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18話 ハグたん、自爆

 さあさお立会い! 安心と信頼と勝利のお約束を機械仕掛けの運命のようになぞってくれる、レジェンダリーキャスト・主人公様の入場だ!

 並み居る対戦相手共をちぎっては投げちぎっては投げる、百戦百勝の大活躍を御覧じよ(盛大な前フリ)

 結果から言おう。


 ハグたんは惨敗した。


「やっぱり私はどんぐりだああっ……!」


 あられもない敗因を冒してしまい、ハグたんは自己卑下モードになってしまった。


 相手NPCの扱う木製のブーメランを爆発範囲外から投げられたが早いが、カムイ発動中の頭部に命中し派手に自爆。

 呆気なさすぎるあまり相手はバツの悪い顔で謝り倒していたのが、却ってハグたんも申し訳ない気持ちとさせていた。


 ついでに急いで観客席に駆けつけたユロクも、この1回戦敗退という予想だにしなかった結果を聞き、あんぐりと大口を開いて唖然。


 それでも大人らしく動揺を鎮め、控え室へと離れたハグたんに対し。


「最後まで諦めてはいかんぞ」


 と、意味深な一言を残した。


 とっくに最後を迎えているハグたんには、考察するだけ悩みの種になることなど最早頭の中から除外されている。



「いやぁ負けた負けた! ウチには主人公補正が舞い降りなかったかぁ」


 その隣に座るマサムネは、第2回戦で無念の敗北を喫していた。


「えっと、なんでそんなに落ち込んでないんですか」

「ウチ落ち込むよりも悔しがるタイプだし。でもまあ1回戦は実力じゃなくて不戦勝で進んだんだし、こんなもんかなって」


 そう実力を精一杯発揮した結果を甘んじて受け入れていた。

 不正で敗北しかけた1回戦があったために、心が割れなかったのもあるだろう。


 そんなマサムネの隣に座る者はもう1人。


「それにしてもクーちゃんは一番結果出せたよね。3回戦まで勝ち進んじゃったんだから」

「知を出し尽くす接戦ではあった。だがそこで、我に微笑みし勝利の悪魔に見放されてしまったがな」

「わぁすごいです。クロさんは3回戦負け……」


 羨望の眼差しで見つめ、しかし改めてになって全員の結果を整理してみると。


「って私達、全滅してるッ!!」


 試合前あれだけお互いマッチする想像を語り明かしながら、1ミリも近づけなかった現実。

 ハグたんは落胆のあまり、両手を地についてノリツッコミをするほど参っていた。


「よっしゃ! ウチらで負けっ娘三義姉妹を結成しよーぜ。ウチら生まれし日は違えど、負ける時は同じ〜」

「負ける時すら別々でしたよね!?」


 マサムネなりにふざけているのか慰めているのか。三義姉妹の末っ子ポジションはツッコミも投げやりだ。


「勝敗は兵家の常だ。闇の海底に沈みきった現在よりも、次なる機会の訪れを見逃さないために未来を見据えよ」

「とほほ……そうですよねクロさん。はぁ、優勝したかったなぁ……」


 薄々優勝を目指していたことを自覚したハグたんは、未練を払拭する思考へと切り替えようとした。


 そんな中、ハグたんに1つの報が舞い込む。


「1回戦で敗退した選手は、係員の指示に沿って別室へと移動して下さい」


 そう従業員の女性NPCが、バトルフィールドとは別の通路に繋がる扉の前に立ったのだ。


「えっえっ? 私、行ってきた方がいいんでしょうか?」

「フッ、恐らく罠ではないだろうが、自分で決めるべき選択だな」

「行っちゃえ行っちゃえ! もしかして、行った先で敗者復活戦でも始まったりして?」


 マサムネが都合のいい希望的観測でからかい、これにはハグたんも「そんな訳が……」と消極的になりながら最終的に別室へと行ったものの。


「お集まりの皆様には、これより敗者復活戦を執り行って頂きます」

「マサムネさんの言う通りだったぁ!?」


 別室に到着したハグたんは思わず驚愕。


 同時に、これにまつわる意味深な言葉を思い出す。


「あ……もしかしてユロクさんが言ってたことって」


 人質救出の件の恩義から裏から根回ししのだと思い込んだハグたんだったが、流石にユロクといえどもそこまで操れるほどの権限はない。


 ただ、このことをユロクは仄めかしたことについては誤解はない。8試合同時進行するほどフリーダムなこの大会、こうしたサプライズが時折用意されていることは、数々のトーナメントを見聞き戦った本人の経験則に依る。


「おいおいまさか、こんな狭っ苦しいとこで、しかもこの人数でバトルロイヤルしろってぇのか?」


 前にいる男性プレイヤーが質問の答えを要求したが。


「説明は後程。まずは、復活者を選別するための特別なバトルフィールドへ、皆様を転送致します」

「転送? のわっ!」


 所狭しと集まった1回戦敗退者達は青白い光に包まれ、体がふわっと浮かび上がった感覚に身を委ねた。


「……ここは?」


 両目が認識した場所は、コロシアムどころか第二の街さえ影も形もない野外。

 やはり晴天で、復活どころか敗者ならぬ死者の世界とでも錯覚しそうなほどに、異様にのどかな空気感である。


『1回戦敗退となった32名……1人違反者があったので31名でしたね。こちらが、決勝進出の切符を手にするための試練となります』


 そうアナウンスが流れるや否や、目の前の草原にいきなり延々と続く落とし穴が開く。どこへ続いているのか、あるいはどこにも続いていないのか不明なほど深く真っ暗だ。


 また同時に現れたものは、人間1人分の横幅をもつガラスの道が穴の上へと続き、その道中では巨大な木製の振り子がゆっくりと揺れ、またその次にはバーナーの炎が横から噴射されたり……と、計9つの多種多様な障害物が召喚。


 最後にそのガラスの道の最奥には、橙色のゴールフラッグが突き立っていたのだ。


「なんだぁ? バラエティ番組ごっこでもすんのかこりゃ?」

「いやそれよりも、決勝進出だと!?」

「おおやべぇ、一発逆転の試練にしては燃え上がらせてくれるじゃないの」

「なんか、恐いです……」


 転送されてきた多くのプレイヤーもNPCも、思い思いの好戦的な反応を示す。

 ただしアスレチックなどと縁のない一生を過ごしてきたハグたんにとっては、未知という恐怖でしかなかったが。


『これより始まる敗者復活戦のタイトルは「障害物戦争」。制限時間は20分、ルールは何でも有り。この道のりに設置されし10の試練を乗り越えゴールフラッグを最初に触った選手、または最後に生き残っていた選手1人だけが決勝戦進出となります』


 ルール説明が大雑把に流れ、2つの勝利条件が明示され、ひとまず納得した大人の選手達と未だ困惑の渦中にあるただ1人子供のハグたん選手。


『1/31の狭き門をくぐり抜けるのは果たしてどの選手か! それでは、試練開始(レディゴー)!』

「ケッケッケ! ノロマ共お先ぃ!」


 号と共に先陣を切ってガラスの道を恐れもせず走る小男。

 その道幅は2人も通れない。故に他の選手は後塵を拝するしかない。


「くっそ出遅れた! 俺も早く行くしか!」

「なぁお前、ちょっと様子見とこうぜ……」

「絶対なんかあるわこれ……。なんでかわかんねぇけど試練が1つ足りねぇしよ……」

「人生何事も焦ったら負けよ。な、嬢ちゃん?」

「あっはい」


 得体のしれない何かを感じとった冷静な30人は、ゴールへと果敢に突き進む小男の見物を決め込んだ。


 その小男は、最初の試練である振り子へとたどり着いていた。

 木製の巨大な球体が左右に揺れ、選手を奈落へ突き落とす仕掛け。だが体感5秒も振り子は道から離れている時間が生じるほどに、揺れゆく動きがスロウリー。


「これが試練ってか? チョロすぎるぜ」


 球体が左端へ停止した瞬間を見計らってダッシュ。


 まあ揺れの鈍すぎる木塊など子供でも突破は容易い。まだまだ最初の関門なのだからこんなものだろうと、見物していた30人は高を括っていた。


 ところが、これから彼らは、この敗者復活戦の恐るべき仕掛けに直面することとなる。


「うきゃ!? んなっ!?」


 何の前兆もなく、信じられないほどの勢いで振り子がいきなり加速。

 ギュンと風を薙ぐ音と共に、小男を10メートル横へと一気に突き飛ばしたのだ。


「うっうわああああああっ!!」


 宙に放り出された小男は人柱の役割をまともに達成せず、穴の底へと落下しあえなく最初の脱落者となってしまった。



 スタート地点に残された彼らは、その規則性から逸した動きの振り子に明確な意思を感じとった。


 お前らを穴の中ではなく、恐怖のどん底に突き落とさんとする『殺意』を。


「「「……無理じゃね?」」」


 選手全員の顔が真っ青となる。


 肝の座った大人でさえこの反応、ハグたんに至っては全身が真っ白の砂の山とでも比喩すべき状態と化していた。

 次回は明日

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