135.武器の試用イベントへ
そして夜にヘルマンから返事が来た。
『リゼよ。おぬしが聖属性を得た場合、ゼフティアがおぬしを国の管理下におくなどブルガテド帝国は容認出来ない。わしはもしかするとおぬしが聖女かもしれないと思っており、皇帝陛下と議論を重ねるつもりだ。その結果次第で、ゼフティア王と話し合いをするため、もし聖属性を得た場合は誰にも言わないように』
『分かりました。聖属性の会得がないとは言い切れませんので、結果が分かりましたら教えていただけると助かります』
リゼは聖属性の会得はもう少し考えるべきだと判断するのだった。そして神器を取り出した。確認しようと思っていたことを確認する。
「交換画面にある複製機能というもので神器を複製出来たりするのでしょうか。ブリュンヒルデなども」
神器の新しいページが開かれて答えが映し出される。
『神器の複製は可能であり、所有者は引き継がれる。必要ポイント数は二十五億ポイント。ブリュンヒルデの複製は可能である。必要ポイント数は十億ポイント』
一応、日記にメモしておいた。しばらくすると表示されている答えが消え去るのだった。
「なるほど。所有者が引き継がれるということはこの神器、原理の魔導書は複製しても意味がないわけね。誰かにあげられるわけではないということ。アイシャとかに渡したら良いかなと考えたのだけれど。あ! それなら私が使うために複製……というのはどうなのかな。両手で神器を持てば強いかも? 二十五億ポイントはきついけれど……」
神器は所有者が受け継がれてしまうため、複製して他の仲間に渡したらどうかと考えたが無理なようだ。
ブリュンヒルデは未だにその能力が未知数であるが、前世の世界で神がリッジファンタジアに実装したこの世には存在しない武器である。ある意味で神器のようなものだ。おそらく強いが、十億ポイントということでかなりのポイントが必要になる。リゼとしては早くレベルを上げてブリュンヒルデの能力の真髄を解明していこうと考えるのだった。ものすごく強いのであれば複製するのもありだ。
(それにしてもこの神器って、おそらくルーク様が作ったものだから、私だけに備わっていると思われる、神の加護である交換画面の中身についての質問も事実を回答してくれるのね。そうだ! なんでも答えていただけるのであれば……私、リッジファンタジアの続編をプレイしていないのだけれど、おそらくこの世界の裏事情などが明かされたグランドルートのようなものであるはず。ファンディスクと三作目の主人公はレイラ。特に二作目はブルガテド帝国編だったようだけれど、最終作となる三作目でまたレイラが主人公であるということは、彼女が結局のところ鍵なのよね。レイラのことは色々と知っておきたいかも)
リゼは閉じかけた神器をもう一度開いた。
「辺境領域にいるゼフティア王国民で私と同い年のレイラ・ウィルズは聖女でしょうか?」
新しいページがめくられる。リゼはどうなのかとドキドキしてきた。
『レイラ・ウィルズは現時点において聖女ではない』
リゼは(そうなのね……)と答えを見て思ったが、ちょっと求めている回答と異なるため、聞き方を変えてみることにした。現時点という回答であるため、未来において聖女になるのかもしれない。
「レイラ・ウィルズは聖属性を会得できるのでしょうか? 聖属性の持ち主はゼフティアにすでにいますか?」
先程の質問の答えが消えた後、すぐに答えが表示された。
『レイラ・ウィルズは聖属性を自然に会得することは出来ない。レイラ・ウィルズが聖属性を会得するためには交換画面での付与が必要。現時点においてゼフティア王国に聖属性の持ち主はいない』
リゼはメモを取りつつ考え込むしかない。もしかしたらリッジファンダジアの三作目ではレイラが聖女でみなを導き試練のようなものに立ち向かうのではないかとなんとなく予想していたのだが、どうやら聖女ではないようだ。
(なるほど……つまりレイラは聖女ではないのね。私的にはレイラが聖女として攻略キャラたちと試練に立ち向かうというのが、グランドルートの内容だと予想していたのよね。聖女として国を一つにまとめてという感じで。どうやら違ったみたいね。そして、聖属性の持ち主は現時点ではゼフティアにはいない……のね。ということは他国からやってくる……? そういえば、お父様が難民の方々の話をしていたっけ。他国から人々がゼフティアに来ることもあるはず。アイシャだって元々はグレンコ帝国の家系だものね。やはり他国から聖属性の持ち主がやってくるという可能性が高いのかもしれない。神の試練に対抗する人々という内容が語られているはずのリッジファンタジアの三作目っておそらくゼフティアが舞台なのだろうし、そういう主要な人物はゼフティアに集まるはずだものね。はぁ……リッジファンダジアの三作目をプレイしたいかも……)
色々と考えて疲れてしまったので眠りにつくことにする。果たしてレイラはなぜ主人公に抜擢されたのかといった点をなんだかんだ考えつつ、いつの間にか夢の中なのであった。
翌日、朝食を済ませると早めに日課を済ませる。今日はエリアスと武器のイベントに行くことになっているためだ。料理も日課にしているため、そちらについても欠かさずにこなしている。
そしてあっという間に昼になった。リチャードはリアやアイシャと共に北方未開地へと転移していった。離宮の採掘やモンスター狩りを行うようである。
なお、フォンゼルは邪魔にならないところで警護をしてくれるようで、ランドル子爵領の騎士たちは町の人々に変装してすでにイベント会場に向かったようだ。
昼になるとエリアスが馬車で迎えに来た。玄関口で待っていたリゼは挨拶をする。エリアスとダンジョン攻略をしてからそこまで時間が経っているわけではないが、北方未開地の騒動などもあり、久々な気がしてしまった。
「エル、こんにちは。今日は宜しくお願いします!」
「こんにちは、リゼ。今日は誘いを受けてくれて嬉しいです。武器の展示やお試しなら喜んでもらえるかなと思って結構調べたんですよ」
「そうだったのですね。嬉しいです。武器を見るのは好きなので。こちらは護衛騎士のフォンゼルさんです」
軽く挨拶をしつつ、フォンゼルを紹介した。甲冑などをつけずに身軽な格好のフォンゼルを見てエリアスは驚いたようであるが、「宜しくお願いします。フォンゼルさん」と挨拶をしていた。
「こちらこそ、宜しくお願いします。お邪魔にならないような位置取りを行いますのでご安心を」
優雅に一礼すると、一歩下がるのだった。
早速馬車に乗り込むと目的地を目指すことになる。王都の端にある広間を使っているらしく、馬車で少し揺られ会場に到着した。武器を扱うということで厳重な警戒態勢だ。一定間隔で雇った傭兵のような者たちが並んでいた。
「なんだか、すごい雰囲気ですね?」
「主催はブルガテド帝国にある商会らしいですよ。傭兵部隊など、帝国でないといませんからゼフティアでは珍しいですよね。確かランマース傭兵団とかいう名前だったと思います。結構有名な傭兵団ですよね」
「私も聞いたことはありますね。熟練者が多いのでしたよね。確か色々な国から要請を受けて傭兵を派遣していたと思います」
リゼは戦闘ウィンドウで傭兵を観察してみた。年齢は四十歳近いだろうか、髭を蓄えた男性だ。
【名前】ハルトヴィン・ハーネ
【レベル】24
【ヒットポイント】表示不可
【加護】なし
【スキル】表示不可
【武器】表示不可
【魔法】表示不可
レベルが十一以上離れていると、戦闘ウィンドウではレベルと加護のみが表示されるため、ほとんどの部分を確認出来なかった。
(凄腕揃いというのは本当みたいね。このレベルだと中級モンスターのボスよりも高い。基本的にブルガテドの騎士や傭兵って戦いに赴くことが多いからゼフティアの騎士よりもレベルが高くなりがちなのかも。それにしても加護って本当に会得しにくいのね……このレベルの方が加護がないなんて。ラグナル様には感謝よね。メリサンド戦で良い加護を会得できたし……)
加護を会得しやすくしてくれた神の加護にリゼは感謝を覚えるのだった。
さらに他の傭兵のことも見てみた。少し若めの人だ。十七歳くらいであろうか。
【名前】コービー・レッサー
【レベル】15
【ヒットポイント】316/316
【加護】なし
【スキル】デフェンスソード
【武器】ベルトラム(剣)
【魔法】サンドシールド、ロックニードル
この人物は生真面目に正面を向いて立っていた。少し緊張しているようであるため、もしかすると傭兵団に入ったばかりなのかもしれない。
(この方は汎用スキルを覚えているみたいね。確かエルも会得していたはず。そして、ロックニードルを覚えているということは土属性魔法の詠唱を頑張って重ねたのかも。スキルなどを見る限り守備重視の戦い方をする人という印象ね)
ついつい色々な人を観察してしまったリゼであった。




