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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第五章 純白魔法使い 邂逅編

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第四十八話 対立

 虹剣(こうけん)1686年7月21日。

 中央大陸ではフラメナに対して、

 強い畏怖の感情が渦巻いていた。


 先日、フラメナが放った白い火。

 それは多くの者の目に映り、噂としての純白魔法を確実なるものへと変化させた。


 噂で終われば良かったのだろう。

 だがいざ実在し噂が現実となると、フラメナの魔法は酷く恐れられた。


 中央大陸は魔法の聖地。

 それにプライドを持つ者は多くいる。


 そこにて異質な魔法を扱うフラメナ。

 周りの視線は冷たく、危機を救ったのにも関わらず感謝など少しもされなかった。


 むしろ外を歩けばひそひそと陰口を言われる。


 中央大陸は厳しいところだと聞いていたフラメナだが、まさかここまで言われるとは思ってなかった。


 フラメナはそんなこと気にしないようにしていた。

 それでもまだ彼女は十五歳、複雑な時期にこう言うことが絡めば気分も下がるだろう。


「フラメナ……大丈夫?

 何か欲しいものとかないかな……」


 トヘキがフラメナへとそう話しかける。


 フラメナ達は二日前に宿を追い出された。

 理由は魔法のせいだろう。


 今は追い出されたフラメナ達を、

 ユマバナが自身の家に無償で泊めている。


「特にないわ」

「そう……?」

「……トヘキが落ち込む必要はないじゃない」

「それは……そうだけど」


 フラメナは手を握りしめて話し出す


「大体分かってた。

 ここで私が魔法を使えばこうなるって……

 中央大陸はこう言うところだって知ってたから、

 別にショックでもなんでもないけど……」


 ショックではないと言うフラメナ、だがそう言う彼女の表情はとても悔しそうだった。


「ガルダバさんは感謝してたよ……」

「君級のお爺さんよね」

「うん、フラメナの魔法がなかったら危なかったって……」

「本人から感謝されてるならまだマシね……

 やっぱり君級の人は私の魔法は怖くないのかしら」



 二人がそう会話しているとーー


「ちょっとなんなんですか!?」

「礼儀とかないわけ……!」

「妾の家にそんな押しかけるでない〜」


 玄関の方から騒がしい音が聞こえ始めた。


「騒がしいね……なんだろ?」


 トヘキがそう言うと、数十の足音がこちらへと向かってくるのが分かった。


「なんか向かってきてない?」

「……フラメナ、窓から逃げて」

「え?」

「早く!」


 次の瞬間、扉を蹴破り大量の兵士が部屋へと入ってくる。


「白髪の女性、あの者だ」


 兵士が指を指すのはフラメナ。

 それと同時に何人もがフラメナへと接近していく。


「っ!」


 何が何だかわからない、

 でもそれでも理解できることはある。


 捕まれば洒落にならない。


 フラメナは一気に風魔法で兵士を押し返し、

 窓から身を乗り出して外へと飛び出す。


 だが外に着地した瞬間、鎖が足へと巻きつき引き寄せられ、地面へと倒れるフラメナ。


「っ……なんなのよ!」


 そうフラメナが叫ぶと一人の兵士が説明する。


「国王、マルラト・グラディ・ライストロ様からの命を受け、我々は貴様を捕らえに参った」


 マルラト・グラディ・ライストロ。

 中央大陸、エテルノ王国の王族。

 そしてライストロ家は世界一の貴族である。


 異質な魔法を扱うフラメナをマルラトは非常に恐れていた。彼は非常に保守的で自身の大陸に何かあれば、どんな手を使おうと安全を優先する。


 それ故に今回の巨大迷宮などに対して、帝黎(ていれい)というパーティーを結成させたのだ。

 それほど彼は徹底的に不安因子を削除する。


 フラメナは運悪く、マルラトから不安因子と見做されてしまった。


「待ちなさいよ……私は危害なんて加えないわ!

 一応迷宮崩壊後の後処理も手伝ったのよ!」

「関係ない、命令は絶対だ」


 そうして鎖をどんどんと引き寄せる兵士たち。

 フラメナはもはや自身の魔法を使うしかないかと感じ始めた瞬間、氷が鎖に纏わりつき始める。


「フラメナ!逃げるんだ!

 この大陸から今すぐ逃げて!」

「トヘキ殿!何をなさる……!」


 トヘキは鎖を氷で纏わせた後、土魔法で岩石を作り出し、大きな衝撃を与えて破壊すると、フラメナは急いで立ち上がる。


「でも……皆んなは!」

「なんとかする……だから!」


 トヘキのその顔、フラメナは彼を信じた。

 その場からフラメナは走り出して去っていく。


「逃すなぁ!」


 兵士たちが窓から溢れるように飛び出していく。


 部屋から兵士たちが消えれば、トヘキの背後からユマバナやエルトレ達がやってくる。


「あのあほだら共……妾の家を荒らしていったな」

「フラメナはどこ……?」


 トヘキはそう聞いてきたエルトレに対して、今起こったことを説明した。


 その説明はエルトレ以外のラテラやリクス、ユマバナにも伝わる。

 ユマバナは頭を悩ましたように話し出す。


「うーむ正直な話、妾はこれ以上協力できんのじゃ。

 国王と妾は契約を結んでおる……

 ここでフラメナを庇えば裏切りとなるからのう。

 裏切ってでも助けてやりたいのじゃが、

 そうすれば、金銭面の支援も名声も消える」


 ユマバナはため息をついて続けて話す。


「大体こうなることはわかっておった。

 トヘキ、自分で決めるんじゃ。

 ここに残るか、フラメナについていくか、

 妾はどちらでも構わぬぞ」


 トヘキは迷っていた。


 ユマバナは自身の師匠であり、命の恩人。

 対してフラメナは自身と酷似するライメという人物の過去を知る者。


 普通に考えてこの状態でフラメナにつくのは、少しリスクが大きすぎる。

 トヘキはこのままいけば確実に、名誉ある魔法使いとして世に名が知れ渡るだろう。


 だがここでフラメナにつけば、名誉も落ち未来の安全など確証されなくなってしまう。



 フラメナについて行けばデメリットだらけ……

 でも、それでも……過去を知らないままになんてしてたくない。

 この引っかかり続ける思いを放置するなんて……



 トヘキは悩んだ末に決めた。


「僕はフラメナについていきます」

「……良かった。そう言わなかったら家から追い出してたよ」


 ユマバナは安心したようにそう言うと、その場から走って別の部屋に行き、ジャラジャラと音を立てながら戻ってくる。


「お主ら貧乏じゃろ!

 いっぱいやるから頑張るんじゃぞ!」


 清々しいほどに失礼、だがそのジャラジャラと音がする袋をエルトレが受け取ると中を見て驚愕する。


「うぇ……?こんなにくれるの?」

「っ!?すご……」

 

 中身には大量の金貨が入っており、

 それに驚いたエルトレとラテラがそう言うと、ユマバナは言う。


「妾が持ってても意味ないしのう!それに中央大陸から東勢か西黎に行くなら、そんくらいあっても半分は消える。遠慮せんでいいんじゃぞ!」


 リクスがユマバナへと羽振りの良い理由を聞く。


「なんでこんなに良くしてくれるんですか?」


 そうリクスに聞かれてユマバナは四人に背中を見せて話す。


「妾と似ておるんじゃ。

 昔は差別も激しくて、生きるのに必死な時代。

 そんな中魔法を学びまくってた妾は同族からも嫌われた」


 ユマバナは同族や他種族からも嫌われ、

 何度も死にかけ、何度も諦めかけた。


 それでも魔法をやめなかった。

 故に彼女は君級なのだろう。


「お主らフラメナ含め五人は、普通とは違い、

 過酷な道ばかり歩んでおるんじゃろ?

 苦労してばかりじゃ人生は辛いだけ、こうやって楽させるのも先人のするべきことなんじゃ。

 だから遠慮せず使うんじゃ!」 


 ユマバナは振り返ってそう口角を上げながら言う。


 今、自分は良いこと言ったなという顔だった。


 でもその顔は非常に頼もしく、

 四人はユマバナへと感謝を伝える。


「師匠……3年間ありがとうございました」

「堅苦しい!早うフラメナを追うんじゃ!」


 ユマバナはそう言って四人へと再び背中を見せる。

 そんなユマバナを見てトヘキを除いた三人は、少し困惑しながらも玄関へと向かう。



 トヘキも少し寂しく感じながら、玄関へと向かうと、ユマバナがボソッと言った。


「トヘキという名は妾の前だけで良い。

 元の人生を歩め……」


 トヘキはそう耳にして振り返ると、ユマバナの頬が少しだけ見え、一つの線が光を反射していた。


「ありがとうございます……ユマバナ様」


 トヘキは家を出て行けばそれと同時に、

 ユマバナの3年間というあまりにも短い、夢の世界は幕を閉じた。


 ーーーーーーーーーーー


 一方フラメナ。


「はぁっはぁ……しつこいわね」


 路地裏の箱裏へと身を隠すフラメナ。

 兵士たちは血眼でフラメナを探しており、もはや中央大陸は危険地帯となってしまった。


「……なんも上手くいかないわ」


 目を手で覆い隠し、そう呟くフラメナ。

 これからのことを考えていた。


 金銭面ではどうにか西黎大陸には渡れる……でも渡ったとして二日程度で金貨は消えるわね。

 ガレイルで稼がないと飢え死にだわ。

 とりあえず早く皆んなと合流しないと……


 フラメナは立ち上がり羽織についているフードを被り、路地裏を出ていく。


 フラメナはうんざりしていた。

 なぜこんな目に遭わなければいけないのか?


 自分は街を救った一員のはずなのに、

 こうやって追われる身となる。

 まるで邪族じゃないか。


 フラメナは多くの理不尽を味わっている。


 幼い頃からその魔法は変だと言われ続け、

 どこに行ってもこの魔法は差別される。


 でも認めてくれる人だっている。

 その人たちだけを気にすれば良い。


 気にする必要はない、

 だって認めてくれる人は居る。



「ちょっと」

「……はい」


 肩に手を置かれてそう呼び止められるフラメナ。

 振り返らずに返答するフラメナ。


 魔眼で見ずともわかる強大な魔力。


 呼び止めてきた男はフラメナを路地裏へと連れていく。


 内心フラメナは絶望していた。

 多分、将級以上の者に見つかってしまった。


「まぁ怯えないでくれよ。

 ユマバナさんの友人だからよ」

「ユアバナさんの……?」


 誰だ?フラメナはこの男が誰なのか気になり、

 名前を聞こうとすると、男が先に名乗り始めた。


「俺はレスト・バレットメア。

 天戒(てんかい)って呼ばれてる魔法使いだぜ」


 青髪で桃色の瞳を持つ高身長の男。

 それは使役魔法を極めた君級魔法使いだった。


「そうなのね……その何か私に用かしら?」

「風便でユマバナさんから手紙が来ててさ、

 フラメナっていう白髪の女の子をトヘキと合流させろって、荒い字と少し濡れた紙が来てね。追われてるんだろ?助けるよ」


 レストはそう言って手紙をフラメナに見せる。

 その手紙は確かに荒い字で所々ポツポツと濡れている。


「ユマバナさんの文字だ……」


 フラメナは文字を見て確信する。

 ユマバナは結構癖のある字なので覚えやすい。


「信じてもらえたようで良かった。

 とりあえずフードを深く被っててな、トヘキ達と合流したら今日は俺の家で泊まってけば良い」


「ちょっと待って……なんでそんなに親切なのよ。

 それで騙そうとしてるわけじゃないわよね?」


「……だいぶ辛い思いしてるんだな。

 中央大陸は冷たい人ばっかだし仕方ないか、

 安心してくれ、ユマバナさんが頼んでくれたことはなんでもやる。それが俺のポリシーだからさ」


 フラメナはそう言うレストに聞く。


「なんでそんなユマバナさんを……?」


 レストはそう聞かれると微笑み、答える。


「俺を救ってくれた″ヒーロー″だからさ」


 レスト・バレットメア。

 彼がユマバナにどう救われたのか気になるが、

 とりあえず今は彼のおかげで、少しだけ物事が良い方向へと傾いた。


 君級は良い人ばかりなのだろうか?

 フラメナはそう思いながらもレストの後ろにつき、

 路地裏から出ていく。


 ーーーーーーーーーーー


「パラトア、捕獲は頼んだぞ」

「……仰せのままに」


 だが君級を従えているのは国王のマルラトだ。

 同刻、城の中で君級剣士である。

 不視、パラトア・シーファは命を受けていた


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