191.女神の祝福
効果範囲について神器と念話することにした。
(あの、神器さん。女神の祝福って魔法を無効化するみたいですけれど、これってどういう効果で有効範囲はどこまでなのですか?)
瞬時に神器が回答してくれる。
『聖属性の会得者は基本魔法属性である、土、風、火、水、光、闇魔法に対して耐性ではなく、無効化します。これはマスターがいま脳内で考えられている通りです。例えば、ロックショットで攻撃された場合、岩が飛んできますが、マスターの前で消滅します。破裂するなどではなく、消滅します。マナが分解されるためです。次に、有効範囲はマスターがこの加護を会得した場合、周囲二メートル程度が対象です。ただし、有効範囲はあまり気にしなくてもよいかもしれません。魔法はどの角度から打たれてもマスターを中心とした二メートルのところで完全に消滅します』
さらにリゼは(私の周りの二メートルのところで魔法が消滅するのは分かりました。味方の魔法も打ち消してしまいますか?)と確認してみた。すると神器が回答をしてくれる。
『基本的に魔法の無効化は自動で行われますが、味方と考える人物の魔法は意識することで無効化しません。なお、敵対勢力と考える人物の魔法は意識せずとも無効化します』
リゼは(ありがとうございます。転移石の起動やスキルなどに対しては有効でしょうか? 水を出したりできるスキルがあるので気になっています)と確認することにした。
『転移石の起動は無効化出来ますが、スキルは無効化出来ません』
スキルは無効化出来ないと知ったリゼは唐突だが、アイテムボックスから日記を取り出した。そしてメモを見てみる。以前にメモをしたものだ。リゼの記憶が正しければ、アンドレが公開告白してきた少し後に『女神の祝福』についての考えをメモしたものだ。
『女神の祝福は強すぎるが、会得するには聖女である必要がある。その代わり、聖女だとしたら、ゼフティア王国の管理下に置かれてしまうが、人生を賭ける代償に絶対に魔法攻撃に対しては安泰ということに。しかし、氷属性や雷属性の攻撃は当たるし、剣などの物理攻撃も聖女に対しては有効打になる』
聖属性を会得しても、ゼフティアの管理下には置かれないとヘルマンよりお墨付きをもらっているし、もはや悩む必要はない。交換を実行する。ダンジョン攻略などで魔法を気にせずに突き進めるためだ。上級魔法なども怖くはない。
(とはいえ、魔法属性として認識されないスキルは気をつける必要があるから万能というわけではないよね。例えば、メリサンドが使ってきた、水を周囲に放出するあれとかは魔法ではなくスキル。結局、戦闘ウィンドウで見て、スキルを持っている場合は、むやみに突き進んだりせずに、いつも通り警戒を重ねることになりそうね)
続いて、スキル交換画面を見てみることにした。
【スキル交換画面】こちらはスキル交換画面です。ポイントを消費してお好きなスキルを獲得することが出来ます。
【レイン・ショット(ランス)】100000000
【アブソルーテリー・シールド(シールド)】250000000
【八連斬り(ソード)】10000000
【デタランスソード(ソード)】8000000
【スキル・エクソシスト】200000000
【トモハーケン(アックス)】100000000
【グラース・エクレール(ソード)(固有)】10000000
これまた新しいスキルが追加されており、(グラース・エクレールって固有スキルじゃない! なんだろう?)と詳細を確認することにする。
『グラース・エクレール (ソード)(固有) 備考:剣に氷を宿した疾風迅雷の十連撃。繰り出される剣筋は光り輝き相手の視界妨害が可能』
明らかに強そうであるし、わざわざ固有スキルとして氷属性魔法を連想させるものを交換画面に追加するというのは大地の神ルークの遊び心かもしれない。
(なんていうか、ルーク様がちらついてしまう。これ、交換したら良いよというようなご意志を感じる……! しかも強さのわりにポイントが安い気がする。これは確実に交換ね……続いて魔法交換画面かな)
魔法交換画面を表示する。
【魔法交換画面】こちらは魔法交換画面です。ポイントを消費してお好きな魔法を獲得することが出来ます。
【ライトニングトルネード(光)】8000000
この魔法だが、ずっと放置してきたため、そろそろ交換しようかとリゼは決意する。
(これはリアに付与しようかな。リアも強力な魔法を使えたほうが良いはずよね)
リゼは今後を見据えて交換を行った。そしてステータスウィンドウをチェックする。
【名前】リゼ=プリムローズ・ランドル
【別称】フォルティア
【性別】女
【年齢】十二才
【レベル】13
【職業】侯爵令嬢(ゼフティア王国)、子爵(ブルガテド帝国)
【属性】風属性、氷属性、無属性、聖属性
【称号】運命の開拓者、聖女
【加護】大地の神ルークの祝福(大)、芸術の神ミカルの祝福(大)、武の神ラグナルの祝福(超)、叡智の神アリオンの祝福(小)、水の加護、土の加護、風の加護、火の加護、ブリザード・エスポワール、人魚の祈り、竜羽の盾、ガルムの目、聖女の加護、女神の祝福
【スキル】ルーン解読(固有)、毒耐性(レベル2)、衝撃耐性(レベル2)、毒検知、燕返し、マジックキャンセル、銀糸、火傷耐性(レベル2)、ソードゲネシス、モンスターテイム、アビザル・サンクチュアリ、ウムブラ・ネビュラ、ルミナス・イグニス、グラース・エクレール(固有)
【状態】健康
【所持金】270120000エレス
【ポイント】2066950000
【メッセージ】「グラース・エクレール(固有)を会得しました、ライトニングトルネードを会得し、譲渡しました、女神の祝福を会得しました」
リゼは満足げに紅茶を一口飲んだ。
(色々と、最初の頃から比べるとポイントも潤沢にあるし、スキルや加護も充実してきた。まだ数ヶ月しか経っていないのだけれど、ポイントを節約しつつ、頑張ったと思う。でも、あの必死さがあったからこそ、剣もそれなりに使えるようになったし、魔法も良い感じになってきた。この調子で試練に備えていきましょう……!)
かなり満足した気分になりつつ、アイシャと会話を楽しみ、喫茶店を出て町を散策することにする。帝国の学院に行けばしばらく見られない光景であるため、目に焼き付けておこうということでアイシャと歩くことにした。フォンゼルは護衛として同行してくれるが、その他の騎士は平民に扮して散らばっている。
「この風景ともしばらくお別れなのね」
「そうですね。そう簡単に行き来できるものでもないですしね」
流石に何度も行き来をしていては授業や剣術、そして魔法の練習に影響が出る。そのため、必要最低限の機会でしか王国に戻ってくることはなさそうだ。
「あっちで頑張るって決めたから、戻ってくるのはイベントの時になるかも。アンドレの相手を務める場合には戻ってくることになるのかな?」
「おそらくはそうなるのではないでしょうか? アンドレ王子のダンスの相手はお嬢様しかいないわけですしね。しかし、帝国はスケールが違いすぎますから、あっちでしばらく暮らしていたら色々とこの風景も変わって見えるかもしれませんね。あ、お嬢様……あちらを」
「え?」
アイシャが目線を向けた方向を見ると、そこには貴金属、高価な服などを売却しているエリアナと元バルニエ公爵夫人がいたのだった。




