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131.商談開始

 離宮の周りを歩いていてふと疑問が浮かびリチャードに確認してみることにした。


「リチャード、ふと思ったのですが、公爵家としての紋章ってどうされますか? 私、魔法帝国の紋章を使ってしまっているのですが、変更できますよ」

「そこは師匠と一緒に作った模様があるので、それを使おうかなと思っていますね。どのみち一世代限りなので、リゼの子爵家で紋章を引き継いでいってもらえると嬉しいです」

「分かりました……!」


 どうやらリチャードは公爵家としての紋章はすでに考えていたらしい。それから泥人形にお礼を言い、本拠地の離宮に戻ると、鉱山へと向かってみる。どれくらいの成果が出来たのか確認だ。

 しばらく歩くと洞窟に到着した。泥人形は精密に作業を行ったようで、種別ごとに分けられていた。


「うわぁ、すごいですね……金と魔法石がこんなに……!」

「なかなか良い仕事をしますね、泥人形。かつては戦っているところしか見たことがなかったのですが、このような使い方があるとは意外でした。魔法石は……これは良い品質ですね。そこそこの値段で売れるのではないでしょうか?」

「多分結構な値段で売れると思います。だいぶ採れているみたいなので、近いうちに商会に売ってみます!」


 金はそこそこ大きな木箱に入れられていた。リアが必要だというので渡しておいたものだ。魔法石は麻袋に小分けして馬車に積まれている。泥人形は休むことなく作業が可能であることからこの短期間でだいぶ掘り出したらしい。


「ご主人様、ちなみに他の鉱山を探しにいってもらった泥人形が二十体ほどいる」

「ありがとう、リア! その調子で宜しくね」

「任せて。埋もれてしまっているかもしれないから調査をしてる。あと私はモンスターを倒してるからレベルがあがってきた」

「ナイスよ!」


 ひとまず金を入れた木箱と麻袋に入った魔法石をアイテムボックスに収納した。

 その後はモンスター討伐をいつもよりも沢山行い帰路についた。夕食前に交換画面を眺めていると、アデールからメッセージが入ったため、メッセージウィンドウを開いてみる。


『明日か明後日はどうでしょうか?』

『では明日でお願いします。昼過ぎが良いです!』


 金などがどれくらいの価格で売れるのか楽しみになってきたリゼだ。木箱の半分くらいはあるため、そこそこになるのではないかと予想している。アイシャいわく、普通は金鉱石から取れる金の量はたかが知れているため、異常な量だとのことだ。アイシャのうんちくを聞きつつ、禁書庫から持ってきた本を読んでみた。歴史の本だ。どうやらリチャードの先祖は西の海から流れ着いてきた民族らしい。ワールドマップウィンドウで確認すると、西の方にも小規模な大陸らしきものがあった。そこからやってきたのかなと予測しつつ、この西の大陸には今も人は住んでいるのかなとも考えたりしてしまった。最近は航海技術も発展してきているが、荒い海で知られ、天気も変わりやすい西の海を突破できるかは定かではない。ダンジョンはそれなりにあったため、いつかたまたまダンジョン転移石で転移できれば良いと思うのだった。

 

 一冊を読み終えると、なかなかリチャードの先祖が島に渡ってきた初期の頃は壮絶な歴史があったのだと知った。元々北方未開地に居た民族と一部の人たちが争いになり、先住民は南の海へと逃げていったようだ。要するにいまのアレリードやブルガテド帝国の方向に逃げていったらしい。


(なんだっけ……確か……メモしていたような。リチャードのお父様の書いた本に書いてあったはず。えっと、『南方の大陸との交渉は決裂した。そもそも船団が攻撃を受け、交渉すら成り立たなかった』……。この歴史を考えると歓迎されないのは当然なのかも。ずっと前の先祖同士の争いでも、遺恨を残すことってあるし……。ランドル家の領地の人たちも独立をいまだに望んでいる人がいるものね)


 その後、同じ民族内でも争いがしばらく続き、不安定な日々を過ごしたとのこと。

 城がある地点を中心として四つの勢力が争っていたのだが、ダンジョン攻略を成功させた冒険者が強大な聖遺物の力を使って中央の城があるあたりを支配し始め、他の勢力のことを鎮圧したらしい。なお、先住民を追い出したのは南の離宮を本拠地にしていた勢力のようだ。


(なるほど。色々あったのね。壮絶な歴史というか……一冊だけでもだいぶ濃かったから続きが楽しみかも。さてと、禁書庫の本も読むのだけれど、キュリー先生からいただいた本も読んでいかないと。リチャードに少し魔法のことを教えてもらったし、いままでとは異なった目線で説明を読めると思う)


 そんなことを思いつつ、夕食を済ませ、お風呂に入る。目をつぶっていたら少しウトウトしてしまった。首を振り、あがることにした。

 窓辺で涼んでいるとリアが北方未開地から戻ってきた。少し会話をして剣術を教えていると良い時間になっていたため、眠りにつくことにした。


 翌日は昼過ぎにアデールとその父親、そしてアルベールがやってきた。応接室へと通されたようで、屋敷のメイドが連絡をしに来てくれた。ランドル子爵家の騎士隊長であるアレクシス・ツェッテルが二人の騎士とフォンゼルを伴って部屋の外に居たため、主に応接室へと向かう。


「リゼ様、あの者たちは信用出来ますでしょうか」

「アルベール商会は問題ないと思います。ヘルマン様の話では皇帝陛下からの依頼も受けていらっしゃるすごい方だったようです。知りませんでしたが……。問題となると、どちらかというとアデールのお父様ですね。アデールに私に近づくようにと話してきた方なので。でもアデールの話ではアンドレ派に入って得をしようといったような考え方はなくなったみたいです」


 自分でアレクシスに対して話していて気づいたのだが、一応は少しは警戒をしておかなければならないなと感じるのだった。


(思えばアデールとは仲が良いけれど、そもそもの話、どういうつもりで私にアデールを近づかせようとしたのかは確認したほうが良いかな。今度のことも考えて。フォンゼルさんやアレクシスさんたちがいるところで聞けば、お二人がどう感じたのかということも参考に聞けるし……)


 フォンゼルがまず見極めてみるとのことで、問題なさそうであれば咳払いしてくるということで話が落ち着いた。

 部屋に到着するとノックをして入室する。ステファン・アルベールがいつものように挨拶をしてきたので絵のことを少し話すのだった。教会がステファンの保持しているリゼの絵を欲しがっているようだ。

 そして、初めて会うアデールの父親が挨拶をしてくるのだった。


「フォルティア様、お初にお目にかかります。キリアン・マシアと申します。以後、お見知りおきを。いつも娘が大変お世話になっております。フォルティア様のような方の友人グループに加えていただけるとは我が家の誇りといっても過言ではありません」

「宜しくお願いします。マシア子爵様。アデールには色々と相談に乗ってもらっていまして、助かっています」

「ありがたきお言葉、感謝いたします。また、一つ謝罪をさせてください。我が家は商会を営んでいるのですが、フォルティア様に娘を近づかせることでブルガテド帝国などとの取引を拡大できるかと考え、あのような失礼なことをしてしまいました。二度とあのようなことをしないとルーク様にお誓いいたします。また、フォルティア様のためにお役に立てることがありましたら何でもご支援させていただきますことをお約束いたします」

「そのような経緯があったのですね。ちょうどお聞きしたいと考えていたことなので良かったです。何かありましたら、宜しくお願いします! その時はアデールに話しますね」


 いきなり正直に話をされたので、驚いてしまったが、ひとまずは理解するリゼであった。

 フォンゼルは実は野心家で嘘を言っているのではないかという考えで彼を見たが、問題ないと判断したのか咳払いをしてきた。ヘルマンと共に様々な人間を見てきたフォンゼルがそう判断したのであれば確かだろう。

 簡単に挨拶を行うと早速商談だ。いつも絵画を買い取ってくれているステファンが紙を取り出して机の上に出した。


「それでは、フォルティア様。こちらは銀糸という糸の買い取り価格になります。マシア商会も同額とのことですが、いかがでしょうか? 我々は販売地域をうまく重複しないようにしようと話がついておりまして是非にと考えております」

 

 その紙を見てみる。一キログラムで百万エレスとのことだ。アイシャより普通の絹糸の価格帯を聞いていたため、比べると破格だ。それだけ珍しい糸なのだろうと思うのであった。

 続いて金や魔法石についての話をすることにする。将来的には仲介業者がいない自前の店を持ちたいと考えているが、ノウハウなどがない。店のために雇った人物が不正を働く可能性があるという話をアイシャから聞き、管理も現状できないため、ひとまずは買い取ってもらうのが良いと考えている。

 出処を聞かれた場合に備えてヘルマンに『どうするのが良いでしょうか?』と確認してみたところ、『大公が一口噛んでいる案件だと言うように。おぬしの後見人として助言をしているから、一口噛んでいるといっても嘘ではないだろう』とのことだったので、そのようにしてみることにした。

 ヘルマンの信用度合いは高いため、きっと問題ないはずだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] あぁなるほど、帝国産(北は子爵領地=帝国、嘘は言ってないw)ってことで帝国外に売るのが一番いいのか。それで他国に名前だけの支店置いてそこから逆輸入するのもありね(*´艸`*) 大公の名前だせ…
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