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83.狩猟大会のパートナー

 そして、狩猟大会の参加者締切が近づいてきたある日のこと。ラウルが訪ねてきた。

 式典以来に会うことになる。


「やぁ、リゼ」

「ラウル様、お久しぶりです」

「アンドレ王子のお披露目会以来だね。あの時は自分でも思い切ったことをしたと思うよ」

「あの日は……驚いてしまいました」

「ライバルが強敵だからね。流石にこのタイミングしかないと思って。負けていられないよ」


 まだ好意をストレートに向けられることに慣れていないリゼはうつむくしかない。また、こういう話は、どのように立ち振る舞えばよいのか分からないため、「あはは」と乾いた笑いでごまかすことにする。

 目線を合わせないリゼをしばらく見つめていたラウルは本題に入る。

 

「話は変わるけど、狩猟大会が開催されるんだってね。参加者は十二歳かつ招待を受けた貴族のみということで、僕には招待状が来なかったから残念だよ。まあ、仕方ないんだけどね。第一騎士団は警備にあたる必要があって、父上の補佐役として色々と学ばなければならないんだ。リゼは招待されたかな?」

「ご苦労さまです……。一応、参加はしようと思うのですが、ソロで参加するか、誰かと参加するか考えているところです」

「誘いは受けたの?」

「はい。ジェレミーとアンドレからです……」


 あれからアンドレは何度か尋ねてきて、可能であれば自分と組んでほしいとお願いされていた。こういう流れにまさか巻き込まれるとは数ヶ月前は思っていなかったので、複雑な気分だ。


「あー、まあそうなるだろうね……でも一人しか選べないんだよね?」

「そうです。被った場合は他の相手を見つけるようにということになっているみたいです。ジェレミーからはおそらくアンドレと被るので誰か探しておいた方が良いかもと話がありました」

「そうか。一応、王からのお達しで王子のパートナーが被る場合は、王子たちは他の人を見つけることになる、という話があったという噂は流れているが、本当だったんだね。しかし僕が参加できれば良かったんだけどね。こう見えて狩猟大会は得意なんだ。たまに開催されるから参加してたよ」


 ラウルは残念そうに話す。それに何度か狩猟大会の経験があるようだ。


「ラウル様が剣術をお得意だったのはもしかして……?」

「そういうこと。剣の腕を試す一つの機会だからね。父が好きでよく参加してたんだ。色々と教えてあげられるよ」

「是非お願いしたいです」


 ラウルに狩猟大会についてレクチャーを受けることになり、少しばかりその話でラウルと盛り上がっていると思わぬ訪問者が現れる。


「こんにちは。リゼにラウル」

「あれ!? エル、王都にいらしていたんですね?」

「やぁ。アンドレ王子の式典ではありがとう。エル」


 エリアスが訪ねてきて挨拶を済ませる。メッセージウィンドウでメッセージを送って来なかったのは、驚かせたかったというのもあるのかもしれない。

 ラウルとエリアスは同じ中立派であるため、仲良くなったようで、以前よりも親しげな様子だ。


「実は狩猟大会に参加しようと王都まで来たのです。ラウルさんとも会えて嬉しいです」

「お二人は仲良くなられたのですか?」

「実はそうなんだ。同じ中立派だしね」

「そういえばお二人がお話しているのを式典でお見かけしました」

「リゼの話で盛り上がりましたよ」


 リゼは(あの時、私のことを話していたのね……)と、苦笑する。


「そうなのですか……」

「共通の話題だしね」

「それで本題なのですが、一緒に出ませんか、狩猟大会」


 唐突であるが、エリアスも狩猟大会に招待されたということで誘ってきた。訪ねてきた時点で要件は狩猟大会であろうと思っていたリゼは少し考える。


(エルにもらったブレスレッドのおかげで、ダンジョンでモンスターと優位に戦えた。これがなかったらメリサンドを倒せなかったかもしれないからお礼をしないと。エルにお礼を出来る機会って限られている気がするし……エルと参加で!)


「……わかりました。私でよければ是非お願いします!」

「良いのですか?」


 エリアスは興奮気味に聞き返してくる。ダメ元で、当たって砕けろの精神でやってきたのかもしれない。目を輝かせている。


「えっと……はい! 是非お願いします。そんなに喜んでいただけるとは……」

「断られると思っていましたのでびっくりです。てっきりアンドレ王子と参加するのが既定路線かと思いましたよ。式典のパートナーでしたし、告白もされていましたしね……」


 確かにあの会場で告白されて、ダンスの相手を務めたとなるとそのようにみられても致し方あるまい。

 この国の文化的にはそのようにみられるわけだ。王子がリゼを誘った場合のルールについては知らなかったらしい。


「エルからもこの反応ということで……やっぱりそういう風に見られているのですね……」

「古い慣習みたいなものだからあまり気にする必要はないと思うけど、誰かしらと婚約するまではお披露目会のパートナーと何かしらの行事は参加する……という、そういう捉え方をされると思うよ。基本はダンスパーティーだけど、その他の行事も場合によってはね。今回の狩猟大会は二名で参加できるからそういう目で見られるだろうね」


 ラウルが念のため説明してくれる。やはり王国ではそのように見られるらしい。

 リゼはふと、そういえば聞いておこうかと思いたったことがある。


「そういえばなのですが……エルやラウル様もそういう形で捉えられるお相手がいるのですよね?」

「いや、僕の場合は相手が婚約をしたから、そうは見られないかな」

「僕の時は実は……王国の風習にならったお披露目会をやらなかったんですよ。なので、相手そのものがいないです」


 ラウルは相手が婚約したことによって、そういう相手がおらず、エリアスにいたっては相手そのものがいない。このように、相手が固定されていないケースもあるようで、勉強になる。


「そうなのですね。私のお披露目会ではパートナーとなる方がいて、さらにアンドレのときに私がパートナーをつとめてしまったのですが、良かったのでしょうか……」

「うーん、リゼのパートナーをつとめた人からすると面白くないかもしれないね。とくに風習を大事にする場合はね」

「何か謝罪したりした方が良いのでしょうか……。あと、誰かと婚約するまで……世間の目としては私の相手として、その方とアンドレのどちらが優先されるのでしょうか……」

「一応、手紙で事の経緯は説明しておいた方が良いかもね。ちなみにどう考えてもアンドレ王子が優先されるだろうと思う。王族から婚約の申し出があれば、そっちが優先されるよ。いま貴族社会ではお披露目会、いや式典での公開告白もあり、アンドレ王子の相手はランドル伯爵令嬢というのが常識になっているしね。アンドレ王子が参加する狩猟大会やダンスパーティーではまず声がかかると思うよ。ただ、ちなみにだけど、今回の狩猟大会は例の陛下が決めたルールによって、アンドレ王子の相手が他の人でも驚きはされないと思う。とはいえ、今後、イベントがある度に確実にアンドレ王子の相手として扱われるだろうね」


 リゼはというと、お披露目会で相手をつとめたマッケンジー伯爵令息と出来る限り関わりたくないため、今回のアンドレの騒動で相手が気分を害していないのか気になるのであった。彼は過激で危険な印象があるため、気分を害していて何か言われたり絡まれるのは避けたい。〈知識〉では、エリアナの命令であったとはいえ、それなりにえげつないことをやらかしているため、危険人物なのだ。


「おそらくダンスパーティーでは今回のように王子たちの申し込みが重複した場合は他の人を選ぶこと……なんてことにはならないでしょうから、きっとアンドレ王子とリゼが踊ることになりますよね。そう考えると、今回の僕は運が良いのかもしれません」

「そう思うよ、エル。君にとってはチャンスだ。僕もそういうチャンスが来ることを願っているよ」

「燃えてきました。優勝しないと……」


 二人が真剣な表情で話し合う中、リゼはというと心配事を考えていた。


(ダニー=レグ・マッケンジーには手紙を出しておいたほうが良いのかな。一応、お父様に確認してみましょう。恨まれていたりしたら怖い……危険人物かもしれないから穏便に済ませておかないと)


 結論としてリゼは念のため、手紙を出して様子を見てみようと考えるのだった。

 こうして、狩猟大会にはエリアスと参加することに決まった。


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