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113.本の能力

 次の日の朝、冷静に考えると落馬しても衝撃耐性スキルがあるため、怪我などしないことを思い出した。よって、乗馬の練習を一人で行ってみる。昨日と同じ馬を借り、なんとか一人で乗ることが出来た。


「よし、いい子いい子」


 リゼは馬に声をかけつつ、ゆっくり歩いてみる。


(良い感じ。普通に歩いてみましょう)


 馬に手で触れ撫でると何かを察したのか普通の速度で歩き始めた。だいぶ揺れるが、バランスを取る。速度を上げてみるが、問題ない。


(うん。それなりに乗れるようになったかな。朝食にしましょう)

 

 剣術の練習を毎日してきたことで体幹が鍛えられているのは確実だ。まだ乗馬の練習を始めたばかりであるのだが、良い感じに乗りこなすことが出来ている。

 

 朝食を食べ終わり、紅茶をいただいているとアイシャが話しかけてきた。


「今日はどうなさいますか?」

「そうね。たぶんお城の採掘作業にはまだまだかかるでしょうし、今日は離宮から持って帰ってきた本を整理して少し読もうかな。日課はもちろんこなすのだけれど」

「分かりました! お手伝いしますね」


 リアは朝早くから北方未開地へと向かったため、不在だ。アンドレは帝国へ用事で行っているらしい。ラウルは今日は来ることが出来ないようで、ジェレミーは相変わらず狩猟大会が終わるまでは会いに来れない。建国記念のパーティーでは恐らく顔を合わせるだろうが。そしてエリアスは領地である。

 つまり、この日の来客予定はない。ゆっくりと本を整理することにした。どうやらはるか昔の帝国はきちんと本を管理していたようで、歴史書、法律の本、国の記録などタイトルでわかるようにしてくれていた。『歴史I』、『歴史Ⅱ』のようにタイトルが付けられており、迷わずに整理することが出来ることになる。

 その中でも魔法の本がそれなりにあり、氷属性の本が中心だ。中には雷属性の本まであった。


「すごい。キュリー先生からいただいた本には氷属性の本はなかったのだけれど、回収してきた本の中にはいくつかある!」

「良かったですね、お嬢様。それにしても良く読めますよね。ルーン文字でしたっけ」

「大収穫よ。そう、ルーン文字。言語は同じだからなんとかなっているけれど、違ったら読めなかったから運が良かったかも。そういえば、東の方では言語が違うみたいよね」

「あー、ケラヴノス帝国よりもさらに東の方はそうらしいですね。遊牧民の国があるみたいです。さらにその先にも国があるみたいなので世界って広いですよね。一説によるとこの世界は丸いらしいですよ。なのでひたすら歩き続けると元の場所に戻ってくるという論説を目にしたことがあります。ただ、まだ証明することが出来ていないらしく、胡散臭い意見だと一蹴されてしまったのですよね」


 リゼはアイシャの語るうんちくを聞きながら本の整理をした。アイシャは整理しながらもひたすら話し続けており、その手の話が好きなのかもしれない。するとリアが念話で話しかけてきた。どれだけ遠くにいても話せるらしい。


『ご主人様、氷の壁の付近にはモンスターが多数いた。飛び回ってみたけど、千体以上はいる。あと、ダンジョンの穴の場所は発見して破壊しておいた。モンスターからは気づかれていない』

『そう、ありがとう。刺激しないようにしておいてくれる? ちなみにモンスターの種類は?』

『ゴヒ、スケルトンナイトなど。レベルは十五。大部分はスケルトンナイトでそんなに強くない。昨日も簡単に倒せた』

『ありがとう。離宮に来られたら嫌だから掘り返した土を積み重ねて固めて壁を作りましょう』


 リアは理解したのかすぐに作業を開始した。モンスターの数は長きにわたって増え続けた結果、相当数いるらしい。ただ、穴を塞いだということはこれ以上増える心配がない。少しずつ倒していこうとリゼは考えるのだった。一日、五十体倒すだけでも一ヶ月後には一掃出来るかもしれない。

 本の整理が終わったため、用意しておいた机の前に座る。本棚が沢山並び本が敷き詰められているため、さながら図書館のようだ。図書館長を務めるランドル伯爵の娘であるリゼ的には少し嬉しくなった。

 落ち着いたため、神器と思われる大賢者が持っていた本をアイテムボックスより取り出すと問いかけてみる。確か真実を語る機能があったので試してみることにした。


「北方未開地を囲む氷の壁は私が触れれば消えますか?」


 すると白紙のページが開き『氷属性の持ち主の内部からの接触により瞬時に消滅する』と回答が映し出された。そしてしばらくして消える。


(なるほど、問いかけた内容は消えるのね。よし、となると、モンスターを一掃したら、氷の壁にたどり着けるから消せるようになるのね。といっても、アレリードの海賊が上陸してきそうだから消さないけれど)


 リゼとしては特に消し去る予定はないが、何かあった際に消すことができるということは理解した。


「そうだ! あなたの正式名称は? 八つの神器の一つなのですよね?」


 神器なのかどうかも含めて聞いてみることにした。

 白紙のページに答えが映し出される。


原理の魔導書(ロゴスグリモワール)

『八つの神器における六番目の神器(グランドシックス)である』


「ありがとうございます……!」


 どうやらこれは神器で間違いなく、その中の六番目の神器らしい。横に居たアイシャがいつの間にか近くに来ていた。


「お嬢様、なんて書いてあるのですか? これまたルーン文字ですか」

「えっと、やはり神器みたい! その中でも六番目の神器らしいのよね」

「なるほど。ルーク様の神託にあったように今後なにかあるのだとしたら、他の神器を見つける必要があるかもしれませんね。仮にお嬢様のいままでの話を整理すると試練の神アレス様による試練があるのかもしれません。となると、神器は揃えておいた方が良くないですか?」

「そうね……。準備できることは準備しておかないと。少なくとも、超上級ダンジョンをクリアできるレベルには当然ないから、とにかく強くなっていく必要ありね。それにはやっぱり実戦よね」


 アイシャの話を聞いてリゼは同意せざるを得ない。神器の中には非常に強力なものもあるだろう。集めておいて損がないのは確実だ。


「ですね。それにしてもこの神器には二つの能力があるわけですよね。所持者が見た魔法を記録して使えるようにする、真実を回答する、でしたか。他にあるのですかね? その二つだけでも有用ですが、神器と呼ばれるレベルではないような気もしていまして」

「たしかにそうね……二つの能力……というか機能については、大賢者の本に記載があったのだけれど、何個の機能があるかはわからないのよね。あ、自己修復機能もあったはず。だから三つかな。聞いてみましょうか。あなたの機能は?」


 するとすぐに文字が表示された。


『現在のあなたが利用できる機能を一覧として表示する。

機能一:所有者が目にした魔法を記録して発動可能とする。記録された魔法は所有者が変更されても発動できる。マナは消費されず、クールタイムもない。

機能二:質問に対して事実を回答する。予測不可能な事象については回答不可。

機能三:自己修復機能。破損しても破片さえ残っていれば修復が可能。所有者による指示が必要。

機能四:形状を所持している物に変更可能。その対象物の能力を受け継ぎ、備わっている機能も同時に作動可能。

機能五:マナを分解させることで、相手の魔法を弱体化させることが可能。一定距離内の魔法に効力がある。 以上である』


 リゼは読み上げてアイシャに聞かせた。アイシャは機能を聞いてから疑問を口にしてきた。


「なるほどです! 流石は神器というだけのことがありますね……だいぶ魔法に関して効果がある感じですし、強いです! 現在のあなたは……ということは、状況が変われば他の機能が使えるかもしれませんね。確かお嬢様の剣もそういう感じではなかったですか? あの光る剣です!」

「ブリュンヒルデも確かにレベルに応じて効果が解放される剣ね。この神器もそうなのかもしれない。あ、あと二つ聞いておきたいかも。所有者の変更は可能ですか?」


『所有者が死亡した際に新たな所有者を認識可能』


「ダメみたいね……。ということは私はこの神器と付き合って行く必要があるわけね。他の神器を手に入れたら他の人に使ってもらいましょう」


 この神器は誰かに渡して、仲間の戦力を強化しようかと考えたがどうやら難しいようだ。続けてもう一つの質問をしてみる。


「以前、ボスモンスターを倒して『アビザル・サンクチュアリ』というスキルの本を手に入れ、アイシャに習得してもらおうとしましたが、うまくいきませんでした。なぜでしょうか?」


『聖遺物であるスキルの本は二種類が存在する。誰もが会得できるスキルとトドメをさした者のみが会得できるスキルである』


 どうやら、後者だったようだ。『アビザル・サンクチュアリ』についてはリゼしか会得できなさそうであるが、仕方ない。

 次に機能四を試してみる。ブリュンヒルデを取り出すと、「形状変更」と神器に向かって言ってみた。すると神器はブリュンヒルデと同じ形に変化した。


(説明を読む限り、ブリュンヒルデと同じ能力がある状態なわけよね。それは強い気がする。ブリュンヒルデの能力は未知数だけれど。それにしても大賢者は武器を使うよりも魔法にこだわりがあったからこの機能を使わなかったのかな。聖遺物の剣に形状を変化させるだけで強力な武器が二つになるのに。それとも……試行錯誤に熱中してどんな機能があるのか、神器に確認しなかった……? いずれにせよ、使いこなしていけるようにならないと。そういえばブリュンヒルデって神剣……だったっけ。普通には手に入らないと思うし、神器と同じような存在なのかもしれないわけね。あれ、ちなみにだけれど、この神器って、本来レイラが手に入れるものではないということで良いのかな。続編で語られている可能性はあるかもしれない。でも、ラグナル様からいただいたダンジョン転移石がなければ北方未開地の内部には辿り着けないと思われるし、レイラは他の神器を手に入れるのかな。そういえば、辺境領域の島に何か……詳しくは思い出せないのだけれど、レイラが行っていた気がする。きっと試練に挑む中心メンバーはレイラになると思われるから、私は手助けできるようにしておかないと!)


 リゼは心の中で意気込みつつ、「形状解除」と伝えて本の形に戻すのだった。


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