76.対策
「で、妖刀集会のことなんだけど……」
「話進まねえなぁ……」
さっきからその話をしようとするのに、ももかたちがあーだのこーだの言ってて、ちっとも進まん……。
『くく……おぬしが悪いぞ』
「え、俺ぇ……?」
俺なんもしてないじゃんよぉ。
『くく……いい加減、誰か一人を選ぶがよい』
「誰か一人って……?」
『それか、全員娶る覚悟をするんだな』
「わけわかんねー……」
選ぶとか、なに? ギャルゲーかよ。
てか「娶る」ってなんだよ。何時代の言葉だよ。
「話を戻そう。妖刀集会は東京の地下で行われる」
「へえ……地下で……」
「地下には我ら妖術師が移動するための専用通路が存在するんだ」
「ほぉん……そんなのあるんだ」
「ああ。迅速に妖魔の元へ行けるようにな」
と、玉姫が説明する。
あれ……?
「咲耶たち、それ使ってたっけ?」
「「…………」」
ばっ、と咲耶とももかが顔を逸らす。おい……?
「あたし……その、東京の地下鉄って、乗り換え苦手で……迷子になっちゃうから使わなくて……」
なるほど。さすがポンコツ。
「咲耶は?」
「……そんなのあると知らなくて」
知らないんかい……。
「まあ、咲耶くんは、死花十二刀の中で一番若いからね」
「なにそれ? しかじゅうにとう、って」
「12人、12本ある妖刀所有者たちのことだよ」
「ふぅん……」
でも、ももか達3人は、もう妖刀使いじゃなくなったから、実質9人じゃね? 妖刀使い。
「ここにいない9人全員が集まる感じなの?」
「そうだね。議題は、『霧ヶ峰 悠仁をどうするか』だ」
「俺をどうするって……」
別にどうされようが、どうでもいいんだけど。
「意味の無い話し合いよね。そこでもしゆーじを処刑するとか決まったとしても、妖刀使い、魔剣使い全員が束になってかかっても、ゆーじには勝てないのに」
ももかが俺の言いたいことを代わりに言ってくれた。
「ほんとだよな。時間の無駄だ。つか、そんな意味のねえ話し合いしてるあいだに、妖魔が出て暴れたらどうするんだっつの」
妖魔は京都、長野、東京にしか現状出現しないように、まじないが掛かってるらしい。
東京はともかく、長野と京都はどうするんだよ。
妖刀使いが離れたら、その間、襲われちゃうじゃあないかよ。
「……長野と京都には強い妖術師が沢山いるから、街は平気だとは思う」
と咲耶が言う。
「強い妖術師ったって、妖刀使いでもないんだろ?」
「……それは、まあ」
「こんなとこに無駄な時間割くくらいなら、自分とこ守っとけよなー」
って、俺は思っちゃうけどね。
「その間に妖魔に襲われたらどーすんのよ。馬鹿なの? 死ぬの?」
ったく、長野と京都の妖刀使いには、一言言ってやらないとなー。
お前ら、ちゃんと街の平和を守る気あるの? って。
健気に東京を守ってきている、うちの妹を見習えやこら、って。
「で、いつやるの、妖刀集会」
「「「今夜」」」
「そうかそうか……って、今夜ぁ……?」
なんだ、また急だな……。
『いや、今夜集会があるから、その前に東京のこやつら三人が集まったのではないか?』
………………魔王さんの言う通りっすね。
『しかしおぬしの懸念ももっともじゃな。全国の妖刀使いが集うことで、手薄となる場所に妖魔が襲いかかってくる可能性もある』
……ふぅむ。
一応、対策はちょこっととっとくか。
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