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173.狩猟大会を経て

 会場の奥でゼフティア王とヒソヒソと話しているヘルマンにお辞儀をしながらリゼは近づく。


「陛下、先程はありがとうございました。ヘルマン様、お待たせしてしまい、申し訳ありません」

「ふむ、リゼよ。ちょうどいまゼフティア王と少しばかり話をしていたのだ。今回、カルポリーニ子爵は爵位を与えられてリゼは何もなかったからな、アンドレの命をまたしても救ってもらったこと、帝国が補填しよう」

「補填、ですかっ!? まったく気にしていませんので補填は……気にしないでください。お気遣いありがとうございます……!」


 リゼはこれ以上何かをしてもらうのも色々と申し訳ないのでそれとなく辞退することを匂わせた。


(むしろ爵位よりも、禁書庫や宝物庫に入れるのが楽しみ! それに帝国の補填は……恐れ多すぎる)


 ヘルマンはリゼの反応を予期していたのか、盛大に笑った。 


「そう出てくるとは思っておった。だがな、ブルガテド帝国ランドル子爵よ」

「はい……」


 ヘルマンは証書のような紙を取り出した。紙まで用意しているとなると、おそらくは帝国の皇帝も了承済みで辞退することなどは不可能だろうと察した。ヘルマンは厳かに読み上げた。


「わしの領地をさらに切り出して以前に与えた子爵領をさらに拡大とする。さらに帝都にも屋敷を与えよう。そして子爵位の序列を三つ格上げとする。これで帝国内の子爵の中で、序列第二位となった。おぬしに言いたいことは一つ、領地民と早く会ってやることだ。楽しみにしているぞ」

「ご配慮、ありがとうございます。そうですよね……皆さんにご挨拶、必要ですものね……近々行きます」


 そろそろ帝国の領地に行かないとまずいということはリゼ自身も感じていた。


「それと……これはまた別途、手紙で教えるとしよう」

「えっと……? 承知しました」

「はっはっはっは……きっと手紙を見たら喜ぶと思うぞ」


 リゼは(なにかな……?)と疑問に思ってしまうが、きっとまだ何かあるのだろう。

 今回の一件でリゼが未だ一度も行ったことがない帝国の領地がさらに拡大されたのだった。北方未開地も領地であることを考えると広大な領地を得ていることになる。何かしらの有効活用が必要かもしれないと考えるのだった。

 その後、エリアスはテレーゼや貴族に囲まれており、近づけなさそうである。ローラたちもまだその場に残っていたが、知らない人が大勢いるため、合流はやめておくことにした。少しお腹も空いたため、ケーキを一口いただいたところで、アンドレがやってきた。


「お姫様、お一人では危ないよ!」

「アンドレ、どうしましたか?」


 いつの間にか近くに来ていたアンドレに驚きつつも、危ないと聞いて、リゼは以前に毒入りのミネラルウォーターを渡されたことを思い返しながら聞き返した。


「話しかけようとする男たちがどう見ても五人は確認できたからね。急いできたよ」

「そうなのですか!? 全然気づきませんでした……」

「私とリゼが正式にまだ婚約しているわけではないというのはバレているからね。虎視眈々と狙っている奴らがいるようで、困ったものだよ。だからこうして、警戒しているってわけ」

「そういうことですか……」


 いつの間にか肩を抱かれており、だいぶ距離感が近いところに立って周りを見つめるアンドレによって、話しかけてくる人物は出てこなかった。


「警戒するアンドレ、すごく目が険しいですよ」

「男には譲れないときがあるものだよ。そういえば、リゼ、第一騎士団の騎士を治療したのかな? 魔法で。ちょっとした噂になっていて、聖女疑惑が再燃しているみたいだね」

「はい、しましたね。騎士の方々がとても頑張っていらっしゃって、そのありがたさを色々と考えさせられましたし、なんとかしたいなと。もしかすると、広まってしまったのかもしれないですね……」

「なるほどね。フォルティア様は聖女で間違いないという話になっているみたい」


 リゼとしては困ったものだが、フォルティアという名前を神から授かった人だということで特別視する人々が一定数はいる。そうしたフォルティア問題で少し慣れてきてしまっているため、あまり深くは気にしないことにした。

 

「それにしても、リゼにあの場で告白しておいてよかったよ。あれのおかげで一応は王子が好きな人に手を出したら色々とまずいということで、浮ついた者たちはリゼに近づくのをやめるだろうからね」

「あの時は本当に驚いてしまいました。話しかけてくる人はいないのですが、手紙とかは来ているみたいです。お父様が読んで私に見せるか見せないかを判断してくださっておりまして、今のところ一通も私のところまで来ていないです……縁談の話以外にもパーティーの誘いなどもあるようですね」

「そうか。それはランドル侯爵に感謝だな……」


 それから楽しい話をしようということで、最近行っている練習について聞かせてくれた。エリアスが武器の展示イベントに連れて行ってくれたときもそうであるが、完全にその手の話を喜ぶと認識されてしまっているらしい。

 しばらく話をしたところで、アンドレは貴族と話さないといけないようで、エリアスのところまで送ってくれた。アンドレはエリアスに耳打ちするとエリアスは頷いていた。なお、その時はもうエリアスとローラたち以外はおらず、安心した。

 その後、エリアスたちと少し話をしたところで、宝物庫と禁書庫には三日後に入ることになったとゼフティア王の配下より連絡を受ける。パーティーは終了となり、リゼたちは帰路につくことにした。

 なお、リチャードは北方未開地へと終日行っており本日は不参加であった。

 

 こうしてダンジョン以来に波乱に満ちた狩猟大会は完全に終了した。

 

 狩猟大会の開催が発表されてから、エリアスやアイシャとダンジョン攻略、北方未開地への転移、リアをテイム、神器の獲得、リチャードとの出会い、狩猟大会の暗殺未遂事件、エリアスの誓い、王妃の過去と今、アリオンによる神器のアップグレード、魔法の生成、聖属性の会得、バルニエ公爵の裁判、エリアナとルイの婚約破棄などなど、様々なことがあり、色々なことを知ることが出来た。


 帰りの馬車で父であるランドル侯爵から「リゼのおかげで侯爵か。我が家系の歴史として後世に名を残すことになるね。ありがとう」と喜んでくれた。リゼは家族と一通り話したところで、窓から外を見ながら思う。


(狩猟大会の前後に本当に色々なことが起きた。急成長の期間だったかも。私としては……ヘルマン様のお話は気になるよね。何か、私が喜ぶことを手紙で知らせていただけるということみたいよね。楽しみ。あと、久々にダニーと遭遇したけど、ちょっと怖かった……。私に興味があるみたいだけれど、興味を失ってくれないかな……。さて、今後の方針としてはポイント回復をする、試練に立ち向かえるように鍛える、仲間を増やす、色々とやることが山積みなのだけれど、頑張っていきましょう。まずは領地には一度行ってみないと!)


 今後起きるであろう神々が話していた何かについては不安もある。しかし、着実に仲間が増えており、希望もある。この狩猟大会前後の期間で、アイシャ、リア、エリアスは一緒に戦ってくれると言ってくれており、心強いと感じていた。また、エリアナとルイが婚約破棄になったことで、エリアナがレイラをいじめたり、敵対することになったリゼに何かを出来るような状態ではなくなって、そこも安心したリゼだ。


 やらなければならないことは山積みである。そして、ブルガテド帝国にある自身の領地にはそろそろ足を踏み入れるべきだとも考えている。

 とにかく今後も頑張っていこうと心に誓ったリゼなのであった。


後書きを書き忘れていたので追記します。

長く続いた本章ですが本話にて完結です。

そこそこ長い章になりましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。


明日からは新しい章に入ります!

引き続き、宜しくお願いします!

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