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101.探索へ

そしてキュリー夫人も建国記念パーティーに参加するようで、詳細を聞かされる。


「リゼさん、建国記念パーティーはお披露目会を終えた者が参加できるのであなたにも招待状が来るでしょうね。交流のある国の王族なども招待されますよ。今年はブルガテド帝国の方も招待されるかもしれません。よって、警護が大変です。中立派のドレ公爵率いる第一騎士団がまた駆り出されるでしょう。狩猟大会もあるので大変ですよね。さて、記念すべきパーティーですが、政治の場でもありますから、様々な人から話しかけられるかもしれません。とはいえ、あなたはなかなか慎重に物事を話しますから失言はしないでしょう。それでも、注意を払うのですよ」

「はい! 知らない方から話しかけられたら警戒すれば良いのですよね」

「そうです。話しかけてきた人の名前と内容は記憶するようにしましょうね。あとで何かしらの役に立つかもしれませんから」

「頑張ります……!」


 そこまではメモする予定ではなかったのでありがたいアドバイスであった。確かに何かあったときにその人物を判断するのにも使えるからだ。


 その次の日、伯爵や伯爵夫人は領地に行くとのことでリゼはお留守番である。これは良い機会であるため、フォンゼルたちと北方未開地へ行こうと話していてハシゴやロープなど、色々なものを練習場に運んでいるとラウルが訪ねてきた。


「やぁ、リゼ。これは?」

「これは……探索セットと言いますか……誰にも言わないでくださいね?」

「分かった。信用してくれて大丈夫だよ」

「それが、ちょっとですね。その、ひょんなことから北方未開地に転移石で飛べるようになっていまして。氷属性のことがわかるかもしれないので探索しようかなと。今日はお父様たちもいないので心配されないので。アイシャが残ってくれるので食事は部屋に運んでもらえますし」


 明らかに怪しげな行動であるため、話すのは気が引けたがラウルなら大丈夫だろうかとチラ見する。するとラウルは驚いていたがリゼの手を取ってきた。


「ラウル様!?」

「とても楽しそうだから一緒に行っても良いかな? 実はそういう冒険みたいなこと、憧れていてね」

「あー、大丈夫ですが夜遅くなってしまうかもしれません……」

「今日は遅くなると伝えておくよ。こんな機会は逃せないからね」


 ラウルがウインクしてきた。


「分かりました。あの、手が……」

「とても暖かいね?」

「ラウル様、私が緊張するのを知っていてからかっていますね!?」

「ははは、すまない。まったく可愛いね、リゼは。では伝えてくるよ」


 ラウルは手を離すと練習場を出て行った。リゼは(ラウル様……)と溜息をつくと、特殊な魔法石をアイテムボックスへ放り込んでいく。火属性魔法の力を付与されており、刻印をなぞると明かりが灯るのだ。それなりに暖かさもある。

 定期的に配置してあたりを照らす作戦だ。数にして五百個あるため、なんとか足りるだろう。

 詰め終わるとちょうどラウルが練習場へとやってきて、フォンゼルがその直後に入ってきた。お互いに挨拶を済ませた。


「お嬢様、くれぐれも気をつけてくださいね。何かあったらメッセージをお願いします。こちらも何かあればメッセージをしますので。転移石はお嬢様の部屋に移動しておきますね」

「うん。ありがとう、アイシャ」


 準備が出来たため、「転移」とつぶやくと、瞬時に冷えた空気を感じた。北方未開地に着いたようだ。

 例の塔の近くであるが、あたりを見渡すと物音一つしない。雪の上を歩く際の雪が潰れる独特な音が響き渡るだけだ。雪は日の当たるところは薄く、日陰には深く積もっている。

 塔の窓から侵入することにする。念のためハシゴをかけ、銀糸で固定していく。風で飛ばされたりしたら厄介だからだ。


 そして準備が整ったところでハシゴを登ることにする。フォンゼルが先行してくれるようで、魔法石を渡して登ってもらった。そして、彼は窓から中に入った。魔力感知スキルでモンスターがいないかチェックしたのだろうか、一分後に問題ないという合図があり、リゼたちも登ることにした。


『下へ続く階段には結界を張って、上から見るのが良いと思う』

『分かった。そうするね。今日はずっと透明なの?』

『うん。知らない人がいるから』

『ラウル様は大丈夫よ?』


 リアは少し警戒モードらしく、透明なままだ。といっても猫の姿でリゼにしがみついているためそこにいることは分かる。ハシゴを登り塔の中に入った。フォンゼルに渡した石が一個だけあたりを照らしている。なお、彼は魔法石を手で持てるランプに入れて、持ち手を持ってあたりを照らしていた。リゼも同じものを持ってきているため魔法石の刻印をなぞって中に入れた。すると明かりが灯る。ラウルも同じく真似るのだった。そして、階段は螺旋状になっているため、下へ続く階段には結界を張って万が一に備えた。


「まずは上に行きましょう。見晴らしの良いところからあたりを見てみたいですし」

「分かりました」

「了解。ドキドキしてきたよ。なかなかこんな体験は出来ないからね」


 しばらく登ると塔の頂上へと着いた。鐘が落下しており転がっている。特殊な紋章のようなものが刻まれているためアイテムボックスへと収納した。辺りを見渡してみる。


(一面、森と雪ね。でも向こうに塔が見える、いくつか。かなり遠いかも。あとは近くの山の中伏くらいに洞窟らしきものもあるみたいね。地面にモンスターは見当たらない。でも確実にいるはずなのよね。少なくとも遠くに見える氷の壁付近には)


 かなり遠くに氷の壁がそびえ立っており、周囲を見渡すと、遠くに塔がいくつか見えた。そして山には洞窟がある。

 リゼが考え込んでいるとリアが念話で話しかけてきた。あたりの地面を見ているため、何かを察してきたのかもしれない。


『周辺にモンスターは外にはいない。でもこの塔の下には何匹かいる』

『えっ、そうなの!?』

『うん。どこかで中級ダンジョンと繋がってしまってる。壁が崩れたのかも』

『そう……気をつけないといけないね』


 ここからは得られる情報は他にはあまりない。下を目指すことにした。


「フォンゼルさん、魔力感知で何か感じますか?」

「いいえ。索敵範囲は三十メートル以内なのですが、何もいないようです」


 リゼたちの雰囲気から危険ではあるということを感じ取ったのかラウルは頷くと剣を構え直した。気合いを入れ直したのだろうか。

 ダンジョンマップウィンドウを立ち上げてみるが、まだダンジョンの中ではないため、何も表示されていない。

 魔法石を定期的に置きながら下へと降りていく。それなりに明るいため、ある程度は視界が確保されている。ある程度降りたところで扉があり、開けてみると廊下があった。廊下にはいくつかの扉がある。ひとまずはスルーしてさらに下に降りることにした。さらに扉があったが無視して通り過ぎる。そしていよいよ一番下の階まで降りれたようだ。それなりに広い広間のような部屋であった。

 左右に二つの扉があり、フォンゼルが右側の部屋を見ながらそっと呟いてきた。


「あの部屋の向こうにはモンスターがいます」

「分かりました」


 ダンジョンマップウィンドウには相変わらず反応がない。


「何体いますか?」

「三体ほどです」

「ありがとうございます。私たちは四人なので数で上回っていますね」

「ん? 四人?」


 相手は三体いるようであるが、味方の数を四人としたリゼにラウルは首を傾げた。リアはいまだに猫の姿で透明化しているので不思議に思ったのだろう。


「あー、それはきっと、いずれ……わかるかと!」

「何だろうか。驚かされる何かがあるのかな?」


 ラウルは小声で楽しそうに呟くと、扉の方を向き直った。


「作戦は?」

「扉を開けたらアイスレイで動きを止めるので各個撃破でお願いします」

「了解」


 リゼはドアノブに手をかけると静かに引いて扉を開けた。そして中を覗き込むとこれまた大きな広間のような部屋である。ダンスパーティーなどで使われていたような大きさだ。

 そして壁を見ると一部が崩落して穴が空いていた。少しだけ光が漏れておりおそらくあそこがダンジョンと繋がっているポイントだろう。


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