77.新宿ダンジョン
そして、東京の地下で、妖刀使いたちの集い……妖刀集会が行われることになった。
俺、咲耶、ももか、玉姫の四人はJRに乗って……新宿駅へとやってきた。
「地下で行われるんじゃあなかったんかい……?」
「……そうよ。ここ、新宿駅の地下で行われるの」
「なんで新宿……?」
で、新宿駅にきたんだが……。
「なんっじゃこりゃ……。人、多過ぎじゃあねえか……」
なんか新宿駅って、やたらと出口が多かった。あと、地下に通路がいくつもある。
地下から地上への出口が、わ、わかりにくい!
え、小田急……? え、こっちは京王で……え、え、ええーーー!?
「まじのダンジョンじゃんこれ……」
都内住みの俺だけど、新宿の地下に来ることってあんまなかった。使ってもJRだし (地上) 。
「まさかここまで新宿地下が入り組んでるとはなぁ……」
「……お兄ちゃん、こっち」
「え、どっち……」
「……もうっ」
咲耶が、そっ……と俺の手を握ってきた。
……小さな手だ。でも……固いな。マメができてらぁ。それだけ、刀を握ってきたんだろう。
こんなちっこいのにな……。苦労かけたな、我が妹よ。
「……こ、これは別に、お兄ちゃんが迷子にならないようにするためだから。別に深い意味とかとっ、特にないから……! 勘違いしないように」
「ぐす……」
「……何で泣いてるのっ?」
「いやぁ、咲耶は……えらいなぁって思って」
「……なんか、複雑」
手をつないで歩く、霧ヶ峰 悠仁兄妹。
そんな様子を、ももかと玉姫はじとーっと見つめてきた。
「なに?」
「見せつけてくれるじゃあないのよっ、だーりんっ」
「見せつける? なにを」
「咲耶とのいちゃいちゃっぷりをねっ!」
いちゃいちゃあ……?
「……べ、別にいちゃついてないし」
「そうだぜ! これは俺が迷子にならないようにって、咲耶が握ってくれてるだけで、別に他意は痛ったたたたたたたたたっ!?」
咲耶が俺の人差し指を、あらぬ方向に曲げてきたっ。
殺意があれば事前に気づける。だが……俺は気づけなかった!?
害意を持ってやってるのに!?
「咲耶……おま、おまえ……すごいな。殺意も無く人を傷つける事ができるなんてっ。暗殺者か!? ぎゃぁああああああいたいぃいたいたいですやめてくださぃいいい!」
なんで咲耶怒ってるの!?
「も、ももかぁ……玉姫ぃ! たすけて! 咲耶を止めて!」
「「ご愁傷様」」
なんで止めてくれないの!?
「ま、魔王ぅう!」
『くく……勇者よ、サクヤに謝るのだ。そして「お前が大好きだよ」と伝えるのだ』
はぁ? なんで今このタイミングで……?
『女の子は常に不安なのだよ』
意味分からん……が、魔王さんの解決策をとることにしよう。
「咲耶、すまん。それと……お前が大好きだよ……」
こ、これで本当になんとかなるのん?
いやまさか無理……って、あれ?
指を曲げるのを、止めてくれた。
『すげえ……魔王さん、どうなってるんすか?』
『くく……そこは言えぬな。乙女の心の中を勝手に代弁などできぬ』
なんでそこは教えてくれないんだ……。わからん……。乙女心、わからなすぎる。
異世界は……シンプルだったなぁ。弱肉強食。周りに居る敵、すべて殺せばいい。そんだけだったし……。
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