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34話 どうぶつカルテット

 ハルヒ→張る飛→張飛

 あまね→甘・寧→甘寧

 詳しくはウ◯キで検索じゃ

 一度モンスターに目を向けられてしまえば人間でなくても見逃されない。戦うか逃げるかしか選択肢はない。迷うなど選択肢としては以ての外。


「責任100倍返しでとっちゃるぞオラ! 挨拶代わりの【三舞遠呂智(トライトゥドライブ)】!」


 前面に立つミノタウロスを刹那の三連撃で斬る。

 しつつも、ダメージがどれだけ与えられたかどうかを確認するよりも早くシームレスに次のアーツを発動。


「好評につきましてぇ、ファンサ代わりの【一文一刀ハードアンサーブレード】!」


 次に発動したのは、先程とは逆に三連撃分の威力を一撃に集中して込めたアーツ。


 こうして2つの刀技アーツによって、渾身のダメージを叩き出したかに見えたが。


「ハイ、ご覧ください! ウンともスンともバキョーンともしていません」

「だろうな。貴様が面白がって罠さえ踏まなければな」

「クーちゃん、今のウチのメンタルじゃそれほんとグサる」


 ステータスが3分の1になるだけでギスギス具合は3倍増しであった。


 そう揉めている内に、待ちくたびれたミノタウロス達が肩を怒らせて突進すると。


「よし、みんな逃げるワン!」

「結局こうなるのか……こうするしかないのか!」

「ハグたん! この中に隠れてなさい!」

「ひょげえっ!」


 判断は迅速。

 小柄と化したおかげでマリーのコーディネートの一部であるショルダーバッグにハグたんを潜り込ませ、マサムネに流れるように全員が一時撤退を選んだ。


 分の悪い状況下なのだから、下手に不利と。

 どうにかステータスダウンの効果期間が終了するまで逃げ切りさえすれば、すぐさま反攻に転じられる。


 ところが、いくら走っても敵の鈍重な足音が遠ざからない。

 何ならミノタウロスの鉄より固い拳がクロの背中へ殴りかかる。


「まずい! 全然振り切れぬぞ!」

「やっぱ動物さんじゃモンスターさんには敵わないってことっすね」


 人間よりも小さい生物になっている分だけ移動速度も低下しているため、体格差による不利を悟る。


「痛っった!! そういえばこのダンジョン罠もあったのよね!」


 落石の罠を踏んだマリーだが、ハグたんを庇うだけで手一杯。

 もはやふんだり蹴ったり。敵に追われるということで先導する形となっている以上、罠の被害を被るのはマサムネらの方だ。


「もう駄目だ! やはりこの不便な体での逃げは下策か!」

「こりゃもう壊滅エンド確定ですわ〜。マリっさんのせいにしたいのにウチの顔しか浮かばねぇ〜」

「どれもこれもあんたのせいでしょ! あんたからさっさとミノタウロスに食われてきなさいよ!」


 逃げれば逃げるほどじわじわと追い詰められ、心身共に摩耗し、そうなれば敵よりも誰かの責任にしたくなる心理が働くもの。


 では、そうならない心理をもつ純粋無垢な子供ならどうだろうか。


「また喧嘩になっちゃうぅ……何とかしなきゃ……来い、神威(カムイン・カムイ)!」

「ハグたん!? まさか、自爆する気!」


 ハグたんは他責思考を持たない。そうなるくらいならただ怯えているだけ、だったのが少し前の頃。

 3人の友達としての自覚が芽生えているハグたんだからこそ、多少くらいなら恐ろしいモンスターに立ち向かえるようになっている。


 背中から伝ってマリーの頭部まで登ったハムスターが、跳ぶ。


「逸るな! 焦るな! くっ、マサムネ、なんとかならんか!」

「そりゃ……ハムスターよりゲロウマなエサ用意すりゃいける。食べるならマリっさん〜♪ マリっさんマリっさんマリっさん〜♪」

「うっさい連呼すんな!」


 逃げる足を止めてでも制止させるため大声をかけたり、醜い生贄の押し付け合いが起こり、それでもハグたんは意識を曲げない。

 そのつぶらな瞳と毛むくじゃらな頭部を爆弾に変え、ミノタウロスの群れの前に躍り出て。


「【奮迅爆発(エクスプロージョン)】!」


 最大火力を誇るアーツを発動。


 ただでさえ狭いダンジョン内だというのに耳をつんざく爆音が轟き、天井が崩落しかねない破壊の力と炎が地面ごと燃やし尽くす。


「ハグたん? やったか?」

「そのセリフは失敗に終わるアレだぞ」


 もしこれでモンスターを仕留め損なっていれば、次こそ五月蝿い犬を生贄に差し出そう。

 そう口も体も余計なことしかしない幼馴染に辟易しながら決めていた。


 やがて硝煙が晴れると、そこには仮死状態となって這いつくばっているハムスターが3人の目に映る。


「あ、新しいアーツ覚えました」


 レベルアップと共に表示されたメッセージウィンドウを確認しながら。


 死亡状態となって消滅しているミノタウロス3体の姿もあった。


「デバフっても、ハグたんはすごかったん」

「ううむ、失敗フラグなど考えるだけ無用だったか……」


 たとえステータスが激減しても、元がSTRに極端に尖っていたために一撃で倒すには十分以上に火力が出せたようだ。


 このパーティ、困った時のハグたん頼りの戦術につくづく長けてしまってきている。


「倒せました……だからどうか、喧嘩じゃなくてなかよくして下さい……」

「そ、そうね、その通りだわ。こんなかわいいハムスターにそう言われちゃったら、このあたしでも逆らえないわよ」


 比較的常識人ぶっているマリーは先んじて納得の意を示した。

 和気あいあい、と言えるほどになるには拗れすぎている人間関係のパーティだが、ハグたんこそが皆の中心となって拗れを正せている。


 程なくして。


「あ、戻っちった。おかえり人間体」

「ようやくまともに立って歩けるか」


 ひとまずは凶悪なる罠の効果が終了。


 その場で跳んだりして人間の体の重みを再確認しつつ、刀を納めたマサムネが重くなった体を揺れ動かしながらふと思い返す。


「……ぶっちゃけさ、あの罠さ、なんか楽しかったよね」


 何秒かの沈黙。


 無神経なマサムネにしては図星を突いたが故の無言の肯定。


「まあ否定はしないけど? でもせめて断りもなく1人残らず巻き込むのだけは勘弁して頂戴」

「戦いではハグたんから目を離せぬが、それ以外は貴様から目を離せんことを覚えたぞ……」


 そうそれぞれマサムネの行為にこそ苦言を呈したが、終わってみればモチベーションの回復には務まったようだ。


 皆これでもかわいいものには夢中になりがちだ。

 ましてやそれに一定期間だけでも変身したのだから。戦闘でこそ窮地に陥ったものの、それを有り余って満足感もひとしおだった。


 ただし、恐怖を感じやすい者にはやはり悪い印象だけが残るもの。


「うう、今度はもっと大きな動物さんになりたいです。けど私なんてどうせ次はミジンコかアメーバになるしか……」

「小動物すぎじゃねそれ」


 爆破範囲の広さに反して心の小ささは微生物以下。


 だがひとまずはトラブル自体は解決したことは事実。クエストも達成し、パーティは一様に同じように安堵の息をつく。


「ま、ハグたんムスターの土壇場の活躍のおかげで何とかなったことだし、面倒にならない内にちゃっちゃと帰ろうぜい?」

「一番面倒な貴様が言うことか」

「面倒くさいのはほんともうこりごりね」


 勝手に仕切り出したマサムネだが、様々な事態が起こり時間が経ちすぎてクロ達の怒りは平熱まで冷めていた。


 こうしてそれぞれが引き揚げる体勢になっていたその時。



「うわあああっ!! 誰か助けてくれえええっ!!」



 だいぶ遠くからだろうか、このダンジョンの北西方面から誰ぞやの悲鳴が鳴り響いたのだ。


「……聞いた? 今の」

「あっちは探索していない方面だが……我らの他にもプレイヤーがいたか」

「あばば、いるだけじゃなくて、まさかモンスターに襲われるんじゃ……!?」


 VRMMOなのだからこの世界は4人きりの世界ではない。


 恐らくは――凶悪なモンスターに不意の襲撃を受けて助けを求めている声なのだろうと――4人とも推理が共通した。


「こいつはイベントのにおいがしますなぁ。助けたらなんかお礼くれる系のイベだったりして」

「ほんとあんたしっかりしてるわねぇ」

「は、早く行きましょう! 困ってる人は見捨てられないです!」


 ハグたんの可決により異論無し。彼女らとて、一度認知した面倒事を聞かなかったふりして引き返すほど薄情ではない。


 よって、4人は帰り際の最後のお節介とばかりに、声の主を大急ぎで救出するために駆けるのだった。


 その先にいる人物が、未だかつてないほど厄介な引き金を引いていたかを知る由もなく。

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