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154.夢

 完全に夜であるが、大広間は魔法石のおかげでそれなりに明るかった。

 天井のシャンデリアや壁に魔法石を取り付けたことが大きいかもしれない。


「あれ、これは……城ですか?」

「そうですね。ここは離宮でして、ここを本拠地としています!」


 エリアスはキョロキョロとあたりを見渡していた。想像以上に大きな城だと感じているようである。

 それから外に出ると扉の脇にいる泥人形がエリアスを見てきたので、味方であることを伝えた。


「北ということだけあって、少し肌寒い感じですね。でも、静かでとても空気が澄んでいて、良いところだと思います」

「この大地も昔は人が住んでいて、栄えていて……でも試練があって、誰も人はいなくなってしまいました。詳細をお伝えしますね」


 リゼはニーズヘッグにまつわる話をエリアスに聞かせるのだった。流石にリチャードのことは本人了承を得られていないのであまり触れずに話したのだが、エリアスはリゼの話を聞きながら深刻そうに相槌を打ってきていた。


「なるほど。あの強力な泥人形が二万体いて、超上級ダンジョンをクリアできる大賢者に、ほぼ同等の強さを持つ皇子、それから皇帝や近衛兵で戦って……皇子の力でなんとか勝ったのですね。これは相当頑張ってレベル上げをしないといけないですね。魔法も早めに上級魔法を扱えるようにしないとならないということを理解しましたよ」


 かなり深刻な感想をエリアスが抱くかと思っていたが、相変わらず前向きさはブレなかった。

 どちらかというと(試練、どうすれば……)と、深刻に捉えていたリゼとしては、エリアスの前向きさを前になんだか元気にさせられるのだった。

 それから馬小屋などを見た。リアが餌やりやお世話をしてくれているため、状態が良さそうだ。

 それから少し散歩をした後、私室へと戻ってきた。転移石をアイテムボックスにしまうと、そろそろ寝る時間だ。


「それではリゼ、そろそろ寝ましょうか。本当はずっとこうして手を繋いでいたかったのですが、残念です」

「エル、気づいていてずっと離さなかったのですね……私、途中からどうすれば良いのか分からなくて緊張していました」

「意識してくれていたのですね。夜のデート、楽しかったです。また行きましょう。では、おやすみなさい」

「おやすみなさい!」


 エリアスはリゼに笑いかけると静かに扉を閉めて客室へと向かっていった。


(やっぱりエルって攻略キャラなのよね。さらっと……こう……何ていうか、恥ずかしくなってしまうようなことを言葉にしてくるし……)


 今日は修羅場を経験したが、エリアスが仲間になってくれた良い日にもなった。日記に一日の出来事を記すと、だいぶ遅くなってしまったが、お風呂に入る。アイシャが沸かしておいてくれたようで、まだ温かかった。液体の近くに置くと加熱する魔法石により温度が下がらないようにしてくれていたようだ。


「ダンジョン転移事件以来に、大変な日になったかも。でも、エルが私の話を信じてくれて、共に戦ってくれると言ってくれて嬉しかった。リッジファンタジアのエリアスはレイラと共に国の独立を勝ち取って前向きになったところでエンディングを迎えるのだけれど、戦争をしたことで少し達観したところもあったっけ。最後のスチルの表情からはそんな雰囲気を感じた気がする。対してエルはとても純粋な前向きさという感じよね。どんなときも前向きでいられるエルのこと、尊敬しちゃった……」


 疲れた後のお風呂は身体に染み渡った。しばらくその感覚を堪能し、お風呂から上がり、夜風を少し浴びるとベッドに入る。リゼとしては長い一日になった。

 眠る前に再度リッジファンタジアのエリアスルートといまのエルの違いについて考える。


「あれ、待って。エリアスルートって……確かグッドエンドが……」


 いつの間にか夢の中だった。

 

 見知らぬところであるが妙に懐かしさを覚える部屋にいた。なんとなくこれは夢だと頭では感じているが、興味津々に部屋を見渡してしまう。

 

(ここを私は知っている気がする……妙にリアリティのある夢ね。あれ、これって?)


 暗い部屋の中で明かりを発しているのはテレビの画面だ。リッジファンタジアのゲーム画面が映し出されている。とりあえず、ドア付近にある電気をつけてみた。普通に電気はついたのだが、ドアは開かなかった。そしてテレビの画面に集中してみる。


「君のおかげで僕は足を踏み外さずに済んだ。一方的な恨みで戦争なんて馬鹿げていると気付かされたよ。僕たちはゼフティアに手を差し伸べてもらったのにそれを無下にしようとしていたんだ。ありがとう、レイラ。この剣が血に染まる前に止めてくれて。レイラ、僕の命は君に捧げさせてほしい。僕は君を守る剣として生きていきたい」


 映し出されているのはエリアスだ。夕陽をバックに真剣な表情で話していたのだが、スチルの内容が移り変わった。エリアスは跪くと主人公であるレイラの手の甲にキスをした。


(今日のエルの言葉、このシーンと言葉が同じ……あの言葉を聞いたからこの夢を見ているのかも。これはエリアスルートのグッドエンドのシーンよね。グッドエンドの存在についてすっかり忘却していたけれど、いま思い出した。エリアスルートの戦争ルートはノーマルエンドで、戦争回避をしたのがグッドエンドだったのね。確かいくつかのフラグを経てこのエンドに辿り着けたはず。私に話してくれた言葉と被っているし、いまのエルはグッドエンドの状態に近いということよね)


 そして、部屋のものに干渉できるようなので、ゲーム機のボタンを押してみた。すると、カメラは空の方へと移っていき、最後にメッセージが表示された。


『どのような運命、試練が二人の前に立ち塞がっても協力して立ち向かっていくだろう』


 その後、エンディングが流れ始める。見覚えのあるスチルなどが表示されるので、(うわぁ、懐かしい……!)と思ってしまった。

 エンディングが終わるとタイトル画面が表示された。金色をベースとした背景にリッジファンダジアのロゴが表示され、メニューが出てくる。その後、テレビの横にあるタイマーがいきなり作動した。五分から時間が減り始める。


(一体……? 五分経ったら何か起こるのかな。えっと、リッジファンタジアは操作を受け付けなくなってしまったみたいね。であれば! 部屋を見てまわりましょう!)


 部屋を冷静に見渡すと淡い水色をベースとした部屋に仕上がっていた。カーテンやベッドなどがそういった色合いになっている。それなりに広いのか十畳くらいの部屋だ。

 白色のクローゼットを開けてみるが物珍しいものがあるわけではなかった。その横の棚にはアクリルスタンドやぬいぐるみが飾ってあり、ケースの中に缶バッジなどが並んでいる。また、描いたと思われる絵画が壁にかけてあった。

 そして、机の上を見ると、クロード・モネが描いた『雪のアムステルダム』と『睡蓮』のポストカードが飾ってあった。そして日記があり、ページをめくると絵が描いてあったりゲームの記録などが書いてある。しばらくその日記を眺めていた。

 それからもう一つの棚を見ると全部で二十八本のゲームが入れられていた、他にも本などがある。

 なんとなくゲームのタイトルを見ているとあることに気づいた。リッジファンタジアの続編なども全て棚に収まっていたのだ。タイマーを見ると残り二分となっている。

 急いで続編のパッケージを一つ手に取ってみた。これはおそらくファンディスクだろうか。ルイ王子が全面に描かれており、裏面を見るとキャラの立ち絵が並んでおり、上部に『ルイの真実が遂に明かされる』と書かれている。

 次のパッケージを手に取ろうとしたところ、机の上に置いてあったスマートフォンが光った。何かと手に取ってみると、アプリ版リッジファンタジアが起動されていた。

 メッセージに新着があるのでタップする。

 

『エリアスルートのグッドエンド条件の達成、おめでとうございます。記念にプレゼントを送ります』


 プレゼントとして表示されているのは『聖属性魔法、火属性魔法クラスアップアイテム、エリアス専用装備アイテム』だ。リゼは『受け取る』をタップしてみた。それからすぐに本棚に戻るとリッジファンタジアの続編のパッケージを見ようとする。見たいのはブルガテド帝国を舞台にしたリッジファンタジアIIとさらにリッジファンタジアを再編したと思われる続編だ。

 しかし、手を伸ばしたところでタイマーが鳴るのだった。

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