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106.聖属性魔法

 リゼは続けてウィンドカッターをソルアントに打ちながら距離を詰める。ソルアントはダメージを受けるがリゼを噛み砕こうと牙で攻撃してきた。


「燕返し!」


 牙を打ち返すとスキルによって左右から攻撃する。そしてバックステップで後退すると、入れ替わる形でアイシャがジャンプして上から剣を振り下ろした。さらにフォンゼルが剣で側面を切り付け、リアが突き攻撃を行うと「ギィィィィ!!」という絶叫を残して倒れるのだった。リゼは素早くアイテムボックスに入れるが、ダンジョンマップウィンドウを見ると大きな空間に沢山いたモンスターが忙しなく動き回り始めたことを知り、とにかく仲間たちと全力で走ってその場から離れる。

 そして通路にある扉を開けて中に入った。その八秒後、扉の前をモンスターらしきものが数体通り過ぎるのだった。


「リゼ様、ソルアントをご存知ですか?」

「いいえ、知りません……」

「あれは巣を作る習性がありまして、他のモンスターを襲う珍しいものたちです。仲間の叫び声を聞いて殺気立っているはずで、今はこの部屋で大人しくしておくのが良いでしょう」

「分かりました。もっと早く行く手にあの空間があると気づければよかったのですが……少し考えごとをしていたので申し訳ないです」


 それからリゼはダンジョンマップウィンドウでソルアントの位置を確認するが、だいぶ広範囲に分散しているようだ。


(モンスターって、食事を必要としないはずなのに、他のモンスターを襲ってどうするのかな。迂回するルートを探しましょう。ここまで来たら引き返すよりもこのまま別の道を進んだ方がボス部屋に近い)


 しばらく探していたが良い道を見つけるのだった。あの大きな空間である巣を回避して奥まで進むことが出来る道だ。リゼたちはソルアントが離れたところを狙って部屋から外に出ると見つけた道を進んでいく。背後には結界を定期的に展開させて安心感を保ちつつだ。

 やっとのことで巣から離れた面々は少し休憩することにする。ここにくるまでモンスターに遭遇しなかったのはおそらくソルアントが狩っているためだろうか。

 巣から離れて音も聞こえないところまでは来たがまだ縄張り範囲内の可能性があるため、警戒をしつつ体を休めることにする。

 ここでフォンゼルが口を開いた。


「一つ思い出したのですが、ダンジョン内にソルアントが出てきた場合、ボスはクイーンである可能性があります」

「クイーン……ですか?」

「はい。アントクイーンです。石板が壊れると同時にソルアントを二体出現させます。そして、定期的にソルアントを二体ずつ出現させるのです。間隔は三分だったかと」

「つまり、お供がいるパターンですね……」


 リッジファンダジアでもボスにお供がいることはあった。沢山いる場合においては、お供であるモンスターを殲滅する役とボスを担当する役とで役割を決めることにしていた。

 今回は二体であるため、少し考えてみることにする。


(お供は二体ね。それであれば、アイスランスやウィンドカッターで先に倒して一気にボスを攻めるのが良いかな。分散しない方がインフィニティシールドでみんなを守りやすいし、流石に今回はセイクリッドスフィアの自動攻撃も発動しましょう。よし、なんとかなる気がする)


 リゼは作戦をアイシャたちに話すのだった。

 それからまた出発し、宝箱部屋の近くまで来た。いまいる通路はそこそこ幅があるため運が良かった。狭いと剣を振るのも大変であるし、避けるスペースがなくなってしまうからだ。

 扉の前に立ち、心を落ち着かせる。


「さて、何が出るかですね。すぐに結界を張りますので落ち着いて対処しましょう」


 そしてドアを開ける。すぐに結界を展開した。目の前にモンスターが大量に出現し、結界にぶつかってくる。


「コボルトですか……一度殴りつけられてしまったことがあるのであまり良い思い出はないですね。えっと、数は八体です。少ない方です」


 ダンジョンマップウィンドウで確認しながら数を仲間たちに伝えると、どのように倒すのかを検討する。


「お嬢様、どうします?」

「アイスレイで足止めしつつ遠距離から攻撃して数を減らしましょう。体力が少ないから魔法で倒せるはずよ」

「分かりました」


 フォンゼルとリアには少し離れたところで通路の見張りをしてもらうことにした。リゼが結界を解除するとコボルトが溢れ出してくる。そしてリゼたち目掛けて威嚇の声を上げた。


「アイスレイ」


 後退をしつつ冷静にコボルトたちを足止めした。


「セイクリッドスフィア!」

「ロックニードル!」

 

 聖なる光の玉がコボルトに浄化の輝きを放ちダメージを与えていく。また、アイシャの岩状の針がコボルトに当たったが倒しきれはしなかった。

 だが戦闘ウィンドウで確認するとセイクリッドスフィアのダメージでみるみるとヒットポイントが減っていく。コボルトたちは何とか浄化の輝きを避けようとしながら近づいてこようとするが、リゼの周りに浮かぶ球体は五つある。避けようとしても別の球体から浄化の輝きが発せられる。情け容赦なくモンスターたちを貫き、一体、また一体と倒れていく。


(実戦で使うのはこれが初だけれど、強すぎる……立ってるだけで五つの球から浄化の輝き……閃光みたいなものがコボルトを突き刺しつつ、ダメージを与えていく……ルーク様はチートはダメと言っていたけれど、普通はこんな魔法を覚えられないし、チート感が出てきたかも……)


 最後の一体はリアに倒してもらった。簡単に倒せてしまって驚くリゼであるが、宝箱部屋へと入り、宝箱を開けてみた。

 中に入っていたのは水色の石だ。何かの役に立つだろうか。


「お嬢様、それは一体?」

「オリハルコンという名前の石というか鉱物みたい。価値があるみたいね」

「なるほど……!」


 アイテムウィンドウで確認したところ、剣などに加工できるらしいのでアイテムボックスの中に入れておいた。きっと何かに使えるであろう。


「リゼ様、先程の魔法はどのようなものなのですか?」

「あれはそうですね……光る球のようなものが出現して敵対対象に攻撃してくれる魔法といいますか……」

「なるほど。見たこともない魔法です」

「あー、そうですよね……ちょっと特殊な魔法みたいです」


 とフォンゼルが質問してきたので答えておいた。いまはまだ聖属性の魔法だということを知られたくないのだが、特に追求はしてこなかった。


(それにしてもセイクリッドスフィアは流石は聖属性の魔法という感じね。さてと、あとはアイシャたちのことよね)


 リゼとしては自身の強化は良い感じに進んでいるのだが、アイシャやリアなどをどのように強化していくべきか考えていた。交換画面で良いスキルなどがあったらつけてあげるのが良いだろう。

 ただし、結局のところ何をするにしてもポイントが必要だ。現状、日々の練習と絵を売却することでしかポイントを稼げない。何か事業を増やさなければと考えている。銀糸で作った洋服が売れれば服飾業界への進出も可能だが、そこはアデールに期待だ。あとは氷を売ることだろうか。現状、氷は転移石を利用して山などで切り出して転送してきており、手間がかかっているため、高価だ。

 どうしようかと悩むしかない。


「そういえば、北方未開地って、鉱山とかあるのかな……?」

「リゼ様、それなりに広いため、あると思います。ただし、人手が必要でしょう」


 リゼの独り言にフォンゼルが反応してきた。


「そう、ですよね……」

「ランドル子爵領で鉱山事業で働きたい人々を募ってみるというのはありかもしれません。基本的に農耕のみで特殊な産業があるわけでもないので、喜ぶかもしれません。裕福な領地というわけではないので。とはいえですが、ここに人々に来てもらうにはダンジョンを潰して、モンスターを倒しておく必要がありますね」

「ありがとうございます。まずは地道にダンジョン攻略ですね!」


 マップに表示されているダンジョンを攻略して、モンスターを一掃することが、当面の目標になりそうだ。

 そして来たる時のために出来る限りポイントを稼いで、アイシャたちを強化だ。


 それからもう一つの宝箱部屋へとやってきた。ここは罠がない部屋だ。宝箱にあったものは魔力を増大させるという杖だった。

 杖を持って戦うなど、想像できないが誰もいらないということなので貰っておいた。銀色の長い杖で、非常に硬い。案外軽く、先端には青色の水晶が取り付けられている。


(仮に聖女と友達になれたらあげても良いかも。聖女は基本的に魔法を繰り出す戦い方で剣を使ったりはしないでしょうから、有効活用してくれるかもしれない)


 杖をアイテムボックスにしまうと、ボス部屋を目指す。道中でモンスターに数体ほど遭遇したが、ソルアントのせいでこのダンジョンはモンスターが極端に少ないと感じるリゼであった。


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