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82.血と水

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。



 遠見ファーサイトの視界で、咲耶と新手の妖刀使い・贄川にえかわとの戦いを見守ることにした。


『手は出さぬのか?』


「よっぽどの事が無い限り」


 出しゃばって、ワンパンで倒すことなんて可能だ。

 けど……それじゃあ、せっかくやる気になってる咲耶に水を差すことになるからな。


 それに、咲耶には強くなって欲しい。今程度で、満足して欲しくない。

 強くなるためには、やはり数をこなすしかない。

 命のやり取りを、繰り返すこと。それが一番の訓練となる。


「咲耶ちゃん、本気……? 模擬戦時代、あんたはうちに一度も勝ったことあらへんかったやろ……?」


 贄川が咲耶を見て、小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。


「今のあんたは単に、虎の威を借る狐。しかも、可愛い可愛い子狐ちゃんえ。そんなんが、本物の妖刀使いであるうちに敵うとでも?」


「……あんま、強者ぶらないほうがいいですよ?」


「は……?」


「弱く見えますので。特に……この場においては」


「……口が達者になったもんやねぇ……。泣かしたるわ!」


 贄川が槍を構える。


『妖刀っていうわりに、フォルムは槍なんじゃな』


「まあ玉姫たまきの妖刀もデスサイズだったしな」


 なんか刃が付いてれば、妖刀だろ、的な感じで作られてるんじゃあないだろうか。

 その12本の妖刀……死花十二刀ってやつは。


『それにしても、ニエカワは凄い余裕じゃな。よほど自分のほうが上と思ってるようじゃな』


 贄川は槍を地面に突き刺す。


「一の型……【我田引水】!」


 贄川が突き刺した槍の尖端に、力が集まっていく。

 それは、地面に伝播していく。あー、あれな。


「地下水を引っ張ってきて、操作する能力だな」


 俺をやっつけようとして使った技だ。

 さて……どうする咲耶。


『血液は水に溶けてしまう。相性の悪い敵じゃ。大丈夫かのぅ』


「大丈夫だよ」


 あいつは……もう前の弱い咲耶じゃあない。

 地面から水が噴き出し、咲耶めがけて、とんでもない速さで押し寄せる。

 すさまじい勢いの水が、咲耶を飲み込む。


「あははっ。なんや、大口叩いた割に、一撃でやられるんかぁ♡ たいしたことあらへんなぁ~」


 水が……引く。そこには、咲耶が立っていた。


「なっ!? う、うちの技を食らって……無傷やて!?」


 ほう……。


「咲耶の奴、どうやら魔剣を地面に突き刺し、踏ん張って攻撃に耐えたみたいだな」


『【血湧肉躍】で身体強化し、水圧に耐えるとは……なるほど、やるのぅ』


 俺と魔王は、後方で腕を組んで、咲耶たちの戦いを見守る。


「その程度の水じゃ、私を……ううん、霧ヶ峰(きりがみね) 悠仁ゆうじの妹は殺せない」


「へ、減らず口を!」


 今度は、贄川が槍の穂先で地面を叩く。吹き出した水に乗って、贄川が咲耶めがけて突撃する。


「二の型……水滴石穿!」


『流水に乗った勢いを利用して放つ、突き技じゃな』


 贄川は咲耶に物理攻撃で勝負を挑んできた。

 馬鹿な奴だ。異能で、自分で勝ってる分野で戦えばいいのに。


「もろたぁ……!」


 贄川の槍が咲耶の体を串刺しにする。 


「この手応え……獲ったえ!」


「なにを?」


 パシッ、と咲耶が自分の体に突き刺さった槍を、つかむ。


「なっ!? ば、馬鹿な……! 岩すら貫く強烈な突きやで!? なんで生きてるん!?」


「……贄川さんが私の体に槍を突き刺す瞬間、攻撃が当たる場所に血液を集中、凝固させて……防いだ。三の型……柳緑花紅」


 血液を操作し、防御力を上げるスキルってところか。


「ば、馬鹿な!? ありえへん! 三の型やと!?」


 あいつ、なに驚いてんだろうか。


「妖刀使いの技は、数字が上がるほどに習得難易度が上がる……! 咲耶さくやちゃんは一の型しか使えん屑やったはずやのに!?」


 屑とかいうなよ……怒っちゃうぞ?

 咲耶は【血湧肉躍】で肉体を強化し、贄川の顔面を殴りつける。


「ぶぎゃぁあああああああああ!」


 ぶっ飛んでいく、贄川。

 何度も天井と地面とをバウンドして、倒れ伏す。


「あ、ありえへん……なんや、この力……。ちょっと前まで……ただの……雑魚やったのに……。一体どうして……そこまで、短期間に強うなったんやぁ……!?」


「簡単。いつも、馬鹿みたいに強い人のそばにいて、めちゃくちゃに鍛えられてきたから。これくらい強くなる……」


「なんやとぉ……!?」


「てゆーか……贄川さん」


 フッ、と咲耶が鼻で笑う。


「あなた、前に集会で会ったときと、強さがまるで変わってないですよ? ちょっと努力が足りないんじゃあないですか?」



【おしらせ】

※12/5


新連載、スタートしました!


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