161.核の効果
ここでふとラインナップにあるスキル・エクソシストについての説明を再度見てみることにした。
『スキル・エクソシスト 備考:三十メートル以内にいる相手のスキル発動を一定時間無効化できます。無効時間は三十秒です』
続いてアイシャからコピーさせてもらったマジックキャンセルの詳細も確認する。
『マジックキャンセル 備考:三十メートル以内の魔法を一度完全に無効化します。再発動には時間を要します』
リゼとしては(マジックキャンセルをスキル・エクソシストみたいに一定時間無効化出来るようにしたいかも)と考えた。可能かどうかと必要なポイント数を確認したところ、『製造画面と連携して調整が可能です。効果が大幅に向上するため、必要なポイントは一億ポイントです』と返答があった。
神器の機能で相手の魔法を弱体化できるため、すぐには必要ではないが、必要なポイント数はメモしておいた。
(ひとまず便利なことは分かった。でも本当に億単位でポイントが必要になってしまうから、頑張ってポイントを集めないと。それと日課として寝る前に便利な魔法とかスキルとか色々と考えてメモしておきましょう! 試練に対抗できるようなものを生成出来るかもしれない! きっと存在そのものを消滅させるとか、一撃で確実に相手を滅ぼせるとか、そういうのはルーク様的にダメなのだと思うのだけれど……仮にまたニーズヘッグみたいなモンスターと戦うことになって、そういう魔法が使えたら一瞬で終わってしまうし、調整が入るはず。でもちょっと便利なものとかであれば生成できるかもしれないから頑張って絞り出しましょう!)
アリオンのおかげでより便利になったリゼは毎日便利なものを考えてみることにするのだった。前回の試練は神からのテコ入れとしては、神器が支援アイテムとして投入されたはずであるが、使われたのは一つだけだった。逆に今回は前回の神器も入手すればいくつか使えるだろうし、色々なテコ入れをしてもらっている。リゼとしては(なぜサブキャラの私ばかりがこんなに色々と出来てしまうの?)と思ってしまうが何かしらの理由があるのだろう。
「ところでご主人様、結局マナの核とは何のこと?」
「魔法を発動するときに使われるみたい。数が多ければ魔法の威力や魔法の再詠唱時間の短縮とか、色々と強くなるみたいよ」
「ご主人様は何個あるの?」
「私はさっきニ個になったのよね。人間は最大で十個、モンスターは最大でニ十個が上限のようね。あ、そうだ。威力があがったのか見てみましょうか」
リゼはリアと共に練習場へと移動した。どれくらい威力があがったのか見てみるつもりだ。いまでも定期的に練習を始めたときのように、スノースピアの氷の粒がどこまで飛ぶかを計測している。氷属性魔法や風属性魔法の熟練度があがればあがるほど距離が伸びるわけだが、熟練度が八百を越えたあたりから飛距離の伸び率が悪くなってきていたのだ。よって、マナの核が増えたことによりどれくらい威力が向上したのかを調べてみようというわけだ。
「いまの私の風属性魔法の熟練度は……」
【属性熟練度】
『風属性(初級):0945/1000』
『氷属性(初級):0952/1000』
『無属性:0105/5000』
現在の熟練度を確認した。
「ほぼ初級魔法はカンストに近い状況ね。いまの飛距離はだいたい約三十メートル。これが伸びていれば、マナの核が増えることのありがたみを実感できるはずよね」
練習場は縦長であり、だいたい五十メートル程度の奥行きがある。リアが壁付近に立ち、合図をしてきた。
リゼは深呼吸をすると、魔法を発動する。
「スノースピア! エアースピア!」
瞬時に氷がリアの立っている方向に向けて勢いよく射出された。元々突風のようなそれなりに強い風が吹き荒れていたが、見るからに威力があがっていた。元々の威力であれば、人間に向けて打っても立っていることは出来るレベルであったが、おそらくマナの核が増えた今の威力は大人を吹き飛ばすくらいのことは出来るだろう。
リゼは威力に驚きつつも、リアが『すごい』と念話してきたので、リアのもとに駆け寄る。すると、壁にぶつかったようだ。それに、氷の粒もだいぶ大きなサイズになっていた。元々は七センチメートル程度の長さであったのだが、いまは十五センチメートル程度の長さになっていた。魔法を応用して粒を矢じりの形に変えればそれなりに威力のある魔法になりそうだ。
(全体的にニ倍くらいになっているみたいね。初級魔法でも魔法の種類によっては中級魔法のような威力、そして使い勝手になるかも。あれ、ということは、アブソリュートゼロなどを放ったらものすごい威力になっているのでは? ここでは試さないほうが良さそうね……)
ここでリアがマナの核がいくつなのか教えてほしいと言ってきたため、戦闘ウィンドウで確認してあげることにした。モンスターはマナの核の上限が二十だ。
【名前】アルプ(テイム済み)
【レベル】13
【ヒットポイント】295/295
【加護】ガルムの目
【スキル】なし
【武器】アルプの帽子
【魔法】フォーススリープ、トラウムアングリ
【共通ステータス】
【レベル上限】35
【魔法属性上限】該当なし
【核 (マナ)】2
【武術】189/1000
【魔法】341/1000
【体力】295/1000
【固有ステータス】
【別称】リア
【その他】専用アイテムによる形態変更
以前に見たときよりも細かい内容を確認できるようになっていた。人間にある名声などといったパラメータは存在せず異なっているが、だいたいは同じだった。おそらくはモンスターごとに異なるのだろうが、初級ダンジョンのボスモンスターであるリアには二つの核があるようだ。
「リアは二つみたいね」
「ありがとう、ご主人様」
この日はランドル伯爵家の騎士などを戦闘ウィンドウでこっそり見させてもらったが、マナの核は一つしかなかった。フォンゼルやアレクシスといったブルガテドからやってきてくれた人たちも一つだ。エリアスも一つであった。通常は一つらしい。
ダンジョン攻略はパーティーを組んでいくことになるが、マナの核が複数あるような強敵モンスターに通常の人間が一人で勝てるわけがないため、理にかなっているのだということを理解した。
夜、ベッドに寝ながら少し考え事をする。
(なんだか今日は色々とすごいことになってしまった。アリオン様の加護の効果については、確かにどうやって非表示のステータスを確認するのかなと思ったこともあったのだけれど……効果が付与されていなかったというのは予想外だった。でも、結果として神器が色々と出来るようになったし、私としてはとてもありがたいです。ありがとうございます、アリオン様……! ひとまずはゲートという転移魔法を生成してみたけれど、かなりのポイント数が必要になってしまうからあまり頻繁に生成は出来ないということが分かった。基本的には交換画面のラインナップから交換していけば生成のポイントがいらないし、活用していくべきよね。ポイント数を抑えつつ、本当に必要なものを生成してきましょう。ポイントの回復効率があがれば、色々と生成できるかもしれない。あと、神器さんにお願いすれば製造ウィンドウと連携して調整も実施してくれるのよね。私的にはデメリットが一切ないスキルであるソードゲネシスで射出する剣の数を増やしたいかな。このスキルって私の左右に二本の剣が現れて射出されるだけで、特に動作的な隙も生まれないし、気に入っているのよね)
リゼは基本的には交換画面のラインナップを活用することをベースとし、本当に必要なものを神器で生成していこうという方針を打ち立てるのだった。
そんなことを考えていると、いつの間にか眠りに落ちていた。
熟練度を正しい値に修正しました(2024/04/18)




