魔法ってあんなことできるの?」

「無理ですよ……短縮発動であそこまでの治癒は、

 史上確認されていないはずです……」


 困惑が積み重なる状況の中、エルメダが言う。


「テメェ上級剣士だったよな。

 並外れた治癒魔法だったり、結界魔法使って転移を阻害したり、本当はどれくらい強いんだ?」


 その問いに親切に答えるレグラ。


「変わらず上級レベル、だから俺はお前達とは戦わない、戦うのは俺じゃない、もうわかるだろ?」


 レグラのその嫌な笑みの裏にある答え。

 それをエルメダやリルダは理解した。


「まさか……″砂塵″を?」


 エルメダがそう言えばレグラは大きな声で答える。


「正解!!砂塵なんて使役出来るわけないけど、

 奴の気性は荒い、こうやって魔力を多く流せばすぐに気づいてここに来る。

 強者を利用してこそ弱者の使命、精々戦ってみろよ。到底勝てる相手じゃないけどなぁ!」


 レグラがそう言った瞬間。

 フラメナは天井付近に大きな魔力を感じ、皆に伏せるように叫ぶ。


「伏せて!!」


 その叫びに咄嗟に伏せるレグラを除いた全員。


 次の刹那、洞窟の上半分が吹き飛び砂嵐が晴れたのか、突き刺すような日差しが辺りを照らす。


 現れる竜の頂点。

 砂竜は基本黄色の鱗を持つが、砂塵の鱗は少し黒く変色した鱗が多い。

 身体中に傷を持つ巨大な体。


 まさに強さの象徴とも言える姿。

 それが少し離れた先に見える。


「ライメ!転移魔法は本当に使えないのね!?」

「何度やっても……転移できない!」


 レグラは焦る二人を見て笑う。


「ははは!そりゃあ焦るよな!万全だと思った作戦が崩れた時ほど、焦る瞬間ってのはないもんなぁ!」



 レグラは笑い終えた後、ゆっくり歩き出しその場を離れていく。


「殺したければ殺しに来れば良い、

 まぁでも動いたら余計目立つだろうけどね」


 エルメダやリルダ、砂星のメンバーは今すぐにでも追いかけて殺してやりたいと思っている。

 だがそれでも動かない理由は砂塵の存在。


 砂塵もゆっくりとこちらへと向かってきている。


 動けば確実にこちらが攻撃される。

 レグラはおそらく砂塵からは見えていないのだろう。奴の視力は良いとは言えない。


 全て理解した上でこちらを挑発する弱者。

 苛つきが高まり続ける中、エルメダは冷静さを取り戻し、息を吐いてフラメナへと話し始める。


「あんたら名前は?」


 そう言われてフラメナ達五人は名前を伝え、

 エルメダ達も名を伝える。


「砂塵は俺たちが引き寄せる。

 あんた達死ぬ運命じゃなかったはずだ。

 生きろ、俺たちがあいつを止めてやる」


 エルメダの独断ながら、その決断は反感を買うことはなく、皆賛成という目つき。


 フラメナ達が生き残るにはこの方法しかないだろう。だがそれでも、フラメナはその提案を断る。



「嫌よ。私たちも戦うわ!」

「おい……さすがに勝てないことくらいわかってんだろ?なにも全員死ぬ必要なんてないんだ」


 そんなフラメナを否定するエルメダ。

 エルメダは正しい、普段ならフラメナ以外の四人もこの行動は否定するだろう。


「確かに貴方達を見捨てて逃げれば、

 僕たちは明日を生きられるでしょう」


 ライメがそう言えば、

 エルトレとラテラが続けるように話す。


「でもそれじゃあたし達は幸せを感じれない」

「あいにく、僕たちのパーティーは安全の一択ばかりじゃ満足出来ない人ばっかなんです」


 リクスがフラメナに続けるように言う。


「なんせ、全員死に恐怖なんてないからな。

 刺激あるところにすぐ向かいたがる」


 フラメナは立ち上がり言う。


「助けるわけじゃない、あくまでこれは自己中よ。

 貴方達を見捨てて食べる物は不味そうだもの。

 さぁ負け戦なんてしょうもないわ!

 やるなら勝つわよ。勝って帰るの」


 エルメダを含め、その言葉に砂星の者達は気付かされたように、足に力を入れて立ち上がる。


 元々、いつ死ぬかわからない職。

 それをこの若いパーティーはすでに理解している。


 いつ死んだって構わないのか?

 いや違う。そもそも死ぬ気がないんだ。

 こいつらは諦めてない、絶望してないんだ。


 なんて奴らだ……無謀ってのは悪いものだが、

 度を超えるとこうも頼もしく見えんのかよ。



 もはや無謀とも言える挑戦。

 だがたまにはこういうのも悪くない。


 命を賭けてみよう。

 奇跡という事象に賭けようーー


 だが奇跡を起こすにもある程度前提は必要だ。

 エルメダは何か策がないかとフラメナへと聞く。


「策とかはあんのか?」

「全くないわよ!」

「だははは!そりゃ笑える。

 それじゃあ自由にやっても良いんだな?」

「えぇ!自由に戦いましょ!」


 エルメダはそう言うと振り返り、砂星のメンバーへと伝える。


「さすがにもう弱気なやつなんていねぇよな?

 勝つぞ!俺たちは五星級だ!!こんなところで死んでたまるかってんだよ!レグラのやつもぶっ殺さないと死んでも死ねないよなぁ!」


 流石はリーダー、その声に残った砂星メンバー達の声が上がる。


 互いのパーティーの士気は最高潮。

 なぜか負ける気がしない、皆の声に反応して砂塵が咆哮を上げる。するとこちらへと翼を広げ、飛んできてすぐ近くに着地した。


 地響きのような竜の咆哮。

 放たれる圧倒的なまでの莫大な魔力。

 そして君級と言う等級が示す危険度。


 この戦いに勝機はあるのだろうか?

 なければ作り出せば良い。


 純白魔法使いの口角が上がる。

明日第六章完結です!

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