60.取り憑いた霊を取り除く
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
白馬玉姫は、全裸のまま、か細い腕で自分の体を抱きしめてしゃがみ込んでいる。
「あうぅうう……」
「……変な奴だな」
「おまえにだけは言われたくない!」
『クク……。タマキの言う通りじゃな』
二人から変な奴扱いされてしまった。なんでや?
俺、至って普通だと思うけど?(※異世界基準)
『くく……。そろそろこの結界から出てはどうじゃ?』
「あ、そうだった」
「人妖の作った領域結界から、ぼくを助けようとしてくれたんだね」
待て待て。新ワードが二つも出てきたぞ。
「なんだよ、人妖って? 領域結界ってのは?」
「人妖は……人が妖魔化したものです」
「ああ、人間の妖魔か。それで領域結界は?」
「結界術の奥義……。己の心の形を具現化し、自分に有利な世界を創り出す術です」
「ふぅん……」
なるほど。まとめると、ここは寮に住んでいた誰かが人妖と化し、その精神世界に囚われている、と。
で……。
「その人妖は、お前の中にいるんだよな?」
「うん……。もう完全に怖がって、出てこないけどね」
怖がってる?
「なんでだ?」
「……きみ、本気で言ってるの? それとも天然なの?」
「どっちでもないんだが……。ていうか、いつまで全裸でいるつもりだ」
「~~~~~~~ッ! うるさいうるさい、ばかばかばかっ!」
目に毒だ、ったく。
俺はアイテムボックスから上着を取り出す。
「ほれ、これでも羽織っとけ」
ぱさっ、と玉姫の肩に上着を掛けてやる。
「……きゅん♡」
「きゅん?」
「な、なんでもないっ! ただ、裸の女の子に上着を掛けてあげるなんて、意外と優しいところもあるんだな、とか、ぜ、全然思ってないんだからねっ!」
「あ、そう」
「~~~~~~~ッ!」
バシバシと俺の腕を叩いてくる。
「痛いだろ。それに、乳が揺れるぞ。さっさと袖を通せ」
「うっさい、ばーーーーーか!」
やれやれ、口の悪い子だぜ。うちの咲耶や幼卒さんを見習ってほしいもんだ。
『クク……。おぬしは本当に現代日本人かのぅ? ツンデレを知らぬとは……』
知ってるし。ていうか、お前こそ本当に異世界魔王かよ……。現代に適応しすぎだろ……
閑話休題。
玉姫の中に、人妖が潜んでいる。
『勇者よ。どうやら、タマキと人妖の魂が、完全に混ざりきってしまったようじゃぞ』
「あん? 魂が混じりあった?」
どないこっちゃ?
すると突然、玉姫が、かくんっ、と意識を失ったようにうなだれた。
そして、再び顔を上げる。その瞳は、禍々しい光を宿していた。
「――ふ、はははは! そうだ! この女とわたしは、完全に融合したのだ!」
玉姫に憑りついた人妖が、勝ち誇ったように叫ぶ。
「つまり、どういうことだ?」
「ふん! 貴様にも分かるように説明してやろう! 我らは今、ハムエッグのような状態なのだ!」
「……わけわからん」
『なるほどな。タマキを卵に、人妖の魂をハムに例えたか』
「え、分かるのか、魔王?」
『うむ。ハムと卵、二つを完全に混ぜ合わせて焼いたハムエッグ。そこから、ハムだけ……つまり人妖の魂だけを取り出そうとするとどうなる?』
混ざり合ったハムエッグから、ハムだけを?
ふむ。
「そんなの、卵焼きがボロボロになるだけだろ?」
『然り。つまり、そやつをタマキから無理に引き剥がそうとすれば、タマキの魂もろとも傷つき、崩れ去るということじゃ』
ほぉん、なるほどねぇ。
「そうだ! わたしとこの女はもう混ざりきってしまったのだっ! つまり、わたしをここから引き剥がすのは不可能! よ、よって貴様は、ここからさっさと立ち去るがいい!」
(……なるほど。なまじ知恵が回るからこそ、こんな手を使うか。多少卑怯だが、生存戦略としては悪くない)
「お前の主張は理解した。が、玉姫をこのままにはしておけん。悪いが、ここで消えてもらうぜ」
「む、無理だと言っているだろうがっ! 混ざりあったハムエッグから、どうやって卵を傷つけずハムだけを取り出すというのだっ!」
俺は右手を、スッと前に突き出す。
「《反則剣》、起動」
キラリと俺の手に、白銀に輝く剣――反則剣が出現した。
聖武具で固めた俺の力の結晶体。
この剣は、あらゆる異能を無効化し、異能による傷を癒す。
魔法、妖術、呪い……この世の理から外れた存在、その全てを。
妖魔によって、玉姫の魂が害されたというのなら……。
「――もーどれ」
ぽんっ、と。
俺は剣の柄で、玉姫の額を軽く突いた。
パァァ……ッ!
玉姫の体から、眩い光とともに、黒い靄のようなものが分離していく。
『な、なにぃい!? 完全に混じりあった魂が、分離しただとぉおおおおおお〜!?』
人妖が、びっくらこいている。
『ば、馬鹿な……! ありえない……! ハムエッグを分離できるわけがない……!』
「うん。だから、調理前の状態まで戻しただけだ。混ざる前の卵とハムなら、簡単に分離できるだろ? ほら、簡単だ」
唖然とした表情の、人妖。
そして、玉姫。
「な、なんて反則的な存在……」
「あれ? 知らなかったのか? 俺の剣、反則剣って言うんだぜ?」
「いや、剣もそうだけど、それを軽々しく扱えるきみがおかしいんだよっ!」
おかしい?
「個性的ってことか?」
「規格外に! 化け物じみた強さを持ってるって言ってるの!」
「あ、そ。んじゃ……」
俺は分離した人妖の魂に、剣先を向ける。
「ちょっくら、死んでみるか?」
『…………』
『クク……。勇者よ。完全に、気を失っておるぞ』
あらら、根性のない奴だな。
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