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122.実力

 リゼを待っていたのは意外な人物であった。


「元気にしていたか、リゼ?」

「お兄様!? まさかお会いできるとは思ってもいませんでした!」

「驚かせたくてね。まさか妹が帝国の貴族になるとは。だいぶ久々だが、なかなか可愛らしいレディに成長したね?」

「ありがとうございます。お兄様は一段と凛々しくなられましたね!」


 久々に兄と会うことが出来て嬉しいリゼであるが、リチャードのことを紹介しなければならない。リチャードは笑顔でリゼと兄の再会を見守ってくれていた。リゼは紹介しようと口を開きかける。ところが兄が進み出てきた。


「それで、まさか君はリゼのボーイフレンドというやつではないだろうね。一緒にいるなんて。この子と婚約するなら僕が認めた相手か僕を倒す必要がある」

「お兄様、違います……! こちらはブルガテド帝国のリチャード=アロルド・セーデルリンド公爵様です。混み合った事情がありますので説明させてください! それに結婚するためにはお兄様の許可を得る必要があるのですか!?」

 

 リゼは気になる発言があったものの、一同に着席してもらい、いままでの経緯を説明した。一通りの説明を終えた後にリチャードにはアイスサーベルにて氷属性魔法の使い手であることを証明してもらった。

 沈黙が訪れたが伯爵がおそるおそる尋ねてきた。


「ブットシュテット大公がリチャード皇子に帝国の爵位を……なるほど。それで、リゼは北方未開地を領地として組み込んだと……そういうことかな?」

「はい……そういうことになります」


 またしても沈黙が訪れた。リゼは壁に立っているアイシャやフォンゼルに目を向けた。アイシャは頷いてきて、フォンゼルは目を瞑っていた。

 すると兄が一言つぶやいた。


「今日の夕食は何だった?」


 質問の意図が分からず、伯爵や伯爵夫人は顔を見合わせた。リゼも(えっ?)という気持ちで兄を見つめてしまった。彼は席から立ち上がると手を広げた。


「これはお祝いしないとだよね? リゼの躍進をさ。ランドル家の誇りじゃないか」

「あ、あぁ! そういうことか。それはそうだ、お祝いしないとな。夕食を盛大にするためにメニューを変更したいということか」

「そのようね。今度は北方未開地だなんて、まったくこの子には驚かされてばっかりだわ」


 兄が拍手をしてきたので伯爵たちもつられて拍手する。隣にいるリチャードも拍手をしてきたので「リチャードが領地とするのが一番良いと思いますよ……」と話しかけると「あそこは不動のリゼの領地で変更は受け付けませんよ!」と言われてしまった。

 リッジファンタジアではサブキャラであったのに何故こんなことになってしまったのかと思うばかりである。


 それからみんなで北方未開地へと移動した。まず離宮だけでもかなり広く、ランドル伯爵邸よりも広いため伯爵たちは驚いていた。離宮は本邸といくつかの別邸に分かれており、周りを城壁で囲まれている。それに泥人形が扉の前に立っていたりとリゼたちには見慣れた光景であるが、何もかもが不思議なようだ。


「そういえばですが、リチャードの本拠地、領地にする離宮はどれですか?」


 リゼは地図をアイテムボックスから出して確認した。


「これは懐かしい地図ですね。基本的に城の東西南北に離宮があるわけですが、いまいるこの離宮が西の離宮ですね。個人的に思い入れがあるのは東の離宮なので、ここです。師匠から教えていただいた内容を記録した本などもここにあるはずです」

「分かりました。埋もれているかもしれませんので、採掘してもらいますね」

「僕も手伝います。本当に助かります」


 それから伯爵たちはアイシャの案内で城に向かっていった。つまり、転移していった。

 リゼは少し日課をこなすと絵を描くことにした。塔から見える風景を描きたかったのだ。雪に染まる森、遠くに見える氷の壁などだ。

 

「おや、絵も描くんですね?」

「そうですね。趣味の一つなのです」

「良い趣味だと思います。他にはどのような趣味があるのですか?」

「他にはそうですね……魔法、剣術、料理、スキルのレベル上げ……あとはステータスウィンドウの観察でしょうか」


 発言していていつもの日課が趣味みたいになってきているなとリゼは感じてしまった。


「あ! あと読書もあります。これは昔からの趣味です。あとは庭園を歩いてベンチに座ってゆっくりするですとか……そういうのも趣味と言いますかたまにやることですね。リチャードの趣味は何ですか?」

「どれも良いですね。とくにベンチに座ってゆっくりするというのは惹かれます。料理は僕もしますよ。趣味……趣味……魔法、魔法の開発と実験、あとは鍛冶ですかね。美しい武器を作るのが得意なんですよね。ところで気になっていたのですがステータスウィンドウというのは何ですか?」


 太古の昔にステータスウィンドウがなかったということは把握していたが、リチャードに説明するのを失念していたことを思い出す。リゼはウィンドウシステムの見方などを説明した。


「なるほど、見ることも他の人に見せる、共有……? というのもできるのですね。試しに共有してみますよ」


 リチャードはステータスウィンドウを共有してくれた。


【名前】リチャード=アロルド・セーデルリンド

【性別】男

【年齢】十二才

【レベル】36

【職業】なし

【属性】氷属性

【称号】竜殺し、試練を乗り越えし者

【加護】ブリザード・エスポワール、大王の盾、天蛇の盾、魔将圧、凶竜、狂獅子の舞、影炎の盾、聖盾、炎馬の防壁、霊蛇、死竜の加護

【スキル】凍結耐性(レベル11)、鍛冶、麻痺耐性(レベル3)、呪い耐性(レベル3)、暗視、ソードゲニウス、二式秘技 光斬、魔法耐性(レベル5)、ハイドロコート、月下斬り、斬耐性(レベル6)、心眼、毒耐性(レベル3)、毒検知、闇針、魔力検知、モンスターテイム、ダークネス・デュアル・ナイト、聖印連斬、影縫い、衝撃耐性(レベル3)、突耐性(レベル3)、エア・ロック・チェーン、打耐性(レベル7)、火傷耐性(レベル5)、麻痺耐性(レベル4)、睡眠耐性(レベル4)、戦陣剣 凪、天翔

【状態】健康

【所持金】0エレス


 魔法に比重を寄せ、剣などのスキルはあまりつけていないのかと思っていたため、想像と異なっており驚くリゼだ。


(なにこれ……すごい……。でも……試練を乗り越えたのだからこれくらい自分を強化しているというのは当然なのかも。それに比べて私は……ううん。まだあと三年くらいはあるのだから頑張らないと! 職業が何もないのはまだ帝国の公爵として皇帝陛下が承認していないからなのかな)


 リゼは試練を乗り越えるには様々な加護やスキルが必要だと再認識した。

 

「なんていうか、すごいですね……いえ、すごすぎます。これはダンジョン攻略などで手に入れた加護やスキルですか? 大賢者も似たような状態だったのですか? あとモンスターテイムもお持ちなのですね……!」

「そうですね。ボス攻略の際に入手しました。結構幼い時から行かされていましたからね。氷の加護と凍結耐性は生まれたときに得ていたものですけどね。まあ、もうこれらのスキルや加護は使う機会はないかもしれないですね。あとは静かに生きるだけです。師匠はどちらかというと攻撃はすべて魔法を使って、スキルや加護などは防御系特化だったと思います。モンスターテイムは師匠からもらったスキルの本で習得しました」

「ありがとうございます……なんだか、私も頑張ろうとやる気が出てきました」


 実際にリゼはやる気が出たし、知らない加護やスキルばかりで真剣に戦ってみたくなってきてしまった。とはいえ、戦いが好きではなさそうであるため、機会があればと内心で思うのだった。

 それからしばらく絵を描いていると、伯爵たちが戻ってきたため、屋敷へと向かうことにした。

 するとメッセージが届いたようで開いてみる。

 

『リゼよ。リチャード殿下の件だが、ブルガテド帝国の公爵としての地位を確立した。伝えておいてくれ。対外的には某国の皇子であったが、様々な事情がありブルガテド帝国にいらしたということになる。国の名前は明かさない』


 ヘルマンからメッセージだ。すぐに返信をする。


『分かりました。ありがとうございます。伝えておきます』

『それと、ゼフティアの建国記念パーティーには皇女の代わりにリチャード殿下に出てもらうことにしたい。あわせて伝えておいてくれ』

『承知しました』


 ヘルマンとのメッセージを終え、屋敷へと転移した。リゼはリチャードに正式に公爵になったこと、対外的な扱い、ゼフティア王国の建国記念パーティーについてを話しておいた。リチャードは部屋で文字の勉強するらしいので廊下で別れた。

 リゼは練習場に向かいつつ、歩きながら自分の今のステータスを開いてみた。


【名前】リゼ=プリムローズ・ランドル

【別称】フォルティア

【性別】女

【年齢】十二才

【レベル】11

【職業】伯爵令嬢(ゼフティア王国)、子爵(ブルガテド帝国)

【属性】風属性、氷属性、無属性

【称号】運命の開拓者

【加護】大地の神ルークの祝福(大)、芸術の神ミカルの祝福(大)、武の神ラグナルの祝福(超)、叡智の神アリオンの祝福(小)、水の加護、土の加護、風の加護、火の加護、ブリザード・エスポワール、人魚の祈り、竜羽の盾

【スキル】ルーン解読(固有)、毒耐性(レベル1)、衝撃耐性(レベル1)、毒検知、燕返し、マジックキャンセル、銀糸、火傷耐性(レベル2)、ソードゲネシス、モンスターテイム

【状態】健康

【所持金】120000エレス

【ポイント】254460000

【メッセージ】「なし」


 ステータスを眺めつつ、先程のリチャードの内容を思い返してみる。


(あれを見てしまうと、充実してきたなと思っていたステータスもまだまだだということを実感しちゃった……リチャードは防御系の加護を結構得ていたと思う。そしてスキルでも防御出来るようにしつつ、攻撃を強化していた感じよね。私は……もう少し攻撃系のスキルをつけたほうがよいかな。リチャードはリッジファンダジアには出て来ていなかったけれど、続編などにも出てこないのか気になる。うーん、出てこないかな? まず、北方未開地に転移するのに交換画面のアイテムが必要だし……。とはいえ、仮に登場させる場合は……ゲームで言うと、シナリオ終盤で仲間になるお助けキャラといった感じよね。十分に強くて完成されたステータスを持っているし。よし、あれくらいの強さになることを目標にしつつ、今日からいつも以上に頑張りましょう!)


 いま模擬戦をさせてもらっても全く勝負にならなさそうであることは分かったリゼは、彼の能力を目指して頑張ろうと誓うのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] いくつか王子のコピーさせてもらえばいいんじゃないかな?
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