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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十三章 純白魔法使い 運命編

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第百十七話 二つ目の運命

 ライメはシノに連れられ、街にある一つの小さな家屋へとやってきた。


 一見一般人が住んでいるであろう家。

 シノはライメと会ったときとは違い、球体を消して普通の身なりに姿を変えていた。


「さぁさぁお入りになって?」

「お邪魔します……」


 家の中は外装と変わらず質素だった。

 本当に伝説の存在である執理政が住んでいる家なのだろうか?


「その……シノさん以外の執理政って普段なにしてるんです?」


 ライメはそんなことが気になり、シノへと問う。


「あら、そんなことが気になるなんて物好きね。

 私以外の執理政は案外忙しいわよ。

 生命は常に生まれるものや死ぬものを管理して、

 時空が空間と時の流れの調節。

 私は運命の概念が勝手に全部やってくれるから暇なのよね」


 なんともまあ不思議な話だ。

 執理政というのは上位的存在であるのにも関わらず、その身にはほとんど自由がない。


「シノさんは……人族とかじゃないんですよね?」

「まぁそうとも言えるけど……体は人族よ」


 シノは執理政の体について話し始める。


「執理政は貴方たちより上位存在ですが、

 ハッキリ言って体自体は人族なんですよ。

 この世界が生まれた時に、私たちは神によって創り出された」


「ちょっちょっと待ってください。

 いきなり神だとかスケール大きくないですか?」


 ライメが話を止めるとシノは首を傾げる。


「魔法があるんだから神ぐらいいてもおかしくないじゃない?」

「魔法も不思議な力ではありますけど……

 神とかそこら辺の話は現実的じゃないというか……

 なんかこう、イメージしてないんですよ」


 シノはそれに少し微笑みながら答える。


「まぁそれもそうね。この世界には基本的に神を信仰している者たちは存在しないものね」


 ライメはそんな言い方に少し疑問を持つ。


「″この世界″って……?」

「……特に深い意味はないわ」


 誤魔化すように笑って言うシノ。

 ライメは何かを隠されたと思いながらも、シノに連れられて部屋の奥へと向かう。



「さて……転移迷宮の研究を早速始めましょうか」

「あの……僕なんも知らないですよ?」


 シノは黄金の球体を出現させると、それに触れ、

 球体を中心に魔法陣が浮かび上がる。


 だがその魔法陣は普通のものではなく、どの属性や魔法にも当てはまらないものであった。


「貴方にはそう深くまで知ってもらう必要はありません。その転移の力を少しお借りするだけですよ」


 ライメはそう言われると、自身の鎖骨あたりをシノに触られる。


「……欠片自体はちゃんとまだあるわね」

「鎖骨にあるんですか……?」

「体に染みてるだけだからどこ触っても変わんないわ。私がただ触りたいところを触っただけよ」


 シノは真剣な顔をして片手で黄金の球を触り、

 しばらくしてライメから離れた。


「あの……僕は一体なにをすれば?」

「そうねえ……今日はもうやることないわよ」


 あっさりとそう言われてしまい、ライメは少し困惑する。


「えぇ? なんもしてないですけど……」

「私側で色々しただけだから良いのよ。

 それともまだ私と話したい? 罪な男ね」


 その言葉にライメは焦ったように言い返す。


「ぼ、僕にはフラメナがいますから!

 終わったんですよね! じゃあ帰ります!」


 足早にその場から去ろうと背中を向けるライメ。

 シノはライメを呼び止めた。


「ふふっ、一々反応が面白いわね〜

 まぁ一つだけ話したいことがあるから、少し聞いてくれるかしら?」


 シノに揶揄われたライメは振り返る。


「……なんですか。揶揄ったら怒りますよ」

「三つ、三つ運命を教えると約束したわ。

 一つ目は魔王側近の襲来……

 二つ目はまだ教えてないの。協力もしてくれてるし話しておこうと思って」


 シノは真剣な表情となり、ライメの目を見て話す。


「近いうちに邪統大陸で魔王軍との戦闘が起きます。

 貴方たちも無関係ではないのでは?」

「防衛戦争が起きるってことですか!?」


 邪統大陸防衛戦争。

 直近では26年前に戦争が起きており、

 魔王側近暴食のチラテラが討伐されたことと、

 剣塵イグレットが誕生したのが有名である。


 毎度魔王軍の侵攻は規格外であり、数万を超える邪族が一気に砦へと向かってくる。


 その光景は魑魅魍魎地獄絵図。

 邪統大陸に唯一存在するエスペランサ王国、

 そこが陥落してしまえば、邪統大陸の邪族が一気に世界中へと放たれてしまう。


 そのため世界中の戦士たちが集い、

 砦を防衛するのがこの戦争だ。


 魔王軍はなぜ北峰大陸を攻めないのだろうか?

 理由は明らかとなっている。


 邪族たちは全員が寒さに強いわけではない。

 現に魔城島には結界が貼られており、島内は温暖な気候らしい。


 寒さに弱いが故に、わざわざ魔王軍は海を渡って邪統大陸を攻める。


「南大陸が中央大陸から金貨を借りていることは知っているわよね? その中での契約に防衛戦争に戦士達を九割向かわせることが条件になっている。

 つまり、確実に君級の貴方やフラメナさんは、

 邪統大陸に向かうこととなるわ」


 告げられる新たな戦場投下。

 ライメは少し頭を抱えたように目を手で覆い隠し、

 ため息を深くつく。


「結局……戦いばっかですね」

「仕方ないわよ。貴方たちは色々と巻き込まれやすい運命を抱えてるから……運命は必然と思ってはいますが、それを変える力が貴方たちにはある」


 シノは先の強欲との戦いについて話す。


「元々強欲との戦いでの運命は……南大陸滅亡。

 貴方たちは惜しくも敗北し、一つの大陸が消えていた。でもそうはならなかった」


 ライメは嬉しそうに口角を上げるシノを見ると、

 シノはその黄金の瞳を輝かせながら言う。


「期待してるわよ。

 新世代の戦士さんたち」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その日の夕方。

 エルトレの酒場にて。


「ルルスから呼び出しなんて珍しいわね」

「お子さんのお世話もあるのに申し訳ないです〜」

「パフラナはお姉様が面倒見てくれるから大丈夫よ。

 お姉様ったらパフラナを溺愛しすぎなのよね」


 ルルスは相変わらずニコニコとしており、

 フラメナが本題へと入るように促す。


「それで私に伝えたいことって?」

「その〜、自分と戦ってほしくて」


 ルルスはフラメナに勝負を申し込んできた。


「はぁ!? ルルスと私が戦うの!?

 無理よ! 絶対私が負けるじゃない!」

「あははっそうですよね〜。

 剣士と魔法使いじゃ近接戦の強さが段違い……

 やっぱり他をあたってみますね〜」


 フラメナはそんなルルスに理由を聞く。


「なんで、急に実践練習をしたくなったの?」

「強欲と戦っていて、まだまだ強くなれることに気がついちゃったんです〜。自分はもう君級です。

 他を圧倒して強くならなくちゃいけない……

 自分がもっと強ければ犠牲者は減ったかもしれない。そう思うと最近寝不足なんですよ〜」


 ニコニコとはしているが目元にはクマがあり、

 意識してルルスを見てみると心労が溜まっていることが察せた。


「ノルメラさんも家に引きこもってますし……

 多くの人の亡くなって自分もうんざりしてます。

 邪族に簡単に壊される日常を自分は、受け入れたくないんですよ」


 ルルスはあの戦いで責任を感じていた。


 もっと自分が強ければ。


 そんな思いを背負い、最近はぐっすりと眠ることも出来なくなってしまった。


「二人とも暗い会話してんね。

 あたしも混ぜてよ」


 エルトレが二人が注文した飲み物を持ってやってくる。手には三つのジョッキ、最初から飲むつもりか。


「暗いって言うか……なにかしら?」

「悩みの吐露って感じですね〜」

「はぁ……愚痴ならあたしもいっぱい出るよ」


 エルトレの表情は辛そうだった。


 ラテラはもういない。


「……ラテラは凄いわよね。

 あの戦いは間違いなくラテラがいたから勝てた」


 フラメナがそう言うと、エルトレはあの時のことを話す。


「ラテラが戻ろうって言った時、あたしは無理矢理にでも帰ろうとした。でもラテラは無理矢理にでも戻ろうとしたんだ。

 負けたよ。人生で初めてラテラに負けた。

 ……ラテラは正しかった。あそこで戻らなかったら帰ったところで死んでた。

 ほんと……自慢の弟だよ」


 ルルスがラテラについて話し始める。


「ラテラさんは、誰よりも好奇心旺盛。

 知らないことはとことん知りたがる性格でしたよね……自分が剣術を言った時も翌日にはある程度の知識を持って会話してくれました」


 ラテラはとにかくなんでも知りたがる。

 知らないことを嫌い、全てを理解したがるのだ。


 短命であるからこそなのだろうか。

 そんなラテラとの会話は途切れることがない。


 常に何か話題が浮き出てくる。


 皆、そんなラテラが好きだった。


「ラテラを返して欲しいなんて望まない。

 でも……もう少しだけ一緒にいたかった」


 フラメナはジョッキに入る飲み物を一気飲みする。


「っ……あーもう! やけくそよ! 今日は飲みまくって潰れてやるわ!!」


 そう言うフラメナに二人は少し口角を上げ、

 たまには悪くはないかと飲み始める。


 一番先に潰れたのはフラメナであり、

 ライメが困った顔をして迎えに来た。


 酒であまり無理はしない方がいい。

 

「あ〜……ライメ、頼むよ」

「ははは……だいぶ飲んだんだね」

「うへへ〜フラメナさんはお酒弱いですね〜」


 ライメの背中におぶられるフラメナ。

 少し涙目になりながらゴニョゴニョと何か言ってはいるが、正直なにを言ってるかわからない。


「じゃあ……お二人もほどほどに……」


 ライメはそう言って酒場から出ていく。



 帰り道、フラメナはライメに話しかける。


「ライメはぁ〜……なぁんでそんなかわいいの〜」

「……飲み過ぎだよ。しばらくはお酒禁止ね」

「えぇぇぇ〜……」



 翌日。

 フラメナは飲み始めた辺りからの記憶をほぼ失い、

 ベッドの上にて目覚める。


「……あれ? 朝……?」


 するとタイミングよく呼び鈴が鳴った。

 多分ライメが出てくれることを信じ、フラメナは少ししてリビングへと向かう。



 リビングにてライメと会話する相手。

 それは若干トラウマを呼び起こす相手でもあった。


「なんで……!?」

「あっ……お邪魔してます」


 世界最強の君級魔法使い。

 虹帝(こうてい)、ネル・レルミスタッド。



 何用でここまで彼女が来たのだろうか?

 フラメナの脳内を困惑が埋め尽くす。

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