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79.心配



 地下通路にて。

 妖術による攻撃を受けたが、俺の【反則剣チート・キャンセラー】で打ち消した。


 が……。


 ドバッ……!


「また水が……!? どうして!?」


「また異能を使っただけだろ」


「くっ! 桜幕!」


 咲耶が構えるのは、血の魔剣、桜幕。だが……。


「やめとけ」


「二の型! 桜花爛漫!」


 ああ、止めたのに……。

 咲耶が魔剣を振る。周囲に血でできた桜の花弁が舞う。

 凝固し刃物となったそれらが、雨あられと、通路の奥へと向かって飛ぶ。


 ジュワッ……!


「!? 桜花爛漫が防がれた!? なんで!?」


「血が水に溶けたんだろ」


「!?」


 絵の具が水に滲むように、血の刃もまた、大量の水に飲み込まれて溶けてしまったのだろう。

 押し寄せる、津波。だが関係ない。


「ほい、反則剣チート・キャンセラー


 パキィン! 再び水がかき消える。


「やった!」


「まだだ」


 またも水が押し寄せてきた。反則剣チート・キャンセラーでキャンセルはできるが……うざい。


「妖術師本人を叩かねえとな」


 また水が来る、反則剣チート・キャンセラーでかき消す。また来る……。


「うぜー」


「……お兄ちゃんは水を消して。わたし……妖術師を叩く」


 ……なんと。妹も戦うというのか。なるほど……。


「却下」


「……子ども扱いしないで」


「いや、まあその気持ちがないわけじゃあないんだが……相性が悪い」


 血は水に溶けちまうからな。

 俺がそう言うと、咲耶は不機嫌そうな顔から一変、ニッと笑う。


「相性が悪いから、行くなって言ってるんだね」


「まーな」


「わたしが足手まといって思ってるからじゃあないんだね」


「? なにそれ」


 足手まとい……?

 なぜそうなるんだ?


「いいや、それで。大丈夫、【血湧肉躍しんたいきょうか】なら、身体強化の術なんだから、相性とか関係ないでしょ」


『なるほどの』


 と、魔王。


『桜花爛漫と違い、血湧肉躍は自分の中の血流を操作するだけ。体外に血を出す技じゃあないから、水を受けても平気ということじゃな』


 まあ、それならいいか。


「うし、じゃあそれでいくか」


「うん!」


 再び水が流れ込んできたので、俺は反則剣チート・キャンセラーで、異能を消す。


「今!」


「血湧肉躍!」


 咲耶が異能を発動。髪の毛が赤く染まっていく。

 身をかがめると、ダンッ! と強く地面を蹴って、通路の奥へとすっ飛んでいく。


「…………」


 この妖術、多分妖刀使いのもんだよな。……まあ、アイツのことだ、後れを取ることはないだろうが……。


『なんだ、やっぱり妹を心配しておるのではないか』


 ……黙っといてな。



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― 新着の感想 ―
水流してくるだけならアイテムボックスに収納しつつ帰ればいいだけなのに…
水使い、強そうだから咲耶、負けそう。
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