125.新たな事業のために
リゼたちはそういった戦いを数回繰り返すとスケルトンナイトはすべて倒れていた。
「いや~、お嬢様。五十体くらいいましたが、なんとかなるものですね。氷の壁付近のモンスターもだいぶ減ってきた感じですかね?」
「そうね。七百体くらいにはなったかな? リア、どう?」
「たぶんそれくらい。これを繰り返していけばそのうち全滅できる」
「なるほど! では地道に続けるだけですね。一番近いダンジョンは氷の壁付近のところですし、
外のモンスターを全滅させたら攻略ですね」
アイシャの言う通りであるため、「頑張りましょう!」と伝えて離宮へと戻った。離宮内の庭園があった場所の一部は練習場として利用しているが、アジサイやジャガイモの育成も少し頑張っている。
「育つのが楽しみね!」
「お嬢様、ちなみになぜこの二種類なのですか?」
「それは……話してしまうと、毒耐性スキルのレベル上げのためなのよね」
「なるほど、それでしたら毒のあるものを沢山集めるのが良いのですか? 私もお手伝いします!」
アイシャに「お願い!」と伝えつつ、少し耕した一画を眺めてみる。 植えたばかりであるため、まだ土しかないが楽しみなリゼであった。
それからリチャードが使っていた部屋で武器の説明などをしてもらうことにする。
「この剣たち、初めて見た時についつい見入ってしまった剣たちでした」
「おお、そうでしたか。まずこの柄が黒色の剣ですが、これは僕が作ったものです。ダンジョンで手に入れた鉱石で作った剣ですね。聖遺物を鍛冶スキルでこの剣に組み込んだので結構強いですよ。ボスモンスターへの威力増加などが付与されています。次にこの銀の剣は師匠からいただいた剣です。近衛騎士が持つことが出来る特製の剣ですね。そしてこの金の短刀は姉からもらったものです。国の紋章が掘ってあります。そちらの槍や盾は聖遺物です」
「思い入れのある剣たちですね。ちなみに私、オリハルコンという鉱石をダンジョンで手に入れたのですが、これも剣に出来るのですか?」
リゼはオリハルコンをアイテムボックスより取り出しながら聞いてみた。水色の鉱石だ。
「もちろん出来ますよ。なかなか希少な鉱石ですね。水色と緑色の中間くらいの色合いの剣に仕上がると思います」
「もしかしたらお願いするかもしれません。いま、剣は二種類持っているのですが、一つはこのペンダントに入っています。レーシアという名前の剣ですね。もう一つはブリュンヒルデという光る剣なのですが、人目につきやすくて……。レーシアも金の持ち手に宝石が沢山埋め込まれていて目立つのでちょっとしたことに使える剣が欲しかったりします。あ、ちなみに鍛冶スキルですが、実際に熱して叩いたりするのですか?」
以前、本で剣の作り方を読んだことがあり、絵が描いてあったのでそのイメージで聞いてみた。もし同じように剣を作り上げるとすると、なかなか重労働なはずだ。
「そうですね。実際に熱して叩いたりします。ですが、鍛冶スキルがあると、まずこの鉱石などに使うと棒状には形状を変化出来るんですよ。なので微調整といったところですね。あと鍛冶スキルは他の聖遺物の効果を移すときに主に使うスキルですね」
「ありがとうございます。結構、便利なスキルなのですね」
なんとなくイメージは出来たリゼだ。そして鍛冶用に釜などを離宮内に作らないといけないなと感じるのだった。
それから家族の部屋を順々に巡り、最後に皇帝たちの部屋へと来た。リチャードは静かに肖像画を見上げる。あれからもう何年も経ってしまっており過去の人だが、最近目覚めたリチャードとしては少し前まで彼らの顔を見ていたことになる。感慨深いだろう。
「リチャードのご両親はどのような方でしたか?」
「厳しくもあり、優しくもありましたね。でもかなり厳しい教育だったかもしれませんね。八歳ですとか、子供の頃からダンジョンなどに連れて行かれていましたし。まだ家族がこの世にいないという実感がありません。でもリゼの家族が家族として迎え入れてくれて喪失感が少し和らぎました。なので感謝ですね」
「家族だと思って接してくださいね!」
少し悲しげな表情を見せるリチャードに声をかけた。
「こうしてみるとリチャードのお話のように優しくもあり、厳しくもあるといった雰囲気を感じます。もしかしたら皇后様や皇女様たちは逃げ延びて子孫が他の国にいるかもしれませんよ。情報を集めてみるのもありかもしれません! 言い伝えや逸話、何かしらでご家族の軌跡についての話が残っているかもしれませんよ」
噂によると北方未開地とこちらの大陸の間の海は荒々しいようだ。なんとか大陸側に辿り着けたが、戻りたくても戻ることが困難だったかもしれない。それか戻ってきたが氷の壁に阻まれて上陸できなかった可能性もある。
もしくは、大陸に辿り着けずに海に沈んだか、そもそも戻る気がなかったのかどれかであろう。
しかし、リゼの話を聞いてリチャードは頷いてきた。
「確かにそうですね。少なくとも皆があの後、どうなったのかは是非知りたいので情報を集めてみます。ここから南東方面に向かったのですが、どの国がありますか?」
「おそらく……アレーナ王国、グレンコ帝国、ケラヴノス帝国、それからさらに東方の国々でしょうか。どの国もゼフティアと仲が良いかと言われると微妙ですね……でも、それらの国からゼフティアに来ている方もいらっしゃるかもしれませんし、色々な人に聞いてみましょう!」
「ありがとうございます。そうしましょう!」
リチャードより「それでは広間に戻りましょうか」という話になり大広間へと向かった。
広間に向かうとリアが色々見てきたようで報告してくる。
「他の離宮は埋もれてないものもある。ただし、損傷が激しい。リチャード……さんの離宮は埋もれていたから採掘が必要」
「ありがとう。ではリチャードの家を発掘するための泥人形を出しましょうか」
「連れて行ってくる。あと、鉱山は放棄されているけど、まだ稼働可能。トンネルが崩落していなかった。泥人形に作業させる?」
「お願い! 何が採れるのかは禁書庫の本を見ればわかるはず」
それからリゼは泥人形を大量に出現させ、リアが先程飛び回った際に転移石を置いてきたようで、泥人形たちと転移して行った。
その後はアイシャやリチャードと鉱山を見に行ってみることにする。鉱山事業を始めようかと考えているからだ。ポイント回復効率を上げるためには必要だ。
リアに念話で話しておき、山道を進む。しばらく歩いていると何かの足跡を見つけた。
「これは何でしょう……? まさかモンスター……」
「これはキツネですね。離宮には入れないでしょうし、無害ですよ」
「なるほど、キツネでしたか。狩猟大会でターゲットになるかもしれない動物ですね。絵本でしか見たことがないので見てみたい気もします」
そんなリゼの希望とは裏腹にキツネを見ることは出来ず、鉱山に到着してしまった。離宮の塔から見えたのは山の中腹にあるトンネルであったが、地上にもトンネルはあった。念のため崩落の危険性をチェックしようと覗き込むが、とくに崩落していたりはしないようだ。柱などに痛みはあるため、補強が必要そうだ。
「ここは鉱山の一つです。三つあるうちの一つですね。確かこの鉱山を開拓しているところで神託があって少ししか掘り出せていないんですよ。ここは基本的に金鉱石を採掘するための鉱山です。父上の話ではかなりの量が埋まっているだろうということでした。あと魔法石の元となる魔法鉱石も採れますよ。自由にうまくお使いください。あ、あちらに古びた馬車がありますね」
リチャードについていくと馬車の荷台に積まれた石を一つ手に取った。
そしてリゼに見せてくる。
「これですね。金を取り出すには色々とやり方があるので僕の方から泥人形に指示をしても良いでしょうか?」
「是非、お願いしたいです!」
リゼは泥人形を二十体ほど出現させる。そして、リチャードが泥人形に坑道の修繕や、採掘した石を一部に集めること、それから金の取り出し方などを説明してくれた。




