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47.妖刀使い・白馬の実力

 




 心霊番組に、素人枠として出演することになった俺……。

 平穏に生きたいという俺の願いは、どうして、なかなかかなわないんだろうか……。


 困ったもんだぜ。

 場所は八王子にある、廃校の寮前だ。


 ユリア、俺、咲耶さくや、そして……白馬 玉子の四人が立っている。

 なんか……めっちゃ人いるな。あと眩し……。なんだこれ、眩しすぎる……。


 照明って言えばいいのかな。馬鹿でかいライトを正面から浴びせられている。眩しすぎて目が開けられん……。


「フッ……」


 玉子のやつが俺を見て鼻で笑ってきた。


「なんだよ……?」

「いや、一般人だなと思ってさ」

「そうですが? 自分は違うとでも?」

「無論……だ!」


 このアホはカメラが回ってないのに、口にバラをくわえてかっこいい(と自分で思ってるらしい)ポーズを取る。クソキザ野郎め。


「僕は生まれながらのスター・オブ・ザ・スターなのさ!」

「……はぁ?」


 なんそれ。スターの中のスター……? アホらしい。


「親の顔が見てみたいぜ、こんなののよ……」

「フッ……どうせ君も、我が父を知ってるんだろう?」

「あ? なにそれ」


 どうせ知ってる? 何言ってるんだこいつ……??

 まるで、知ってて当たり前みたいな言い方だな。しかも、どこか投げやりっつーか、自嘲してるようにも聞こえる。


「君はテレビを見ないのかい?」

「あんまし」


 もっぱらスマホだ。


「…………」

「んだよ」


 なんか、白馬の野郎、目を大きくしていた。


「いや……珍しいものもいるものだな。我が父の名を知らぬとは」

「人を珍獣扱いするなよ。知らないもんは知らねーっつの」


 すると白馬は「そ、うか……」とまだ驚いている様子だ。


「変な奴だな」

「お前に言われたかねーよ」

「敵から一般市民に格上げしてやろう。喜べ市民」

「うざ」


 なんなのこいつ……。


 で、だ。撮影が……始まる。


「オープニングの撮影いきまーす!」


 とスタッフらしいやつが言う。オープニングか。誰が仕切るんだ?


「本番3秒前……2…………」


 1は無言、そしてスタッフがゴーサインを出す。


「はいどうも! 駒ヶ根ユリアです……!」


 あ、ユリアが仕切る感じなのか。まあそうか。


「今、あたしは西東京にある、とある心霊スポットに来てまーす! 今日はここで友達と一泊する、という趣旨でやってこーと、思いまーす!」


 なんかノリがテレビっていうかユーチューブっぽいな……。最近テレビ、特に心霊番組なんて全く見ないからわからないけど。こんなノリなの?


「じゃあ一緒にこの事故物件に泊まってくれるメンバーを紹介します! まずは皆様ご存じの……」

「HI! 全国の子猫ちゃんたち」


 さ、さぶ……。全国の子猫ちゃん? 気持ち悪ぉ〜……。


「皆の白き恋人、白馬玉子……さ、ベイビー!」


 ばちこーん! とウィンクするアホ馬。うげえ……白き恋人って。製菓会社から訴えられるだろ……。


「そして今回は友達二人を紹介します! まずは……霧ヶ峰 咲耶ちゃんです!」

「…………ど、どうも」


 咲耶がうつむきながら言う。


「どうしたのー? 咲耶ちゃん? 緊張してる〜?」

「……あ、当たり前でしょ」

「そかそか! 当然かっ。でもでも大丈夫! なんとかなるよー!」

「……根拠は?」

「なんとか……なる!」

「……根拠ないじゃないっ」


 二人が仲良くやり取りしている。咲耶が美人だから、まあ絵になるな。


 ……って、ん? 咲耶とユリアが喋っていると、寮のほうからひたひたと足音を立てながら、そいつがやってきた。


『ふー……ふー……ころ、ころ、コロス……ふー……』


 両手に釘付きバットを握った、やべールックスの男がやってきた。


『おそらくこの寮に住み着いて、妖魔となった怨霊じゃろうな』


 悪霊が妖魔になるケースもあるのか。だが、まあ。


『雑魚じゃな』

『雑魚だな』


 血走った目と釘バットというインパクト大な見た目の割に、そんなに強そうには見えない。


「! 待ちたまえ君たち……!」


 白馬の野郎が待ったをかける。なんなん……?


「どうしたの、玉子ちゃん?」

「悪霊が……近付いてきてる……!」


 なんだ、あいつ霊感あるのか。


「悪霊? まじで!?」


 ユリアは完全にビビっていた。


 一方、咲耶は首をかしげている。あら?


『もしかして……咲耶見えてない? 悪霊』

『!? いるの……!?』


 念話で会話した。あら、咲耶さん見えてないようだ。おかしいな。咲耶は魔剣使いとなったことで霊感がアップしたはずだ。


 この程度の雑魚妖魔、視認できるはずなのに(妖魔はランクが上がると、妖刀使いや妖術師たちでも見えなくなるのだ)。


「フッ……! 二人とも、僕の後ろに!」


 ばっと白馬の野郎が胸に差したバラを手に取る。


「煌めけ……! 月刀【すすき】!」


 ……は? 月刀……【すすき】ぃ……?


 瞬間、やつの手に握られていたバラが輝く。光り輝くと、次の瞬間、やつの手には一本の鎌が握られていた。


 死神が持つようなデカい鎌だ。刃の部分が弧を描いており、まるで……月のようである。


「鎌……?」

「悪即斬……!!」


 白馬は鎌を振るった。ズバンッ……!


「フッ……ミッションコンプリート」


 やつの手には、再びバラが握られていた。ってか、え? あいつ何やってるの……?


「全然見当違いの方向に攻撃してんじゃん……」


 白馬の攻撃は、悪霊からかなり離れた場所に着弾したのだ。

 当然、悪霊は無傷。ええー……ダサい……。もしかして、こいつ悪霊が見えてないのか? え、てか……月刀【芒】って、もしかして妖刀使いなんこいつ?


『だからそう言ったじゃあないか……』


 と、魔王さん。まじか……。ってか、アレ……? 妖刀使いって女子しかなれないんじゃ……あれぇ……?


『コロコロコロコロ……!』


 悪霊が白馬どもに襲いかかってくる。あーもう、役に立たねえなアイツ……。つか、白馬があんなでけえ鎌振り回したのに、周りみんなノーリアクションなんだけど……。


『それはの、勇者よ。やつが超スピードで動いており、一般人では動きが視認できていないだけなのじゃ』


 ほえ……? 超スピード? いや、普通に一部始終見て取れましたけど……?


『それはおぬしの体が常人ではないからじゃ。一般人視点では、ハクバが妖刀を解放し、攻撃したところは見えておらんぞ』


 まじですか……。つか、まだ悪霊、ゆっくりこっちに近付いてくるんだけど。これはあいつの動きがトロイのか、あるいは俺の動体視力がやばすぎるのか。


『いや後者に決まっとるじゃろうが……』


 まあいいや。俺は近くにあった小石を手に取って、ぴんっと指ではじく。

 ボッ……!


 魔力をまとった小石は、悪霊をぶっ飛ばす。よし。

 どがぁああああああああああああん!


「あ」


 やべ……。小石を指ではじいただけなのだが、勢い付きすぎたのか、小石が寮の壁を破壊しちまった……。


「えー、なになに!? 寮がぶっこわれてるんですけどー!?」


 とユリアが驚愕する。まあそりゃそうだよな……。


「は! もしかして玉子ちゃん……これ、悪霊の仕業ってこと!?」

「い、いや……わたしにもわからない……うぉほん! そうさ、悪霊の仕業だね!」


 いや俺のせいなんすけど……。てか、まじか……白馬のやつ、妖刀使いだったか……。


 でもまあ、たいした強さじゃあないな。やっぱり。

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★新連載です★



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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

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