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新人魔法使いオルトリアは人並みの幸福がほしい ~婚約破棄に追放されても知っていたので平気ですよ!~  作者: 日之影ソラ


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14.認めてもらえて

「オルトリア」

「フレン様! どう、でしたか?」

「ああ、凄かった。知っていたけどあの日見た以上に、君の魔法は凄いな」

「あ、ありがとうございます!」


 この人の言葉を聞くと安心する。

 不思議な気分になる。 

 フレン様と一緒に、ユーリさんとサクラがやってくる。

 ユーリさんはニコニコしながら言う。


「いやーすごかったね~ あの日以来何じゃない? ライオネス君が火傷を負ったのって」

「ああ、ドラゴンのブレス食らった時と同じだな」

「……え?」


 ドラゴンのブレス?

 そんな攻撃を受け止めたことあるの?

 ドラゴンなんておとぎ話に出てくるような怪物なんだけど……。


「サクラ、お前も何かないか?」

「……」


 フレン様に諭され、サクラが私のことをじっと見つめる。

 彼女は私に厳しい言葉をくれた。

 おかげで覚悟を再認識できたし、嬉しかった。

 悪意のない純粋な厳しさなんて、これまで感じたことがなかったから。

 ただやっぱり、彼女には快く思われていないような気がして……ちょっと怖いな。


「あ、あの……」

「別に、これくらい出来て当然でしょ」


 辛口なコメントだ。

 彼女にはあまり、お気に召さなかったのかも……。


「お兄様が認めた人なんだから」

「――ぁ」


 そう言ってすぐに、彼女は顔を背けてしまった。

 ハッキリとは見えなかったけど、少しだけ照れているように見えた。

 今のはきっと、彼女なりの最大限の賞賛なのだろう。

 なんとなくそう思った。


「ありがとうございます!」

「よし! これで彼女の実力を疑う者は、この場にはいないな?」

「おう! 身を以て体感したぜ」

「すごい新人が入ってくれたね~」

「……」


 三者三様の意見、反応。

 だけどわずかに、私を見る目が変わった気がした。

 仲間として認めてもらえた証拠なのだろうか。

 だったら嬉しい。 

 フレン様が私に一歩近づき、何かを握って手渡してくる。


「オルトリア、これを渡しておく」

「これは?」


 手渡されたのは金属のバッジだった。

 剣をモチーフにしたもので、私も初めて見る。


「ヴァルハラの一員であることを示す証だ。ちゃんと身に着けておいてくれ」

「は、はい! ありがとうございます!」


 ヴァルハラの一員……その証。

 彼らの仲間になれたという証明を握りしめて、あふれる感動を噛みしめる。

 夢みたいな気分だ。

 フレン様に認めてもらえたことだけでも奇跡みたいな出来事なのに。

 こんなにもたくさんの人に、私のことを認めてもらえるなんて。


「頑張ってきた甲斐があったよね」


 これまでの努力が報われた気がして、じわっと瞳が涙でにじむ。


「オルトリア?」

「いえ、大丈夫です! これから頑張ります!」

「ああ、期待してるよ」


 私はさっそくバッジを胸につけた。

 ずっしりと重い。

 少しだけ、身が引き締まる気分になる。

 ライオネスさんが背伸びをしながらフレン様に尋ねる。


「さーて、んで今日は何するんだ?」

「依頼を持ってきた。オルトリアに慣れてもらうにはちょうどいい案件があったからな」

「へぇ、そいつはいいな」

「さすがフレン君、準備がいいね」

「あの、すみません」


 話をしている彼らに私は右手を上げて質問する。


「依頼って、宮廷で受けていたようなものですか?」

「ああ、基本は同じだよ。といっても騎士団と宮廷じゃ、依頼の毛色が違うけどな」


 宮廷での仕事を命令しているのは国王陛下と、陛下と共に国を動かす臣下の方々だ。

 彼らは王国に必要なものを考え、それを私たちに用意させる。

 物資、場所、環境など。

 さまざまな理由から私たち宮廷魔法使いに仕事がくる。

 騎士団の仕事は主に、王国に関する街や設備の警護だと聞いたことがあった。

 魔物の大群を退けたように、騎士たちは人々の暮らしを守るために存在している。

 ライオネスさんが指折り数えながら話す。


「多いのは護衛、討伐、探索とかだな、やっぱ」

「そうだね~ 僕たちって別に、宮廷の人たちと違って何かを作ったりはできないからな~」

「んなことねーだろ? 城壁とか作ったり、壊れた建物の修理もしたことあるぜ」

「ああ、そうだったね。そういう力仕事も僕たちの仕事だよ」


 二人は会話の中で、騎士団での仕事を簡単に教えてくれている。

 気になったのは、騎士団ではなくヴァルハラとしてのお仕事だった。


「ヴァルハラも同じなんですか?」

「基本はそうだぜ? けど一番大きな違いは、何をするかは全部フレンが決めることだな」

「フレン様が決める?」


 私は疑問符を浮かべながらフレン様の顔を見る。

 依頼は陛下からの命令だ。

 それを受ける側が決められるというの?

 

「ああ、それが俺たちの特権だ。俺たちヴァルハラは王国で唯一、独断行動を許されている分隊なんだよ」

「オレたちつーか」

「フレン君が、だけどね」


 独断行動の特権。

 騎士団という組織に所属しながら、組織に囚われず動くことができる権利。

 英雄と呼ばれる彼だけに許されたそれは、まさに陛下からフレン様への信頼の表れだ。


「凄いですね」

「別に凄くはないよ。単に俺が我儘を言っているだけだ」

「そんなことは」

「ふっ、だからこそ、相応の成果が求められる。今回も重要な依頼だ」


 話しながらフレン様は一枚の紙を取り出し、私たちに見せる。

 そこにはこう書かれていた。


「盗賊団……ユニオンの捕縛?」

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