39.便利な魔法で現実無双
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
俺の名前は、霧ヶ峰悠仁。
どこにでもいる普通の高校生だったが、ある日、異世界に召喚(という名の拉致)された。
聖武具なしの“ハズレ勇者”と判定された俺は、現実に戻れない呪いをかけられ、追放されることになった。
だが俺は死ぬ気で努力を重ね、ついに魔王を撃破寸前まで追い詰めるまでに成長した。
その戦いの中で俺の境遇に同情した魔王と手を取り合い、ともに現実世界へ帰還を果たすのだが……。
そこは俺の知る現実とは、少し違っていた。
妖魔と呼ばれる存在を討伐する“異能者”(妖刀使いや妖術師)が暗躍する世界になっていたのだ。
俺の義妹、霧ヶ峰咲耶をはじめとする妖刀使いたちと関わる羽目になった俺は、その後、妖術師を統括する組織――妖術総監部と敵対することになる。
実はその総監部は、異世界からの侵略者――逆異世界転生者たちによって乗っ取られていたのだ。
俺は逆異世界転生者の一人シェイプシフターとともに、妖術総監部を破壊した。
さらに、咲耶とももかにかけられていた「十八で死ぬ呪い」を解き、彼女たちを妖刀使いから魔剣使いへと進化させることにも成功した。
……そんな経緯もあって、俺はいろんな連中から狙われる羽目になった。
やれやれ。俺はただ、平穏に生きたいだけなんだがな。
☆
妖術総監部をぶっとばしてから二週間が経過した。
現在、五月の下旬。ちょうど、こないだ中間テストが行われた。
で、今日はその結果が返ってくるわけだ。
「よいしょっと」
俺は転移魔法を使って、学校の裏へと、ひとっ飛びした。
魔法。
異世界で俺が身に付けた技術だ。
火を出す、空を飛ぶ、そして……一瞬で別の場所へと移動する。
どれも便利なものである。
特に、転移魔法。
「ほんっと便利だよなぁ。都内の朝なんて、電車の中めちゃくちゃ込んでるし」
異世界に五年いて、帰ってきた。電車に乗ったんだが……まあこれが、辛かったね。
満員電車。あれ、よく毎日あれに乗って、学校なり仕事なり行けるよ。一部の隙間も無い中に、何時間も詰め込まれる。
冷房は効いてたり効いてなかったりするし、痴漢で捕まるなんてこともある。
でも、異世界で身に付けたこの転移魔法があれば、もう満員電車に永久に乗らずに済む。
しかも、学校開始の五分前までベッドでゴロゴロできるのだ。
本当、魔法って便利だよな。
『くっくっく……勇者よ……』
脳内に、女の声が響き渡る。俺を勇者と呼ぶそいつは……。
「なんだ、魔王?」
異世界の魔王アンラ・マンユ。
ラストバトルで激突し、その後色々あって仲良くなり、最終的に俺と一緒にこの現実世界へとやってきた存在だ。
正直、魔王が勇者と仲良くしてるの、どうなん? って言うやつがいるかもしれない。
しかし、しかしである。この魔王さまよりも、異世界に俺を召喚した王族どものほうが、カスなのである。
勝手に呼び出して、勝手に捨てて、勝手に呪いをかけた、クソ野郎。
一方で、この魔王は、俺が現実に返る手助けまでしてくれたし、こっちに帰ってきてからも、何かと役に立ってくれているのだ。
どっちが良いやつなのかは、一目瞭然だ。だから、仲良くやってるわけだ。
『遅刻ギリギリだぞ。急ぐのじゃ』
「おう」
俺はスタスタと、校舎へ向かって歩く。
……五月だって言うのに、日差しが強かった。
俺の横を通り過ぎていく生徒達は、みな「あちー」「しぬー」とヘトヘト。
しかし俺は、氷と風の魔法を発動させ、冷風で涼を取っていた。
『暑いのであれば、魔法を使って、気候を変えるくらいやればいいのに』
『そんなことしたら、騒ぎになっちゃうだろ』
夏日だったのが、急に冬になったら、そりゃ大騒ぎだ。
『俺は平穏に暮らしたいの』
『なら魔法は一切使わず封印した方がよいのではないか?』
『いやでも、ほら、魔法って便利だしさ……』
あったら便利な物があれば、使っちゃうよねって話。
『目立ってしまうのではないか? この世界の人間はおろか、異能者ですら、魔法は使えぬのじゃろう?』
異能者。こっちの連中は、妖術師や妖刀使いと呼ばれてる。
彼らは自らの精神エネルギーを使い、呪符や妖刀などの触媒を用いて、超常現象を起こしてる。
裏を返すと、それらのアイテムを使わねば発動できないのだ。
魔力だけで超常の力を使える魔法は、異能者達にとっても異端なのである。
一般人(非術師)は言わずもがなだ。
『まあ、バレないように魔法を使えば良いだけの話よ』
『くっく……そんな器用な真似が、おぬしに果たしてできるのかのぉ?』
できらい。
俺はスタスタ歩きながら、下駄箱で靴を履き替え、教室へと向かう。
がらっ。
「「「…………」」」
男子達の視線が、俺に集まる。
が、すぐに戻る。そうそう、こういう平穏こそ俺の望む……。
「ゆーじく~~~~~~~~ん♡」
……ああ、嫌な予感。俺が背後を振り返ると、とんでもない美少女が飛びついてきた。
「こ、駒ヶ根……ユリア……」
現役のめちゃ人気アイドル、駒ヶ根ユリアが、俺に抱きついてきたのだ。
「おっはよーゆーじくんっ♡ 今日も元気だね!」
「お、おまえもな……」
このユリアってやつは、前に妖魔に取り付かれていたところを、俺が助けた。それがきっかけとなって、こうして俺に絡んでくるようになったわけだが……。
「畜生……また霧ヶ峰のやろう……」「ゆりたんに抱きつかれるだと!?」「下の名前で呼ばれるだと!?」「ざけんなや、ドブカスが……! うらやましね!!」
……ああ、視線が痛い……。
「そ、そろそろほら、予鈴なるから、戻りな」
「ちぇー、はーい♡ じゃ、【いつも通り】放課後ねー」
「はいはい……」
……ん? いつも通り、放課後……?
どういうことだ……?
「おーい、霧ヶ峰~」
担任の先生が入ってくる。ジャージを着たちっこいおねえさんだ。
見晴峠先生という。
「さっさと座れ」
「あ、ハイ……」
俺は席に座る。……で、隣の席から、凍てつくような視線を感じた。
「よ、よぉ……咲耶」
「……おはようお兄ちゃん」
我が妹、咲耶。この子は俺と違って魔法が使えないので、普通に登校してきたのだ。
別に転移で送っちゃるよ、って言ったのだが、断られてしまった。お兄ちゃん的には悲しいよ……。
『照れてるんじゃよ』
『あ、そっか。家族と一緒に登校なんて恥ずかしいもんな』
『くっく……そういうわけじゃあないのだが……くくく』
見晴峠先生が「じゃー、ついでにこないだの数学のテスト返すぞー」という。
『テストって、おぬしテスト勉強など一切してなかったろ? 大丈夫なのか?』
『いや。まあ別に、大学に行かなくても、異世界で稼いだ金あるし、いいかなって』
『学校に通ってるのだから、きちんと学問を学ばねばいかんぞ』
魔王に正論言われてしまった……。
『それに悪い点をとったら、目立つのでは?』
『逆だよ、逆。良い点とったらそれは目立っちゃうでしょうが』
『ふむ……そういうもんかの……』
「次、霧ヶ峰兄」
呼ばれたので、俺は答案を取りに行く。
「よくやったな」
「え……?」
よくやったな……?
俺は答案を見て、目を剥く。
「なんっじゃこりゃ!」
【100点】
と、書いてあった……! あれぇ……!?
おかしい、一切勉強してないから、適当な数字を書いただけなのに!
なんで!?
お、落ち着け……めっちゃ簡単なテストだったのかもしれん!
「悪いな、今回ちょっと難しくしすぎたわ。平均点三十九点はさすがに難しくしすぎたから、次の期末は優しくすっからな」
「OH……」
平均点三十九のテストで……一〇〇点を取ってしまった……。しかし、おかしいだろ。一切勉強してないんだぞ、俺……!
「じゃホームルーム終わりなー」
先生が出て行くと同時に……。
「ゆーじくーーーーーーーーん!」
……またも、ユリアが教室に飛び込んできた。
「駒ヶ根……やめてくれ……まじで……」
男子からの視線がビシバシ当たって痛いんですねぇ……。
「いつもみたいに、ゆりたんって言ってよ♡」
「「「「ゆりたんだとぉおおお!?」」」」
『なんでおぬしも含めて驚いてるんじゃ……』
いやだって、俺こいつのこと、ゆりたんなんて呼んだことねえぞ!?
『あ、わかったぞ。おぬし、分身魔法使ってるじゃろ?』
『え、ああ……』
妖魔討伐に行くとき、分身(パ●マンのコピーロボット的なやつ)を作ってく。
『分身で得たもの、見た物は、おぬしへとフィードバックされる。分身が真面目に授業を受け、予習復習を完璧にしていたから、テストで一〇〇点が取れた。また、ユリアとも、コピーが勝手に親密になっていたから、こうなってるのではないか……?』
それだ……!
だからテスト勉強せずとも一〇〇点が取れたし、このアイドルちゃんとも、分身が勝手に仲良くなっているから、こんな状況に陥ってるのだ!
『くく……魔法は便利じゃのう……』
『ひい! くそぉっ! 目立ちたくないのに~!』
【★☆読者の皆様へ 大切なお知らせです☆★】
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『地味職【重力使い】は不要と追放されたけど、元仲間が土下座しに来るくらい出世しました~荷物持ちと見下された俺、今や王国最強Sランクパーティの中心です~』
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