表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/879

145.状況の連絡

 歩きながらリチャードにメッセージを送る。


『問題発生です。なんとか倒しましたが、殺し屋みたいな人たちに襲われてしまいました。狙いは私ではなくアンドレですが……リチャードはどこに居ますか?』

『いま参加者の家族待機エリアに一緒にいますが、すぐに向かいますよ。無事で何よりです。フォンゼル殿にも伝えておきます』

『あ、無事であることをお父様たちにもお伝え下さい。たぶん、狩猟大会の参加者以外は会場に入れないのですよね。なので、待機エリアでお待ちいただければと!』


 リチャードとはすぐに連絡が取れ、伯爵たちに状況を伝えてもらうことにした。同じようにラウルとも連絡を取った。ラウルは父親であるドレ公爵と共に、警護に当たっているはずだ。


『ラウル様、お話は以上ですが問題は起きていないですか?』

『他には起きていないがすぐに父上に連絡する! いま少し離れた持ち場にいるから伝令を出すよ。リゼはとにかく早く本部のところまで戻ってきてくれ』

『宜しくお願いします。そのつもりです』


 ラウルは無事であり、他の場所でなにか起きている訳ではなさそうで安心するリゼだ。


(ジェレミーにも連絡しておかないと。狩猟大会に集中していて気づいてくれないかもしれないけれど!)


 リゼはジェレミーにも状況についてメッセージした。メッセージには「危険かもしれませんので、念のため本部に戻りましょう」という話もつけておいた。すぐに返信は来ないが、気付き次第、本部に戻ってくれるだろうと考えるのだった。ジェレミーは比較的、他の人たちと比べると返信が遅いため、いつものことだろうと考えた。


「それにしてもなかなか王族を狙うには絶好の機会だよな、今回の狩猟大会って。なぜ通常の狩猟大会のように騎士の帯同を許可しなかったのかわからんな。普通は護衛がすぐ近くにいるが、今回の狩猟大会ではそうはいかないもんな。危険極まりないだろ」

「確かにそうかもしれない。この案を立案した人物はこういうケースを考えていなかったのだと思う。この男たちが誰かはまったく分からないが、暗殺するのに絶好の機会だと考えたのだろう。これを教訓にしてとにかく警戒心を高めるよ。騎士がついてこれないような状況を作らないようにすることが大切だね」


 ロイドとアンドレの話を聞きながら心の中で(確かにどう考えても危険すぎよね……ゼフティアは平和が続いていて警戒心が薄いのかも。全体的に)と考えるのであった。

 

 ふとエリアスを見るとサイクロプスが持っていた盾を回収してきたようで背負っている。盾は思ったよりも小さく、エリアスが持ち帰れる代物だった。ふとサイクロプスをアイテムボックスに収納するということを忘れていたことを思い返すがいまは戻ることが優先だ。

 歩きながらリゼは戦った男が使っていた『ウムブラ・ネビュラ』という霧を発生させるスキルをスキルアブソーブでコピーする。


(よし、完了ね)


 どうやら霧に覆われてもスキルを発動した者は相手を捕捉できるようであるし、何かと便利そうだ。


 歩くこと十五分、開始地点が近づいてきた頃合いだ。唐突に女性の悲鳴が聞こえた。みんなで顔を見合わせる。

 なんとなく嫌な予感がした。


「いまのは……!?」

「リゼ、もしかして他にも何か……?」

「アンドレを開始地点までお願いします! リア!」

「分かった。護衛する」


 リゼはロイドやリアに素早く伝えると叫び声の方に走り出す。仮に他に何かがあるのであれば、犠牲者が出てしまうかもしれない。エリアスが即座に後に続いてきた。ロイドが後ろから「おい!」と叫ぶが走りながらウィンドウェアーを発動したリゼの姿はすぐに見えなくなった。

 エリアスはリゼを見失いそうになりながらなんとか踏み抜かれた草を見ながら追いかける。


「恐らく早く開始地点に戻って、この異変を運営に報告したほうが良いという意図があると思う……思います」

「しかし! リゼを追いかけないと!」


 アンドレはリアの話に心の中では同意しつつも、リゼを追いかけようと走り出したが、ロイドに止められた。


「待てって! あいつ、どう考えても俺たちよりも強いし、俺たちが向かったことでまたお前が狙われたりして守る対象が増えたら邪魔になるだけだろ! 冷静になれ! いまはこの事態を一秒でも早く伝えて騎士たちになんとかさせるんだ!」


 ロイドは説得を試みるがアンドレは振りほどこうと必死だ。仕方がないため、アンドレの腹に一撃を加えて気絶させると、「行くぞ! 捕虜も早く引き渡すぞ! リゼ嬢がいない今、こいつらが起きると厄介だ!」とリアに声をかけ、走り出すのだった。


 リゼは叫び声が聞こえた方向にとにかく急いでいた。エリアスが追いかけてきていることには気づいていない。全速力で走り続けるリゼだが、少し先に開けた場所が見えてきた。

 剣を打ち合う音が鳴り響いている。リゼは神器をアイテムボックスより取り出しながら開けた場所へと躍り出た。


 状況を見て、リゼはあっと息を飲む。そこにはあたふたとするオフェリーと傷つきながらも彼女を守りつつ戦っているジェレミーが居たのだった。

 リゼが動こうとした瞬間、ジェレミーは剣で切り裂かれ、足蹴にされるとオフェリーの近くまでふっ飛ばされ、地面に転がった。他にも敵がいるのか醜悪な笑い声が聞こえる。ジェレミーは足に矢が突き刺さり、胸あたりを切りつけられ、血が流れ出ていた。ジェレミーは目を見開きながらリゼに何かを口パクで伝えてすぐに意識を失うのだった。声にならない悲鳴を上げたリゼは目を見開き、魔法を発動した。


「アクアヴォルテックス!!!!」


 すると、ジェレミーを切りつけて笑みを浮かべていた男は竜巻に巻き込まれ、水で強打され続けると、地面に叩きつけられて動かなくなった。メリサンドの魔法を神器に記録しておいたのだ。

 ジェレミーの方を見ると、近くで呆然と立ち尽くすオフェリーを後ろから男が殴りつけ、ジェレミーに向かい剣を振り上げた。


「死ね!!」


 串刺しにするつもりだ。


「インフィニティシールド!」


 ジェレミーを囲い込むように結界を張ると、男の剣は結界に当たって跳ね返された。素早く駆け寄りながら「アイスランス!」と詠唱すると、男はバックステップを踏みながらサンドシールドで氷の槍を防ごうとするが、土の壁を突き破る。男はジャンプしてなんとか魔法を回避した。

 リゼはジェレミーの側まで到達すると体勢を立て直す男に手を向けた。無我夢中で思い浮かんだ魔法を発動する。


「クロニクル・オブ・ダークネス!」


 ベルトにさした短剣を引き抜き、投げつけようとしてきた男は漆黒の闇に包まれた。男の悲鳴が木霊する。神器に記録されていた魔法だが、闇の中で何が起きているのかは分からない。大賢者のメモによれば悪魔系のボスモンスターが使った魔法のようだ。攻撃力が高いと書かれていた魔法である。


 すると、背後にインフィニティシールドによる結界が展開された。何かを弾く音が聞こえたため、振り返るとどうやらリゼの頭に向けて矢を放たれたようだ。メリサンドから得た加護によって指定していた魔法が自動的に発動され、守られたようである。リゼが弓矢を持つ男に目を向けると、動揺したのか一歩後退した。殺せたと思いきやなぜか放った矢が何かに防がれ無傷であることに動揺してるようだ。

 そしてさらに側面から斧を持った敵が迫っているということを把握し、ウィンドプロテクションで防ごうと動きかけたところでその男は唐突に地面に倒れるのだった。

 追いついてきたエリアスが背後からスキルを当てたようだ。残る敵の方に剣を構えながら、エリアスが叫ぶ。


「させるか!! リゼ、遅くなって申し訳ないです!」

「助かりました!」


 エリアスは地面に倒れた男が持っていた斧を手の届かないところまで蹴飛ばした。


「お前たちのことは絶対に許しませんよ。彼女を殺そうとしたのなら僕は容赦しない」


 矢をリゼに放った男に対してエリアスは静かに呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 少し離れた持ち場にいつから伝令を出すよ。 いるから? [一言] これ発案者国王だっけ? うん、某大公が怒り狂うだろうな~どう言い訳するのかな〜? 警備任された人達責任問われるけどそ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ