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103.念願の魔法

 ベッドを見つめるリゼだが、リアが念話で話しかけてくる。


『ご主人様、一つ分かった。ここは離宮。また別に城がある。離宮には禁書庫、城には宝物庫があるみたい。この国の地図と城の見取り図を三階で見つけた。王族のフロアだと思う。ルーン文字は読めないけど、記号から推測した。城とは地下で繋がっている』

『遠くに見えた塔が城かな? あとで確認してみるからその地図は持って帰ってこれる? 地下通路は崩落したりしているかもしれないから、出来れば地上から行きたいな』

『持って帰る件について分かった。あと禁書庫はご主人様たちが入ったところ』

『本は全部回収しておいたから、あとで整理しましょう。ありがとう、リア』


 リアとの念話を終えるとどうしたものかと考える。


(リアのおかげで魔法帝国の全貌と城の構成は分かりそうね。今日はここまでかな)


 リアが合流して背中にしがみついてきたところで、ラウルとフォンゼルに帰りましょうと伝える。なお、先ほどの大広間に戻ると家から持ってきた黒い布をアイテムボックスから取り出す。トンカチと釘も持ってきておいたため、壁の穴を塞いでおいた。そしてさらに立食用の机をいくつか重ねてモンスターが入ってこれないようにしておいた。知能が優れるモンスターでなければ、気付かずに通り過ぎるだろう。

 それから階段を登り窓から外に出る。

 そして転移石を起動させ、目を開けるとリゼの部屋にいるのだった。フォンゼルは一礼すると部屋を退室していった。不用意に令嬢の部屋に入るのはよろしくないと判断したのだろう。


「リゼ、とても良い経験をさせてもらったよ。また行く時には声をかけてほしいんだけど、どうかな?」

「もちろんです!」


 それからアイシャにラウルと北方未開地で起きたことを伝えた。アイシャも行きたかったようで悔しそうにしていたが、ミーミンを見せたら引いていた。

 それから千冊を超える本をどのように整理するかということになったが、まず場所がないため、アイテムボックスの中に入れておくということで落ち着いた。ラウルは語りたいことが山ほどあるようであるが、帰路についた。なお、北方未開地については絶対に黙っていてくれると約束してくれたのだった。

 

 リゼはリアが持ち帰った地図や見取り図を眺めていた。ルーン文字で書かれているが、読めるリゼにとっては楽勝だ。

 どうやらいくつか見える塔の一つがメインの城であり、他は離宮らしい。リゼたちが探索した離宮は、離宮の中でも格が高いところのようだ。

 それから山の中腹に見えた洞窟は何かしらの儀式場のようなもので、さらに鉱山でもあるようだ。城には皇帝の部屋などもあるため、今度訪れてみようと思い立った。もしかしたら大広間で見た肖像画の人物が皇帝なのかもしれない。離宮にも皇帝などの部屋があるため、まずはそちらからだろうか。


「アイシャ、リア。なぜ北方未開地には誰も入れないのかな。何かしらの魔法? あの島を覆う氷の壁、上から登ったりは出来ないのかな……」

「実際、お嬢様のインフィニティシールドのようなものは常人では難しいでしょうけど、昔は壁を作ったりですとか色々な魔法があったのかもしれないですね。氷の壁はそれなりに高く、特殊な魔法で出来ていて武器で叩いても壊れないのでしょうね」

「あるかも……氷の壁、もしかしたら触れたら消滅させられるかな?」

「本棚の氷を消せたそうですので、同じ原理であれば消せるかもしれないですね」


 リゼの予想では本棚の氷を消滅出来たように氷属性の持ち主は解除できる気がしていた。

 次の日の朝、伯爵たちが帰宅したため、出迎えた。


「お帰りなさい、お父様、お母様。お兄様はお元気でしたか?」

「留守番ありがとうリゼ。とても元気だったよ。しかしね、デイラ聖教国側から難民が船で押し寄せてきているから対策が必要だ。またすぐに領地に向かうが、一人で大丈夫かな? 建国記念までには事態を収めて戻ってくるつもりだからね」

「それは……大変ですね。私に何かお手伝いできることはないでしょうか?」

「デイラ聖教国は絶対に他の神々を認めない一神教の国だからね。彼らの中に過激なタイプが紛れ込んでいたとしたら、ルーク様より名を授かったリゼのことを快く思っていないかもしれない。王都にいるのが安心だよ」


 確かにデイラ聖教国は光の神ルーフのみを信仰しているわけだが、その中でも特に過激な人たちがいるということは大陸において周知の事実である。

 守るべき対象が少ない方が騎士たちも上手く立ち回れるだろうと考えて留守番をすることにした。

 翌日、伯爵たちは昼前にはまた領地へと向かっていった。少なくとも数日で戻ってくることはなく、こんなに両親が居ないひと時というのは人生で初めてである。昔のリゼであれば手持ち無沙汰であたふたしていたかもしれないがいまはやるべきことが沢山ある。計画を立ててみることにした。

 机に向かいながら計画を立てる。


「どうしましょうか。出来れば北方未開地に行くのが良いのよね。アイシャも含めて行きましょうか。屋敷のみんなにはお出かけということにして。あと、問題はあの大量の本よね。きっと重要な記載があるはず。私だけでは到底読みきれない……また交換画面にルーン解読スキルがラインナップされてくれると良いのだけれど」


 リゼは日々の日課である交換画面を確認してみる。とくにこれといって目新しいものはない。と思ったところで、目を見開いた。


【魔法交換画面】こちらは魔法交換画面です。ポイントを消費してお好きな魔法を獲得することが出来ます。

【ライトニングトルネード(光)】18000000

【セイクリッドスフィア(聖)】20000000


 念願の聖属性魔法がついにラインナップされていた。早速内容を確認してみることにする。


『セイクリッドスフィア(聖) 備考:五つの聖なる球体が体の周りに浮遊し、敵対対象に浄化の輝きを放ちます』


(ついに来た聖属性!! えっと、五つの球体が同時に攻撃したら、それなりの攻撃力になるはずよね……。何より聖属性魔法について詳しく知りたかったし、これは交換しておきましょう。どのような応用効果があるのかも楽しみね)


 リゼはセイクリッドスフィアを交換することにした。ラグナルの加護を一つ消費してしまったが、聖属性を知ることは重要だ。そして早速、マジックウィンドウで内容をもう一度確認してみる。


『セイクリッドスフィア 備考:五つの聖なる球体が体の周りに浮遊し、敵対対象に浄化の輝きを放ちます。(応用:球体の輝きを任意に放つことができます。球体を任意の方向へ飛ばすことも可能。また、浄化の輝きは自身や味方の傷を癒します)』


「結構、便利みたいね」


 アイシャやリアと練習場に向かい、試しに使ってみることにする。モンスター投影石でノーマルスケルトンを三体出してみた。


「セイクリッドスフィア!」


 特殊上級魔法を詠唱したのにも関わらず、ふらふらとしない。リゼは少し驚いてしまう。聖属性を得ていないリゼは初級魔法だろうが中級魔法だろうが本来であれば体内のマナを使用するはずだ。それなのにふらふらとしないということは、ラグナルの加護で覚えた魔法は特殊で体内のマナを利用せずに、大気中のマナを利用してくれるのかもしれない。

 ふと周りを見ると自分の周りに白い球体が五つほど浮遊している。


「アイシャ、リア、私の周りの球体って見える?」

「見えます!」

「見える。五つ」


 どうやら他の人でも見れるようだ。ここでリゼはノーマルスケルトンに攻撃をさせる。指示を受けたノーマルスケルトンは戦闘モードとなり、リゼに向かって走ってきた。

 試しに一つの球体を自分とノーマルスケルトンの間くらいに飛ばしてみた。ノーマルスケルトンが一定の距離まで近づいたところでその球体が銀色の光をモンスターに向けて発し始める。戦闘ウィンドウで確認すると、ノーマルスケルトンは近づいてくるがみるみるうちにHPが減少していき倒れた。残り二体のノーマルスケルトンは球を避けつつ、左右から近づいてきたが、他の四つの球体が光を放ち、リゼのところに辿り着くまでに二体が同時に倒れて消滅するのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] うーん…ステータス隠せるんだから聖魔法取って隠しながら習熟度上げるだけ上げたら良いんじゃないだろうか。 必要となるのは安くしてくれてて聖魔法関連が激安になってるんだからルーク様がいつか必要だ…
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