表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見てくれ『だけ』を魔女に惚れられて  作者: すしひといちなし
24/67

街道での襲撃-1-ドリチ視点

 我こそは今は亡きジュッテング王国の公爵、ドリチである!!


 一年前の戦で我がジュッテングを滅ぼした憎きに王国の王子、クイエト!!

 今こそその恨みを晴らす時!!

「ゆけ! 我が兵士達よ!! 憎き王国の王子を討ち滅ぼせ!!」


「「うおおおおお!!」」


「『雷よ! サンダーボルト』!!」


 バリバリ!!


「『炎よ! ファイアボール』!!」


 ごおおおお!!


「『氷よ! アイスサーベル』!!」


 キィィィィィン!!


 我が兵士たちが攻撃魔法を仕掛ける。その合間を縫って、弓兵が矢をを射かける。


 が!


「「「『障壁・マジックシールド!!』」」」


 ガキン!!


 王国の敵兵たちが障壁の魔法で難なく我らが攻撃をさえぎる!

 突然の襲撃に対しても一糸まとわぬ行動、敵ながら賞賛に値する。だが、我とてそれに劣るわけではない!!


「投石!! ……1! ……2! ……3!」


 続いて我は命を下す!

 魔法の障壁が張られている以上、魔法攻撃や消耗品の矢を使う攻撃は無意味だ。

 だが、何もしないとなると、障壁を張り続けたままの相手は何かをたくらんでくる――障壁の魔法を解呪するにはある程度、相手の魔法がどんなものか知る必要もある。

 だからこその投石攻撃――兵たちにあらかじめ三つの番号を振っておき、号令のあった番号の人間は投石、それ以外は自分の足元にある石を拾う――もちろん、投石攻撃用に、きき手に布を巻かせてある。それをほどき、片方を手に結び付け、もう片方を握り、真ん中に石を入れて振り回して、飛ばす!!

 この布は怪我をした時に包帯代わりになったり、武器が壊れた時には直すのにも使える。臨機応変、そのための物だ。


「師父殿、相手方の障壁魔法の解呪は?」

「待っておれ公爵殿……さすがに魔法学院を有する王国の兵士どもの障壁……じゃが、人が創りし魔術なれば人が解けぬわけがない――」

 師父は我らの魔法の師匠でありかつてジュッテング王国でその人ありと言われた人物だ。必ずや敵方の障壁魔法を解呪する方法を見つけてくれる――


「皆の者!! 我らジュッテング王国再建のために必ずやクイエト王子の首を取れ!! 正義は我らにあり!!」


 我には使命がある!! 王国を打ち倒し、不当に奪われたジュッテング王国領を奪還し、王家の血筋の者を見つけ出し、新たな国主とする!!

 これはそのための初戦!! 決して破れるわけにはいかない!!

 ああ、首都防衛のためにはかなく散った我らが同胞よ!! 父よ、母よ! 見ていてください必ずや、我はジュッテング王国を再興してみせます!!




「げへらげら~~!! なかなか苦戦しているようですねぇ~~」


 ――!?


 いつの間にか我らの後ろに聞く下品な顔をした男がやって来ていた。

「何者だ!?」

「げへらげら~~、俺はイルダ・イセリアーナ・イライザーダ、後に世界一の大金持ちになる男、金さえ出していてできればあなたに勝利をお売りします」

「いらん! これは、我らジュッテング王国再興のためのいわば聖戦! お前のような下品な男の力など必要無い!!」


 我は、イルダ・イセリアーナ・イライザーダと言う下品が服を着て歩いているような男を見てそう言った。

 まだその男の後ろにいる奴隷たちの方がまだまともな顔をしている。


「あ~~、すまないがそこの勘違い男をどこかにやってくれないか? 我はジュッテング王国再興のために私財をすべてこの兵につぎ込んでおるゆえ、謝礼は出世払いと言うことになるが……」


 我はイルダ・イセリアーナ・イライザーダの後ろにいる奴隷たちにそういった。

 はっきり言って下品男イルダ・イセリアーナ・イライザーダよりははるかに話が通じそうな気がしている。


「げへらげら~~、亡国の公爵野郎は高貴と下膳の区別も危機つかないようだなあ!」

 いや、高貴と下膳の区別くらいはつくぞ。つまり、イルダ・イセリアーナ・イライザーダは下膳で後ろの奴隷たちの方が高貴、なんだろ?


「げへらげら~~、どうやら、公爵野郎は人を見る目が無いようだ! だったら予定より人数が多いが、仕方あるまい! 行け、ルーンレイス!!」


「「「――!?」」」


『マリョク……マリョク……』


 下品男が何かしらの宝玉を天に捧げると、それに呼応するかのようにラムグリーン色の女の形をした何かが出現する――!


「何だあれは!?」

「怪物? 幽霊?」

「過去に存在していたという、魔族なのか!?」


 我が兵たちも後の異変に気づきそちらを見てしまう。そして、現れた異形を見て兵たちに動揺が走る――


「王国の敵兵に後見せるな!! 師父!! あれは……!?」

「面妖な……まさかあれが、王都で第4王子を襲ったというルーンレイスなのか!?」


 噂程度の情報ではあるが我もそれならば聞いたことがある――

 魔法学院を襲撃し、第4王子を含む何人もの人間を再起不能にしたという魔物の話を……

 情報収集に余念のない師父ならば、知っていてもおかしくはない――!!


「行けっ! 行けぇ! ルーンレイス!! みんなブッ倒しちまえ!! げへらげら~~!!」


 下品男が叫んでる!! その手の中で光る宝玉が、ルーンレイスの周りに虹色の壁を作り出し動きを制御している――


「師父!!」


「うむ、間違いないじゃろ!!」


 師父もまた、同意見のようだ!!


「全員、王国兵への攻撃は一時中断!! 投石、魔法、弓であの下品男を攻撃し、あの宝玉を奪いとれ!!」


 我は我が兵たちにそう命令する――


「おおっと、このイルダ・イセリアーナ・イライザーダにそんなことが通じると思うか!? げへらげら~~!!」


 下品男が宝玉を自分の前面に掲げ、光の壁を出現させる――


 あれも、一種の防御障壁らしい――我が兵たちの攻撃を防いでしまう――


「ちっ――」


 我はチラリと王国兵たちを見る――どうやら奴らも下品男が出現させたルーンレイスに注意がいっているようだ――が、油断はできない――


「1、2は王国兵に向き直れ!! 3はあの怪物を討滅!!」


「「「は!!」」」


 兵たちに番号を振っておいたことがここでも役に立った――三分の二の兵は王国兵に向き直り、残りはルーンレイスに自分の持つ攻撃を繰り出す!!


 だが――


『マリョク……マリョク……ヲチョウダイ……』


 ルーンレイスは繰り出された攻撃を全く受け付けず我が兵たちのもとに飛び込んでくる!!


「ぎゃあああああああ!!!」


 そして、上がる悲鳴!!


 ルーンレイスに触れられた兵が上げたものだ!!


「げへらげら~~!! これであの男の物はこの俺のもの!!」


 下品男が何かを言っている――


「公爵様!! あれは得体が知れません!! お逃げください!!」

 師父が警告してくる――

「馬鹿を言うな!! あの者たちは祖国奪還のために協力してくれている同志だぞ!! 見捨てることなどできるか!!」

「公爵様!! わしはお教えしましたでしょ! あなたは兵一人一人を大切にしようとした――その時に、兵は人ではなく物として扱えと!! 大望を叶えようとするなら小事は見逃せと!!」


「――!!」


 師父が悲痛な言葉で叫ぶ――


『マリョク……マリョク……』


 その師父もルーンレイスに触られ、悲鳴を上げて倒れる――そして、ルーンレイスは我にも………………………………




 蘇るのは、炎を上げる我が祖国――


 王国の兵によって蹂躙される罪なき民――


 磔になる我が剣をささげし偉大なる陛下――


 血の海に沈む父母――


 何度夢に見、夢であってくれと願った光景か――


 それが今我に再び襲い掛かってくる――


 それは、ジュッテング王国の滅び――


 悲しき現実――


 忘れたい恐怖!!!




「あああああああああああああ!!!」


 突如我に襲ってきた祖国の滅びの光景――


 我は知らず知らずのうちに悲鳴を上げていた――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ