67.味方増える
とりあえず、心霊スポットに住み着いていた妖魔は、妖術師たちの手によってすべて滅された。(もちろん、俺も手伝ったけど)
で、忘れかけていたが、俺らはそもそも心霊スポットロケをしにここへ来たんだった。
俺、咲耶、駒ヶ根ユリア、そして白馬玉子(玉姫)の四人で、スポットの中を探索するという企画だ。
もちろん、妖魔と戦ってるシーンは、俺の【忘却】によって完全に消去済み。
その後もロケは普通に続いた。まあ、妖魔がいなくなったとはいえ、ただの廃墟であることに変わりはなかったからな。
普通に廃墟を見て、ユリアが「きゃー!」とか騒いだり、玉姫が(演技で)怖がったりと、それなりに見せ場を作っていた。
「いやいや、いーい絵が撮れたよ~! 真剣有難~! いーやーはー!」
御嶽山監督が咲耶たちにお礼を言っている。ぶんぶんと手を握って、振っている。
「特に咲耶ちゃん、よかったよ~! どうどう? 芸能界に興味とか?」
「……ありません。わたしには、やるべきことがあるんで」
やるべきこと、つまりは妖魔退治のことだ。ほんと、我が妹はマジメである。そこが良いところでもある。うむうむ。
「そんなこと言わないでさぁ~。ね、女優とか興味ない? 君はアイドルにもなれそうだっ!」
「……結構です。それでは」
ぷいっ、と御嶽山監督に背を向けて、俺のほうへとやってきた。
「いいの?」
「いいの」
「でも妖魔退治なんて誰でもできるようなこと、別に咲耶がやらんでもいいんだぞ?」
むすっ、と咲耶がすねたような顔になる。
「……お兄ちゃんは咲耶がそばにいちゃ、嫌なの?」
「いや? そんなことないけど……」
「咲耶は、お兄ちゃんと一緒に妖魔を倒すから」
「はぁ……。でもほら、せっかく妖刀の呪いがとけて、十八歳で死ななくてすむようになったし。浅間の式神たちが雑魚を倒せるようになってきたしさ。別に咲耶が出張らなくても俺もいるし」
むすぅう~~~~~~~~と、さらに咲耶が不機嫌になってしまった。ええー……なんなの?
「俺また地雷踏んじゃった?」
「……知らない。帰ろう」
「あ、はい……」
どうやら咲耶姫はお冠のようすだ。怒ってる顔もキュートである。
「おい、悠仁」
「ん? おお、なんだよ玉姫」
白馬玉姫が俺に話しかけてきた。今はぷるんぷるんな全裸姿ではない。俺が魔法で服を作って着せているのだ。
「まず、この服、礼を言う。すごいな。着ているだけで、男に見えるなんて」
玉姫が着ているのは、初対面の時に着ていたのと同じデザインの白スーツだ。
ただし、これには俺の【認識阻害】の魔法が掛かっている。
これを着ていれば、男に見えるようになっているのだ。
「ぼくのために、こんな凄い宝具を作ってくれて……本当に感謝するよ。心から礼を言う」
「宝具? いや、そんな誰でも作れるようなもんだし、大げさだなー」
玉姫がじっ、と俺を見ている。
「本当に……おまえは、この世界の人間じゃあないんだな」
「え? いや、一応この世界の人間だよ。向こうに行って、帰ってきただけだけど」
「……そうだな。おまえは、たしかに人間だ」
なんか知らんが、玉姫が微笑んでいた。
「近く、妖刀集会があるだろ?」
「なにそれ?」
咲耶が俺の脇腹をつねってきた。いったたたた。
「……全国にいる妖刀使い、十二人が東京に集まる話し合いの場。来てたでしょ、案内が」
「あーあー……ありましたな」
たしか、俺が総監部をぶっ潰した件について、話し合いたいんだっけか。
「多くの妖刀使いが、お前のことを怪しんでいる。妖魔だとな」
「……でしょうね」
と咲耶が同意する。ひどいー。
「でも……ぼくはおまえを、人間だと主張するよ。弱者を助けるその姿は……うん、立派な人間だ」
「…………良かった」
と咲耶が安堵の息をつく。おおん……?
「あのー、だから最初から人間ですけど?」
「「…………」」
じとー、と二人が俺を見てくる。え、なに……?
「こいつ、行間を読むとか、できないのか……?」
「……ごめんなさい、玉姫さん。お兄ちゃん、人間だけど、人の心とかない感じなんで」
ええー……どいひー。
えっと、なに? 何が言いたいの玉姫は?
「魔王ぅ~」
『くくく……人間とは、面白いのうっ』
「いじわるしないで教えてくれよぅ」




