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143.交渉決裂

 リゼは神器を素早く取り出して開いた。

 男たちは唐突にリゼが本のようなものを手にしたため、警戒を強める。


「その本はなんだ? どこから出した?」

「静かに。どうやら交渉決裂のようだな。では仕方があるまい」


 魔導書を見ても余裕さを感じるリーダーらしき男がゆっくり手をあげようとする。何かの合図だろう。

 ここは先手必勝だ。


「リア!」


 リゼはリアに合図した。すると、リゼたちの背後に居た男が崩れ落ちるのだった。

 男たちが反応する前にリゼは詠唱する。


「フォーススリープ!」


 左横にいる人物に向けてつぶやくと瞬時に神器のページがめくられると魔法陣が表示され、すぐさま魔法が発動した。魔法があたり、左横にいた男が崩れ落ちる。

 リゼは神の加護により、対象に手を向けなくても魔法を好きな方向へ射出できるため、完全に男は隙をつかれ避けることが出来なかった。

 それを見たリーダーの男は余裕がなくなったようで、表情を崩した。


「殺せ!」


 リーダーの男が叫ぶと、リーダー以外の残りの二人とサイクロプスが動き出した。リゼは再度フォーススリープを発動させる。神器はクールタイムなしで連発が可能だ。リアが魔法を再詠唱する前にリアにお願いしていた右横にいた男に魔法を命中させた。

 

 正面の男はサイクロプスよりも早く前進し、アンドレに向かって突き進んできている。

 リゼが結界で壁を作ると思い切りぶつかり、反動で後ろに倒れるのだった。


「銀糸!」


 リーダーの男に向けて糸を噴射する。リーダーの男は慣れた動作で盾にて防ぐと、盾についた糸を剣で断ち切り、リゼに向けて剣を向け距離をつめてくる。 


「フォーススリープ!」


 リゼの魔法を男は体をそらしてかわすと突き進んでくる。透明な魔法を避けるということはそれなりに感覚が良いのかもしれない。


「メッドドール! リア! サイクロプスをお願い!」

「分かった」


 泥人形を出現させると、リアに指示する。リゼとしてはこのリーダーと戦うしかない。

 その間にリアにはサイクロプスを足止めしてもらうことにした。

 エリアスは意図を察したのか剣を構えてサイクロプスへと向かう。一瞬遅れたがアンドレ、そしてロイドも続く。

 サイクロプスは倒れた男を踏み潰し、突き進んでくるが、展開したままにしていた壁に当たると唸り声をあげた。

 リアは姿を見せると剣を鞘から引き抜き、泥人形に慣れた様子で「敵の足を狙って。バランスを崩させる」と指示を出した。アンドレたちはいきなり姿を表したリアに驚くが、彼女の言葉を自分たちにも指示をしたのだと思い、剣を向けサイクロプスに突撃する。このタイミングで結界の壁を消滅させた。

 

 そしてリーダーの男は二メートルの位置まで来るとサイクロプスへと向かう面々を見ながら急停止し、話かけてくる。


「面白い。一瞬であの状況を対処するとは。それにあの女、いきなり姿を現したがどんなトリックだ? それはさておき仲間になる気はないか。お前も暴れることが好きだと俺は感じた。スリルのある世界を教えてやることが可能だ。お子様の狩猟ごっこよりはきっとお前も満足すると思うがな」

「サイクロプスを倒しにいきたいので投降してくださいませんか。メットドール。あっちに加勢を」


 リゼは話しながら泥人形を出した。泥人形はすぐさまサイクロプスに向かっていった。

 男はサイクロプスへと向かう泥人形を睨みつけ、一度目を瞑るとすぐに目を開いた。


「フォーススリープ!」


 リゼはすぐさま魔法を詠唱するが、男には読まれていたのか盾で防ぐと、すぐに男は盾を上に投げる。

 

「ウェーヴ・オブ・サフォン」


 男は手を突き出すと、水属性魔法を詠唱してきた。これはダンジョンでモンスターが使う特殊上級魔法だ。リゼは素早く(インフィニティシールド)と詠唱すると自身を取り囲むように結界を展開した。

 大きな水の球体がリゼを包み込む。この魔法は水圧を極限まで高めて相手を潰す魔法だ。だが、結界のお陰でとくに影響はない。

 盾をうまくキャッチした男は水の中で平然と立っているリゼを見て(なんだ、こいつ??)と驚愕する。


「記録。ウェーヴ・オブ・サフォン」


 リゼは神器に魔法を記録しつつ、結界の大きさを変化させ、球体を吹き飛ばして破壊する。水の球体は粉々になって消滅した。無傷のリゼを見て男は自然と一歩後退する。


「くそ、受ける依頼を間違えたようだな」


 男は瞬時に地面を蹴ると剣を上から振り下ろしてきた。リゼは冷静にバックステップで距離を取る。剣で受けていたら大人の剣の力を防ぎきれるか分からないためだ。

 避けられることは織り込み済みのようで、すぐに突き攻撃を仕掛けてきた。リゼは左手で持っていた神器を剣の形に変形させると相手の剣を避けつつ、打ち払う。そして、右手に持つ剣で横から切りつけた。男は盾で防ぐとジャンプして後退しようとする。


「アイスレイ!」


 リゼは相手が距離を置く前に釘付けにした。そしてサイドステップを踏んで男の背後に回るが、男は素早くかがむと盾で背後にいるリゼを殴りつけようとしてきた。


「ウィンドプロテクション!」


 盾は魔法で防がれ男の手を離れて転がった。そして男が「ウムブラ・ネビュラ!」と叫ぶと辺りが霧に覆われ始める。リゼは瞬時に結界で自分と男を囲んだ。アンドレたちまで霧が到達するのは避けるしかない。

 すぐに「フォーススリープ」と詠唱するが、男は他のスキルで足の氷を破壊したのか、ジャンプして魔法をかわした。霧が濃くなり辺りが見えなくなるが、戦闘ウィンドウで敵の位置は捕捉済みだ。

 スキルを発動した男にもリゼの位置が分かるようで剣を向けているが、アイスレイの効果で俊敏さはなくなっている。


「ウィンドカッター!」


 リゼは二つの風の刃を射出する。うまく軌道を操ると左右から切り裂きに行く。男は剣で切り裂くが、もう一つの風の刃が男を切り裂いた。男は吹き飛ばされ結界の壁に当たると動かなくなった。

 男が倒れたことで霧が晴れていく。結界を解除すると魔法を詠唱する。


「ウィンドウェアー! 」 


 素早さを向上させた。サイクロプスをどうにかしなければならない。状況を瞬時に確認すると、どうやらサイクロプスはアンドレを執拗に狙っているようで、棍棒をちょうどアンドレに向けて振り下ろしたところだった。

 アンドレは後ろに避け、地面に棍棒がのめり込んだ。側面からロイドが切りつけ、エリアスは棍棒を踏み台にしてジャンプすると顔を切りつける。サイクロプスは顔を振って雄叫びをあげた。

 さらにリアは背後から剣を突きたて、二体の泥人形は足を切りつけた。かなり押しているようだ。

 急いで近づきながら戦闘ウィンドウで確認する。


【名前】サイクロプス

【レベル】15

【ヒットポイント】402/490

【加護】なし

【スキル】なし

【武器】なし

【魔法】なし


 とくに得られるものはなさそうだ。リゼは銀糸で棍棒を持つ右腕に糸を巻き付ける。

 銀糸により右腕をサイクロプスの身体に固定し、動けないようにした。

 地面に落ちた棍棒をエアースピアで吹き飛ばしつつ、リアに叫ぶ。


「リア、男たちを中央に集めて! 見張って!」

「分かった。泥人形、男を運ぶ。こいつ眠らないから注意して」


 男たちを眠らせたのは良いが起きられたら困るため、リアにお願いした。リアは泥人形一体を連れてサイクロプスより離れる。リアの情報によればどうやら眠らないようだ。腕に何かつけているからそれの効果かもしれない。このサイクロプスを調教した際に誰かがつけたのだろう。


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