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141.異変

 エリアスはいままでの経緯を知って感慨深い何かを感じているようだ。


「なるほどです。ラウルのおかげだったとは知りませんでした」

「はい。ラウル様にお誘いいただいて剣術を始めて目標が剣術大会になったので剣術を猛特訓しました。結局、ジェレミーには勝てませんでしたけどね」

「僕はあの剣術大会でリゼに真正面からきちんと戦ってほしいと言われて、あそこから人生が変わったので……リゼが出場してくれて良かったですよ。父も僕も領地のみんなも王国に馴染むために動き始めましたから。まさかラウルのおかげだったとは」

「少し前のことなのになんだか懐かしいですよね。あの時はエルの太刀筋を試合前に見てすごいと思ったので私も必死でした。確か領地の未開地の開拓も進められているんですよね。王国にとってはきっと良いことなのでしょうし、カルポリーニ子爵様は後世に名を残す方になるかもしれませんね。もちろんエルもです」


 そう、エリアスたちは未開地を開拓して、農地にしたりと有効活用するための活動を始めたのだ。農地が増えるということは場合によっては食糧難への備えにもなるので、王国にとってはありがたいことだ。


「なかなかの大事業ですよ。卑屈にならずにみんな前を向いて頑張っています。ちなみにリゼのことですけど、領地のみんなの中で英雄扱いですよ」

「え、なぜそんなことに……?」

「王国に合併されて、地方の外様貴族扱いで、誰も彼もがなんとなく毎日を卑屈に過ごしているときに、リゼの影響で僕や父が前を向くようになって、色々頑張ろうということになって、いま活気付いてるんですよ。なので、事の発端はリゼだということで……。それにフォルティア様でもありますしね」

「それはエルたちが頑張られたからこそだと思いますけれど、好意的に見てくれているのはなんだか嬉しいです。フォルティアの件はあれですが……」


 少し小恥ずかしくなったリゼであるが、リッジファンタジアにおける一番血なまぐさいエリアスのルートの展開が実際に起きることはなさそうで一安心した。エリアスを中心とした領民の武装蜂起は確実に起きないだろう。


「今度是非領地に来てくださいね。みんな大歓迎です」

「楽しみにしています」


 二人はそろそろ再開しようということになって、机などをアイテムボックスに収納し、また先へと進んでいく。それから、また鹿や鷲などを狩り、先へと進む。なお鷲はウィンドカッターの風の刃とアイスランスの氷の槍で仕留めた。

 突然、エリアスがしゃがむように合図をしてくる。


「どうしました?」

「あれを見てください。五十メートル先くらいに木の上にいるやつです」

「え、どれですか? 良くここから見えますね。えっと、あ、あれですね? 小さすぎてよく見えません……うーん……でもよく見ると模様がありますね。あ! もしかして豹ですか? だとすれば、かなり危険だと思います……」

「正解です。どうします?」

「複数匹いたら流石に厳しいですよね。一匹だと思いますか……?」


 リゼはエリアスの指さす方向に目を凝らすと豹らしき動物が木の枝の上で寝そべっているのが見えた。素早いのでいままでの動物たちと比べると危険度は増す。モンスターであるメリサンドよりもスピードが確実に速い。

 雰囲気としては単体でありそうだ。


「子供でもないですし、親はいないかな。まだ若めの奴って感じで、他にはいなさそうですよ」

「じゃあ……アイスレイもウィンドプロテクションも結界魔法もありますし……戦いましょう……私が囮役をやりますね」

「分かりました。では僕は近くの茂みで待機します」


 エリアスが隠れたのを確認してリゼは大きめの音をわざと出す。すると、豹がむくりと枝の上で体を起こしてリゼを目視してくる。勝てそうだと判断したのか木から飛び降りて、攻撃態勢で忍び寄って来る。

 そして二十メートルのところで一気に走り始め、物凄いスピードで距離を詰めてきた。


(速い……! でも……!)


「アイスレイ!」


 豹のスピードは思ったよりも速く、後ろ足にかすかに魔法が当たるが走る勢いもあり捉えきれない。豹はグングンと距離を詰め飛びかかってくる。


「インフィニティシールド!」

 

 冷静に結界を発動させると豹の噛みつき攻撃は壁に当たって弾き飛ばされた。体勢を崩した豹にリゼは結界を解除しつつ剣で一撃を加える。豹は痛みに悶えるがまだ倒れない。素早く一定の距離を取り警戒している。


「ウィンドカッター!」


 リゼが魔法を詠唱すると風の刃が豹目掛けて空を切る。豹は素早く身を翻して攻撃をかわし、攻め時と判断したのかジャンプして飛びかかってくる。リゼは再度結界を展開した。そして剣を構える。その時、エリアスが茂みからファイアーボールを発動し、豹の側面に魔法を当てた。横からの攻撃により体勢を崩したまま落下する豹だ。

 リゼはすぐさま結界を消滅させた。


「アイスランス!」


 氷の槍が豹に対して射出され、豹に当たり吹き飛ばした。豹は動かなくなる。


「倒しましたか……?」

「見てきます」


 エリアスが近づき確認したところ、きちんと倒せているのだった。


「なかなかいままでの動物たちとは異なり強敵でしたね。モンスター相手に使うような魔法も使ってしまいました。アイスレイを抜けられたのはアイシャのスキルやダンジョンのモンスターとの戦い以外では初めてでした。あまりにも素早い敵にはこうなるのですよね……」

「確かにそうですね……」

「良い教訓と言いますか、改めて勉強になりました。でも流石に豹ほどのスピードはない人間相手にはアイスレイは絶対通用しそうですね。いえ、スキルか何かで素早さをあげられたらかわされるのかな……。まあ、あとで考えます。えっと、流石に複数体の豹に出くわすとまずい気がするので、戻りながら狩りましょうか」

「そうしましょう」


 二人は危険と判断したのか、これ以上は奥に進まずに引き返しながら狩りを続けることにする。


「さっき、見慣れない魔法を使っていましたか? いや、ダンジョンでも出していたのと同じですかね?」


 エリアスはインフィニティシールドに驚いたのか、質問してきた。そういえば詳しくは説明していなかったかもしれないとリゼは簡単に説明しておく。


「エルの認識通りです。ダンジョンでも使っていたあれですね。透明な壁を展開して身を守る魔法です」

「すごいですね。僕はまだファイアーボールだけなんですよ」

「練習あるのみです! 結局、次の魔法を習得するには何回使ったか、どういう対象に発動してどれだけの効果があったか……なので、何度も練習すればすぐに熟練度があがって次の魔法を習得できます!」

「分かりました。頑張りますね!」


 魔法とは試行回数であるということを語り聞かせていたリゼであったが、森であるものを見つけた。ふと視界に入っただけであったのだが、その異様さに凝視する。


「あれ、エル……これ……」

「どうしました? え、これは………………」

「木が折れています。それにこれは足跡……でしょうか」


 明らかに何かの力が加えられて木が折れており、地面を見ると、足跡が沢山ある。何かがここを通ったのだ。足跡を冷静に眺めるとそこそこの大きさがあり、また、足跡の間隔を見るとそれなりに大きな何かがここを通ったということになる。また、木々は乱暴になぎ倒されたものもあれば、薙ぎ払われたような木もあった。

 二人はあたりを見渡してみるが、とくに何かを見つけられるわけでもなく、嫌な気配なども特にはしなかった。

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