160.魔法の生成
神器からはチートではないと返答があったが、リゼは少しばかり引いてしまった。
嬉しいが、ちょっとした動揺がある。
(そうですか……それって、あの、生成したスキルなどについてですが、例えばですけど、他の人にも交換画面の機能で譲渡可能ですか? あと、エル、あ、エリアス・カルポリーニがリッジファンタジアで使っていたスキルである炎華斬などを生成して譲渡することなども出来るのでしょうか?)
炎華斬とはリッジファンタジアでエリアスが使っていたスキルで、周囲を火の海に変えるレアスキルだ。かなり強力で独立戦争でゼフティアの騎士相手に大いに有効であったスキルである。しかも、味方はその火のダメージを受けないという素晴らしい性能であった。レイラがいなければ、数の暴力で鎮圧されてしまったのかもしれないが、一人で複数人を相手にできる強いスキルであったはずであり、いまのエリアスがより高みを目指すに当たって有用であろう。
『生成が可能であり、譲渡も可能です。交換画面と連携しているため、譲渡も可能になっています』
どうやら可能らしく、リゼとしては少し嬉しくなった。
(そういうことなのね。つまり、ポイントを沢山稼ぐことで仲間を強化していけるということに。交換画面のラインナップにないスキルなども生成して仲間に付与できるなら、かなり柔軟に色々と付与できるし、試練に立ち向かえる気がしてきたかも! あ、リッジファンタジアにないスキルなども生成できるということで良いですよね?)
神器より『当然可能ですが、生成する際に大地の神ルーク様による検閲が行われるため、常軌を逸したものは却下される可能性があります。なお、炎華斬は元々この世界に存在するスキルなので名前だけでも生成が可能ですが、新たなスキルを作る際は具体的な内容の説明が必要となります』と返答があった。おそらくこの世界にないスキルなどが作成可能であり、ただし、先程の『先にお伝えしておきますが、時を止めたり、世界を破壊したり、一撃で必ず相手を倒すといったような魔法やスキルは確実に却下されます』という話にあったように、ルークなどの神として禁止としている系の生成は却下されるのだろう。
リゼとしてはだいたい出来ることを理解できた。
(強すぎるかも。ある意味でゲームマスター的な権限を手に入れたことに近い。この世界にないものも作れて、仲間に付与できるとなると……すごい。でも、きっと必要なポイントが桁違いなのでしょうね……。ポイントを効率的に稼ぐために北方未開地の鉱山を沢山探さないとないけないかも。さて、現状、スキルはスキルアブソーブでコピーできるし、魔法は神器に記録出来る。でも、加護はコピーしたりできなかったけれど、神器の機能で作って、交換画面に追加して、交換することが可能になったということよね。色々と夢が広がるかも)
物思いに耽っていると、『次の説明をしても宜しいでしょうか』と言ってきたので「お願いします」と返答した。
『続いて神器の盗難防止機能が追加されました。マスターの手から離れた場合、即座に所有者の元へと戻ります。また、そもそも窃盗しようとした場合、敵を無力化するために記録されている魔法で迎撃し、無力化します』
どうやら盗まれたりしても自分の元へと戻るようになったらしい。盗もうとしてくる輩が出てくる可能性があるため、非常に助かる機能だ。
『そして、製造ウィンドウにおいて出来ることは命じてくれれば代理で実行できます。既存のスキルや加護、武器の調整に関して代理実行します。続いて、ワールドマップウィンドウにおいて、メッセージウィンドウでやり取りが出来るようになっている人物の場所を検索することが出来ます。また、超上級ダンジョンの場所を示します』
わりとウィンドウシステム関連が便利になっているので、芸術の神ミカルとも調整をしてくれたのかもしれない。
『最後に、亜空間であるアイテムボックスに入れていた場合でもやり取りが出来るようになっているため、いつでも話しかけてください。マスターがつけているブローチにて中継することが出来るようにしましたので、ブローチをつけてさえいれば話せるようになっています』
念話を終えると神器は静かになった。
「なるほど……まあ、あれよね。わりと何でも出来る状態になってしまったということかな? ポイントが必要だとしても……ある程度何でも作れるようになったというのは大きいかも。あと、超上級ダンジョンの場所が分かって、ジェレミーからもらったこのブローチを介してアイテムボックスに入れていても会話できるようになったのね。さて、早速だけれど、作りたいもの……あるかなぁ。試しにリッジファンタジアで見たことがある系のものではなくて自分がほしいと思うものを作ってみようかな!」
しばらく考える。何をするにしてもポイントが重要になってくるため、無駄な出費を避けるようなものがないかという方向性で考えに考え込む。そして、一つ良いことを思いついた。
(神器さんへ。転移石が一千万ポイントで何個も買うとそれなりにポイント消費が激しくなってしまいます。効率化したいので、好きな場所に転移できる魔法を作れないでしょうか……。出来れば手を繋いだり触れたりしていたら他の人も転移出来ると嬉しいのですけれど……物も転移できると嬉しいです。便利だと思うのです。戦闘時に逃げることも出来ますし、狩猟大会のような状況で瀕死の状態の友人を保護することも出来ますし……)
わりとすぐに返答があるのかと思いきや、しばらく返答がなく一分後に返事があった。
『生成可能です。訪れたことがある場所へは思い浮かべれば転移可能です。訪れたことがない場所については一日に一回まで可能とします。ダンジョン内への転移は出来ません。ダンジョン内から外への転移は可能です。また、百メートル以内の近距離であれば訪れたことがなくても指定した方向に自由に転移可能です。無属性魔法として生成します。必要なポイント数は一億ポイントです。生成しますか?』
少し制限があるようであるが、転移石の個数をかなり節約できそうであるため、生成しておくことにする。今後、転移石を三十個買った場合、それだけで三億ポイントが必要になる。よって、一億ポイントなら安上がりである。神器より比較的すぐに『生成が完了しました』と返答があったのですぐに交換画面を開いた。
【魔法交換画面】こちらは魔法交換画面です。ポイントを消費してお好きな魔法を獲得することが出来ます。
【ライトニングトルネード(光)】18000000
【ゲート(無)】100000000
若干の手痛い出費であるが、便利であるためさらに一億ポイントを消費して交換しておく。今回の生成と交換でニ億ポイントを消費してしまった。だが、生存率を上げるのにはピッタリの魔法だ。
「えっと、ゲート!」
部屋の中でリアが寝転がっているソファの近くまで転移してみた。いきなりリゼが目の前に現れたのでリアは少し驚いて目を開けた。しばらく見つめ合うと、リアはまた目を閉じた。リアはとにかく動じない性格だ。
「こういう感じね。便利! でも運動不足になるのは避けたいからあまり多用しないようにしましょう。北方未開地でも出来る限り馬での移動にして……あれって結構運動になるのよね。姿勢を保たないといけないし。そうだ、エルにはお礼も兼ねて炎華斬をプレゼントしようかな。生成できますか?」
エリアスには前世の部屋でスマートフォンの画面より入手したアイテムなどをプレゼントしたが、他にも何か自分で考えたものをあげられないかと思っていたところだったのだ。
リゼは机に戻り、神器に話しかけた。神器はすぐに反応してきた。
『スキル炎華斬は上級ダンジョンで稀に手に入る聖遺物です。生成には五百万ポイントが必要です。生成しますか?』
現実的に手に入る可能性がある代物であるため安いのかもしれない。
「お願いします」
交換画面を即座に開く。
【スキル交換画面】こちらはスキル交換画面です。ポイントを消費してお好きなスキルを獲得することが出来ます。
【レイン・ショット(ランス)】100000000
【アブソルーテリー・シールド(シールド)】250000000
【八連斬り(ソード)】10000000
【デタランスソード(ソード)】8000000
【スキル・エクソシスト】200000000
【トモハーケン(アックス)】100000000
【炎華斬(ソード)】5000000
交換に必要なポイントも五百万ポイントでお得だ。即座に交換してエリアスへと付与した。もしかしたら将来的にエリアスが手に入れる可能性のある聖遺物かもしれないが、十二歳の今のうちから使えたほうが、きっと彼の成長に役立つ可能性が高い。交換して満足したリゼであった。




