第二十四話 南の大陸
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本日は多忙のため二十四話のみの投稿となります。
虹剣1683年11月26日。
先日、遂にエイトール家の長女であるフリラメが、
ここパルドシ港に降り立った。
エイトール家の生き残りである王族が来たことで、
再建に協力する者たちのやる気は凄まじかった。
普通王族や貴族はこういった場合、
国民の恨みなどによって悲惨な結末を迎える。
だがエイトール家はゼーレ王国の国民から愛されていた。
それでも当然、王族としての威厳もあり、
下手なことをすれば極刑を課せられる。
けれどもフライレット国王がしてきた国の政策は、
国民を思うようなものばかり。
それのおかげだろう。
彼女達二人を批判する者はいない。
だがフラメナはそんな中一つあることに悩んでいた。
もし自分の白い魔法を見せたら……
どう皆から反応されるんだろう。
受け入れてもらえるのだろうか?
フラメナはそう思いながらも、
民衆の前で話すフリラメを後ろから見ていた。
「長らくお待たせしました。
私はエイトール家長女、フリラメでございます。
一ヶ月前の南大陸に訪れた災厄……
それによって南大陸は実質的な滅亡を迎えました。
私は悔しいです。
自身の故郷が一瞬にして消えてしまった。
原因は不明で多くの人が亡くなり
土地は邪族に占領されてしまっている。
私はここに宣言します。
皆様と協力し必ずや王国を再建しましょう」
フリラメの演説は素晴らしいものだった。
フラメナは自分自身の姉が、
ここまで良く出来た姉だとは思っておらず。
フラメナはどこか誇らしい気分になる。
拍手喝采の中、何者かの大声がして演説を聞いていた者達の拍手が止み、フリラメがその声の方向を見る。
「邪族だぁぁぁあ!!五体!五体邪族が攻めてきたぞぉおおお!!」
その報告は一瞬にして民衆の不安を跳ね上がらせる。
フリラメが少し後退りするとヨルバが背中に手を当てて、振り返るフリラメに一言。
「ここでお待ちください」
そう言ってヨルバはフリラメの前に立ち歩き始める。
逃げる人々の中、真っ直ぐと邪族を睨み続け。
こちらへと走ってくる五体の黒い騎士に向けて、
腰に差す刀を抜き構える。
君級剣士というのは魔法使いに比べて数が少ない。
魔法使いは言ってしまえば魔法だけを極めればそれ以外はある程度鍛えるだけで良い。だが剣士は違う。
肉体、精神、剣術。
その三つ全てを極めて初めて君級となる。
それ故に、君級が放つ斬撃は無双の一撃。
黒い騎士が此方へと走ってきて、ヨルバへとその凶刃が迫った瞬間。
ヨルバは一気に刀を抜き、地面を踏み込んで五体の騎士の後ろへと移動しており、少し遅れて空間が裂かれるような斬撃が走ったと思えば、邪族たちは横一文字に両断された。
刀を納めればヨルバは歩いて戻ってきて
フリラメの後ろへと、何事もなかったように立つ。
え?もう終わり?
確かに邪族からはあんまりオーラは感じなかったけど……やっぱり君級ってこんな感じなのかしら?
フラメナがそう思いながらヨルバを見ていると、フリラメがまた大きな声で話し始めた。
「少々トラブルがありましたが……此方のヨルバ様が事態を収めてくれました」
若干強さに圧倒されて戸惑う者もいる中、
フリラメは今後について話を始める。
そんなこんなで一時間経って演説が終わると、フリラメは宿の中でフラメナにある頼み事をしてくる。
「フラメナ、邪族を狩る討伐隊を二つ作ろうと思ってるのだけど、入るかしら?」
「別に良いけど……」
「?……そんな自信のない顔してどうしたのよ」
クランツとルルス以外と一緒に戦いを……
「な、なんでもないわ!」
フラメナは討伐隊と聞いてクランツやルルス以外とも組むことを考え、
自身の魔法に対する反応を想像してしまう。
「それじゃあ決まりね。フラメナの方のリーダーはクランツさんにするけど良いわよね?」
「……ん、あ、うん全然大丈夫」
「フラメナ……?」
フリラメは少し様子がおかしいフラメナを見て違和感を覚えるが、フラメナが大丈夫と言うので特に言及はせず、部屋を出ていった。
フリラメが考える今後の流れとしてはこうだ。
討伐隊が邪族を減らし、徐々に安全な領土を広げる。
他の大陸から人を呼び、王国の人数を増やしていく。
学問に詳しい者を集め、南大陸を滅ぼした爆発の研究を進める。
この三つをメインに行動していくようだ。
討伐隊として初めての仕事。
フラメナは嫌な顔をしながら集合しており、クランツがおよそ二十名ほどの討伐隊のリーダーとして、指示を出していた。
集まった戦士は中級から上級と幅広く、
この量も居れば邪族の殲滅は可能であろう。
「フラメナさん〜一緒に頑張りましょうね〜」
相変わらずニコニコとしながら話しかけてくるルルス、フラメナは声は出さずに頷く。
ルルスはこの討伐隊の中では一番強い剣士だ。
ルルスの剣士としての実力は恐らく帥級上位、
前線が崩壊する不安はないだろう。
「では準備は宜しいですか?」
クランツがそう言うと皆が武器を上げて答え、クランツとルルスをクランツとルルスを先頭に、雪が積もる平原へと進んだ




