40.妖刀集会
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
はぁ……悪目立ちしてしまったぜ……。
なんだって、こうなっちまうんだろうか……。
よし、目立たないように頑張ろう。
「悠仁~♡」「ゆーじくーん♡ お昼たべよー♡」
……昼休みになった瞬間、ももかとユリアが俺の元へやってきた。
俺は……頭を抱えた。
「美少女転校生と、めったに学校来ないアイドルと、一緒にお昼だとぉお!」
「くそがぁ……!」
「遺書の準備はできてるんだろうなぁ、霧ヶ峰ぇええええええええええええええええ!」
……野郎どもからの、すさまじい殺気がビシバシ飛んでくる。まあ、異世界の魔物と比べりゃ可愛いもんなんだけどさっ。
「あいたたたた、俺はトイレにいくぜ!」
と言って、ももかとユリアのもとから立ち去る。
教室を出た瞬間に転移魔法を発動。俺は一瞬で屋上へとエスケープだ。
「はあ~……やれやれ」
屋上の給水タンクの上に乗る。手すりもない、かなり高い場所だ。でも俺はここが気に入ってる。誰も上ってこられなくて、静かだからな。
「ふー、やれやれ」
給水タンクの上で、ごろんと寝転ぶ。
「人気者だなぁ~、勇者よ」
人間姿になった魔王が、俺の隣に顕現する。爆乳の長身美女である。
「学校でその姿はやめてくれよ。目立っちゃうだろうが」
「くく……だから人目がないところで顕現してるのだろう?」
気の利く魔王さんである。
「して、勇者よ。昼ご飯はどうする?」
「あ? あー……まあ、一食くらい食わなくても大丈夫だろ」
食堂なんて行きたくないし、コンビニ行くのも面倒くさい。
かといって、ももかたちと一緒に飯を食ったら、目立っちまうからな。
「くく……食事はしっかり食べないと、体に悪いぞ」
「お前ほんとに魔王かよ……」
どっちかっていうと母ちゃんみたいだぞ……。
「お兄ちゃん」
「ん? 咲耶……?」
給水タンクに、咲耶が上ってきた。俺が体を起こすと、彼女はため息をつく。
「あれ、なんでここがわかったの?」
「帰蝶に調べてもらったの」
「あ、そう」
咲耶の周りを、式神の蝶々が飛んでいる。
「で、何しにきたの?」
「……別に」
咲耶は俺の隣に、すとんっと腰を下ろす。そして、ぴったりと体を寄せてきた。
「……? どうした?」
「何でもない……ばかお兄ちゃん。学校で他の女の子にデレデレして」
「いやしてませんよ、咲耶さん……どこ見てるんだよ……」
「ふんだ……」
咲耶の膝の上にはバスケット。かぱっ、と蓋を開ける。
「おお、うまそ」
「ふんっ♡ ほめても全然うれしくないけどっ♡」
中にはサンドイッチ。具だくさんだ。卵はパンパンに挟まってる。
ハムチーズなんて、少しあぶってるみたいで、とろっとしていた。
咲耶は無言でもぐもぐ。くっそー、うまそうだ。なんか腹減ってきたな。
「べ、別にお兄ちゃんのために多く作ったわけじゃないけど、ちょっと作り過ぎちゃったから、その……あの……ど、どうしてもっていうなら、分けてあげてもいいけど、どうしてもっていうならっ」
「え、いいの? じゃあどうしてもっ!」
「しょ、しょうがないなぁ~♡ どうしてもっていうなら、分けてあげるっ! はいどうぞっ!」
「お、さんきゅー!」
咲耶からハムチーズを受け取る。うんまっ。
やっぱハムとチーズの組み合わせは絶品だ! ん? ローストビーフまであるじゃんか! ひぇー、手が込んでるぜ。
「おまえ、こんなうまい弁当、毎日作ってるのか?」
「ううん。いつもはギリギリまで寝てるから作れない」
「あ、そう?」
「うん……妖魔退治って、明け方まであったから」
夜明けまで働いて、ギリギリまで寝て、登校して。
それが彼女の日常だった。でも――。
「お兄ちゃんのおかげだよ。朝、余裕を持って……学校に来られてる。日常を……謳歌できてる」
咲耶が微笑みながら言う。
「ありがとう。お兄ちゃんがいてくれて……本当に良かった」
妹め。可愛いこと言ってくれるじゃあねえか。兄ちゃんもうれしくなっちゃうぜ。
「おうよ。これからも、どんどん頼ってくれ」
「うん……。でも、これからもっと大変かも」
「どういうこと?」
咲耶が俺を見る。懐から一枚のはがきを取り出した。
『妖刀所持者定期集会のお知らせ』
「妖刀所持者……定期集会?」
「うん……。妖刀使いって全国に散らばってるけど、たまにこうして集まって話し合いするの」
「ほーん……それで?」
「……毎年開催地が異なるんだけど、今年は……ここ、東京なの」
「へー……だから?」
咲耶が、もう一枚、同じはがきを取り出す。表面には『霧ヶ峰悠仁様』。
「俺も出ろってこと?」
「多分」
めんどくせえ、って気持ちはある。でも……だ。妖刀使い達が集まってくるなら、それはチャンスかもしれん。
「残りの妖刀使い達の呪いを、一気に解呪するチャンスだな」
妖刀には、十八歳になると死ぬという呪いがかかってる。
解き方は、もう解明できてる。それを残りの連中にもやってやる。咲耶だけ解呪したら不平等だし、あとで咲耶だけずるい、なんて言われる(責められる)のも嫌だ。
「……あのね、お兄ちゃん。多分だけど……妖刀使いたち、みんなお兄ちゃんを敵視してると思う」
「なんでや」
はぁ……と咲耶が深々とため息をつく。
「あのね……お兄ちゃんってこないだ、妖術総監部、ぶっ潰したでしょ?」
「そうだな」
「お兄ちゃんは、妖刀使い達の総本山を破壊した“やばい男”って見えない?」
「あー……」
そっか。例えるなら、社員たち(妖刀使い)の所属する会社(総監部)を、ぶっ壊した男だもんな。うん……やべーやつだ。
「そんないやつの言葉に、皆が耳を傾けぬかもしれんということじゃな、サクヤよ?」
「魔王さんの言うとおり。しかも、妖刀の解呪方法なんて今まで存在しなかった。デマって思われてもおかしくはない」
なるほどね……。
「お兄ちゃんのやること、困難が伴うよ。それでも……やるの?」
「おうよ」
「……ふん」
あれ、急に不機嫌になったぞ……?
「お兄ちゃんの魂胆は、わかってるもん。どうせ“妖刀使いの美少女達の呪いを解いて、『好き、抱いて!』って。女の子ゲットのチャンスだ”って思ってるんでしょ。わかってるんだから、ふんだ」
「? いや、普通にかわいそうだし。それに……咲耶だけ呪いを解いて後知らんぷりしたら、咲耶が他の連中から非難されるだろ? それが兄ちゃんは嫌なんだよ」
「!」
咲耶が目を大きく見開く。なんそのリアクション……?
「つ、つまり……お兄ちゃんは、わ、わたしのために……他の子たちを助けるってこと?」
「まあそうなるね」
妖刀使い達を哀れだと思う気持ちは、共通してあるけどな。
「そ、そっか……お兄ちゃんは、わたしのために……ふ、ふぅん……」
なんかそっぽ向かれてしまった。
「俺、なんか怒らせるようなことしたかな……?」
「くくく……勇者よ。とりあえず、せっかく咲耶が早起きして、兄のために作ってくれた弁当を、温かいうちに食べてはどうだ? わざわざ温めてきたんだぞ、この娘は」
「え、そうだったの?」
咲耶が異能を発動し、機敏な動きで魔王に飛びかかる。だが魔王は軽やかにそれを避けた。
「なぜ言う!? なんで言う!?」
「くくく……我は魔王だからな。人の嫌がることをするものだから、わはははっ」
しかしそうか……兄ちゃんのために早起きしてくれたのか。くぅ。いい妹だぜ。
「うめ、うめっ」
「くく……ほらサクヤよ。兄が喜んで弁当を食べているぞ? もっと喜べ……ああ、もう喜んでいるか」
「ばかっ、もうっ、やだこの魔王勇者コンビっ!」
咲耶のうまいお弁当を、たらふく食った。はー美味しい~。
「悠仁! 見つけたわよ!」
給水タンクの上に、よじよじとももかが上ってきた。
「おう、よくわかったな」
「葛葉に探してもらったわ!」
便利だな式神……。
「悠仁っ、お弁当を食べましょう!」
じゃんっ、とももかが手に持っていた包みを突きつけてくる。
「悪い、もう食っちまった」
「えー! そっかぁ~……そうよね。悠仁も自分のお弁当あるものね。ごめんね、何も言わず作ってきちゃって」
良い子である、ももかちゃんは。なんだか申し訳なくなってきたな。
「ほっ」
俺は右手のひらを上に向ける。ずずずず……と魔力を集中。
ぱき……ぱきぱき……と、青紫色の結晶になった。
ぐう……と腹が鳴る。
「腹減った。それくれよ」
「! いいの?」
「おう」
「わーい♡ 悠仁ありがと~♡」
ももかから弁当箱を受け取る。ぱかっと開けると、なんともうまそうなのり弁。
箱の半分にのり弁、もう半分にはフライや卵焼き。
がつがつ……と食べる。
「ねえ、お兄ちゃん。さっきたくさんサンドイッチ食べたのに、まだ食べられるの?」
「おう。ご飯で得たエネルギーを、魔力に変えたからな」
隣に置いてあった紫色の結晶を、咲耶がつつく。
「これ、魔力?」
「そう。結晶化させた魔力。取り込んだエネルギーを、こうして結晶化させてストックできるんだ」
くわっ、と咲耶が目を見開く。
「そ、それって……いくらご飯食べても、太らないってこと!?」
「え? ああ、まあ……そうなるな」
「…………」
咲耶が頬を膨らませ、何度も俺の肩を叩く。
「なんだよ……」
「ずるい、お兄ちゃんずるいっ!」
「え、なに……? どれが?」
「全部……! もう知らないっ!」
咲耶がキレて、どっかへ跳んでいってしまった……。え、怒らせるようなことしたの、俺……?
「くっく……勇者よ。今のはおぬしが悪かったな。女子は人一倍、体型を気にするのだ」
「はあ……それで?」
「魔力を体内で練り、結晶化すれば、いくら食べても太らぬ。それがずるいと思ったのだろう。体型を気にせず食べ放題できるということだからな」
「ああなるほど……よくわかったな」
「くく……我も女子だからな」
【★☆読者の皆様へ 大切なお知らせです☆★】
先日の短編好評のため、連載版はじめました!
タイトルは、
『地味な支援職【重力使い】の俺、追放されたけど美少女たちと最強パーティを作って無双する~重力の概念がないせいで、俺を役立たずと決めつけた元メンバーが土下座して「戻ってこい」とか言ってきたけど、もう遅い~』
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